『マッドサイエンティストの手帳』741

●マッドサイエンティスト日記(2020年11月前半)


主な事件
 ・播州龍野いたりきたり(1日)
 ・創サポ講座・田中啓文氏(7日)


11月1日(日) 大阪←→播州龍野
 定刻4時に起床。
 午前7時、ボンクラ息子その1のクルマに専属料理人と乗り込み、計3名で播州龍野へ出発する。
 新御堂筋〜中国池田〜中国道〜山陽道を経由して、8時40分に播州龍野到着。
 車種はスズキのスペーシア・ギアである。前回来た時はBMWだったから、1年半でえらい変わりようである。
 配偶者が初心者で、左ハンドルのBMWは運転できないから買い替えたのだとか。初心者マークもつけている。
  *
 廃屋寸前のタイムマシン格納庫前にて。こちらは10分ほどで引き揚げ。
 引き続き、こちらも廃屋寸前の実家へ。
 新コロナ以降あまり来てないので荒れ放題である。
 しかも(家畜泥ならぬ)柿泥棒が横行。庭の柿がきれいさっぱり消失していた。嗚呼。
 肉体労働色々(主に冬支度とガラクタ処理)。ほとんど孝行息子がやってくれた。
 昼はよこたで穴子寿司。
 チェーン店が増えた龍野で数少ない老舗店。亡母の好物であった。
 専属料理人の希望で吾妻堂へ行ったが、こちらは休みであった。今まで平日しかこなかったのか。「配偶者」には残念なことである。
 午後、もとのコースを逆に走って、1時間半で帰阪。
 ボンクラ息子その1は、しばらく仮眠の後、暗くなってから横浜方面へ去る。深夜に着く予定らしい。
 なんだか疾風のごとき帰省であったなあ。

11月2日(月) 穴蔵
 定刻4時に起床。
 生活のペースは正常に戻ってきた。
 仕事のペースはからきし。
 6時半、東の空が不気味な色に染まった。
  *
 不吉な予感がする。
 9時過ぎから雨になり、終日降りつづく。
 休日の間で、出かけたい用事もあったが、面倒になる。
 穴蔵にて痴呆状態で過ごす。
 おまけに休肝日。
 何の楽しみもない。
 災厄が降りかからなかっただけマシと思うべきか。

11月3日(火) 穴蔵
 相変わらず、生活は正常、仕事はさっぱり。
 穴蔵にてボケーーーーッと過ごす。
 健康的な生活というべきか。
 まだ「歩くのが楽しい」状態には戻らず、近所の散歩のみ。
 豊崎第6架道橋の手前にある「R Hoels Inn」に小さい貼紙。10月31日で閉館とある。
  *
 ホテルとしての稼働は短かったなあ。2017年6月のオープンだから3年4ヶ月(新コロナで休業してたから実質2年半)の営業ではないか。
 似たような数軒も気になる。特にAPA、梅田に巨大なのを作り始めたが、大丈夫かね。
 たちまち夕刻。
 夜は某zoomミーティング。
 気がつけば2時間近く経過していた。
 そろそろ就眠。

11月4日(水) 穴蔵
 不調である。
 眠れない。足腰が痛む。肌寒いがコタツが禁止されている……
 こんな愚痴を読まされても面白いはずはなし、書く方も気が滅入る。
 終日穴蔵にて、ほとんどベッドにもぐりこんで過ごす。
 そろそろ就眠……はできないから、また断続的に本を読んで過ごすことに。

11月5日(木) 穴蔵
 自慢じゃないが、本日も不調である。
 1時間同じ姿勢で机に向かっていると、あと、歩くのがつらい。
 両脚伸ばして横になっていたいが、いちいち着替えてベッドというわけにもいかず。
 専属料理人に頼んでコタツをセットしてもらう。
 座るのに注意を要するが、コタツで脚を伸ばしているのがいちばん楽である。
 机とコタツのいたりきたり生活となる。
 小刻みだけどボチボチ仕事も再開できそうである。
 午後、近所を散歩。
 貨物線北側で先日見た工事現場、フェンスで囲われている。
  *
 完成予定図が掲示されている。平面横断通路(ボックス構造)というらしい。
 1年4ヶ月先。たぶん生きているうちに通れるだろう。
 ということで、明日から復帰……と思ったら、本日は休肝日。嗚呼。

11月6日(金) 穴蔵
 終日穴蔵で過ごす。
 机とコタツをいたりきたり。
 コタツで本を読んでいる時間の方が圧倒的に長い
 なぜか田中啓文作品を再読……これは麻薬だな。
 合間に時々テレビ。
 米大統領選はトランプ断末魔の様相。
 アメリカも韓国化(辞めたら刑務所)するのか。
 楽しみは尽きない。

11月7日(土) 創サポ・田中啓文氏インタビュー
 曇天。穴蔵にて田中啓文作品を読んで過ごす。
 夕刻這い出て、地下鉄で天満橋、エルおおさかへ。
 創サポ講義。
 本日は「関西のSF作家に創作方法を聞く」シリーズの最終回である。
 2016年秋に上田早夕里さんを招いてスタートしたこの企画、不定期に10回ほど続けてきたが、ひと区切りつけようという時期になった。じつはスタートした時に「最終回は眉村卓さん」と決めていたのである。だが、眉村さんが昨年11月に亡くなられ、実現不能となった。そこで、眉村さんに関しては別企画として、本日が実質的な最終回となる。
 本日のゲストは田中啓文さん
 眉村さんが極めて高く評価していた作家であり、本日にうってつけの人である。
 『異形家の食卓』『蹴りたい田中』あたりから、笑酔亭梅寿謎解噺、永見緋太郎の事件簿を経て、鍋奉行、浮世奉行、臆病同心、さもしい浪人、文豪宮本武蔵など最新の作品群に至る創作法の変遷(つまり、SF・上方落語・ジャズのつくる三角形がいかに拡大していくかのプロセス)を聞くつもりでスタートしたのだが……こんな予想はほとんど無駄であった。
 アイデア〜キャラクターの設定〜プロット〜資料収集〜執筆といったパターンがまるで当てはまらない。
 しかも一連の方法はデビュー当時からほとんど変わらないという。
 その詳細は省略(これは講座出席者の特権である/あの不思議な大学ノート含めて)。
 いちばん興味あったのが、鍋奉行以来の時代物の資料である。さりげなく書いてあるが、細部に時代考証が行き届いていて、膨大な資料が駆使されているに違いないのである。
 その入手方法も面白いが、資料を積み上げる場所がなくなり、机の両端からふさがってきて、ついにはノートパソコンを置くスペースまで浸食され、パソコンを膝に置くのもつらくなり、左側にあるゴミ箱にフタをして、その上にパソコンを置き、机に向かい体を左下にひねってキーを叩くという!(←骨折から退院したばかりの立場からいえば、これはいちばん危険な姿勢である)
 自粛要請が解除された今は、昼間は川西の(換気の良いテラスにある)喫茶店が多いという。
「すごい執筆環境なんですねえ」
「川で書くほどではないでしょ」
 まあなあ。

11月8日(日) 穴蔵
 日曜日なのであった。
 一応晴? 寒いのかどうかは不明。
 穴蔵にいると、雲の往き来はわかるが、気温はわからん。
 人出が多そうで、出かけることなく、積み上げている本を読んで過ごす。
 たちまち夕刻。
 今頃だが、沖至氏の死去を知る。8月25日。訃報を見落としていた。
 先日は近藤等則さんだし……フリーのトランペッターが続けてとは。
 沖至さんは幼少期に南里文雄に師事し、70年までは大阪でデキシーを吹いていた。
 「殺人教室」で一挙にフリーに飛ぶ不思議な経歴。しかも色んなトランペットを吹いて、いずれも音色が素晴らしかった。
 わが愛聴盤は、意外にもストリングスをバックにスタンダードを吹く「Itaru Oki Sixtet with Strings」である。
  *
 沖氏作曲の「Summer Tango」がいい。
 これを流しつつ献杯。

11月9日(月) いつかウロウロする日
 晴れた日である。
 朝、自転車で某院へ。術後1ヶ月の診察である。
 経過は順調であるらしい。歩くのはちと辛いところあり、痛みもまだあるのだが、「普通ならまだ入院中」……らしい。
 レントゲン写真を見ると、サイボーグになったんだなあと実感する。嗚呼。
 帰館。
 午後、また出る。
 地下鉄でドーム前へ。
 ホームセンターで穴蔵の越冬用小道具を選ぶ。
 木津川河岸でしばし休憩。
  *
 川の十字路を眺めつつ、このあたりも、もう書けないかなと思う。
 少し下流にある「三軒家刑場」跡(らしい一帯)を歩いてみたいが、もう無理なような気がする。
 地下鉄で帰館。
 夕刻、またも自転車で出かける。
 ゆっくりと梅田を抜けてハチへ。
 本日は「名盤アワー」……要するに昔ながらのジャズ喫茶の日。
 ハチママの通夜・告別式の時は落ち着かなかったので、あらためて最後の日々について聞く。
 同じ骨折でも、別れ道はほんの数年の違い(10年ちがっても四捨五入である/死者誤入か)である。あと2,3年で追いかけてくことになるのか。
 1時間ほどいて帰館。
 自転車で体が冷えたので、久しぶりに入浴。
 休肝日の予定だったが、体の調子がよくなったので、遅めの晩酌。湯豆腐で一杯。
 体調よろしい。
 机に向かってじっとしているより、ウロウロする方が遥かに体にいいようである。

11月10日(火) 穴蔵
 いかん、昨日の反動であろうか。
 体調はいいのだが、動く気分にならず。
 ほとんど寝転がって本を読んで過ごす。
 まだ入院生活がつづいていると思えばいいか。
 明日こそ……まただらしなく過ごすのである。

11月11日(水) 穴蔵/ウロウロ
 定刻に目覚める……つうか、小用で何度か目覚めて、午前4時に面倒だから起きたというところ。
 少しは仕事もするのであった、いと少なしを。
 机に向かって「固まっている」のはいかん。立ち上がると背筋が痛く足腰も最悪。
 30分毎に立ち上がり、ストレッチを行う。
 午後は歩くことにする。
 平日で人は少ないようだから梅田へ。
 ATM、書店、ヨドバシなどうろうろし、久しぶりにステーションシティ・風の広場に上がる。
  *
 風冷たく人はほとんどいない。いいことである。
 新駅工事、駅部分の「天井」はだいぶ埋まって、駐車場になっている。ここからは見えない南側(大阪駅西端改札)の方が面白そうだ。
 ついでに1,500の人骨発掘現場を見物に行くか迷うが、本日はちとしんどい。
 週末にでもチャレンジすることに。
 本日6,000歩ほど。
 歩くと体調はいい。

11月12日(木) 穴蔵/ウロウロ
 定刻に目覚める。
 少しは仕事もするのであった、いと少なしを。
 相変わらず、背筋足腰ガタガタ。
 午後歩くことにするが、新コロナ感染者、各地で新記録更新中、本日はジュンクドー往復にとどめることに。
  *
 ウチを出て、公園を抜けて南へ歩くのだが、最近、公園の入口(路上)でタバコを吸う連中が急増した。
 いつも2,3人、多いときは7,8人が屯している。
 また喫煙場所が規制されたのか。ひと頃のコンビニ入口がなくなって、ビルの裏口あたりで吸ってたのが、公園横に集まりだした気配。
 たぶん公園の中は(子供がいるなどの理由で)禁煙なのだろう。
 猛煙の中を息を詰めて歩かねばならぬ。迷惑な話だ。
 最近のタバコ規制は厳しすぎると思う。
 5年ほど前なら、分煙されていたから、食堂でも居酒屋でも、副流煙被害にあったことはない。焼鳥屋や焼肉屋は換気されているから、隣で吸われても気にならなかった。そんな店も禁煙になるのか。
 ともかく路上喫煙による被害が増えるばかりだ。
 吸うなとはいわん。屋内で吸ってくれ。
 「禁煙なんて意志薄弱なことはやるな」は小松さんの至言で、まったく同感。
 おれは禁煙なんて一度もしたことがない。喫煙経験が皆無だから、禁煙のしようがないのである。

11月13日(金) 穴蔵
 薄曇りの空。寒そうである。
 新コロナ感染、第3波の様相。
 出歩くことなく、終日穴蔵で過ごす。仕事は皆目だけど。
 たちまち夕刻。
 専属料理人の並べた数皿でビール、ワイン。
 CDでデフランコ師匠、トミフラ師匠、ゲッツ師匠、モンク師匠を聴いていたら2時間近くが経過してしまった。
 早寝させていただく。
 たまにはこんな1日があっても許されるであろう。

11月14日(土) 穴蔵/ウロウロ
 快晴である。
 穴蔵でくすぶっていてもいかんので、歩くことにする。
 本日は専属料理人とともに、中崎町を抜けて天神橋筋商店街まで。
 商店街はさすがに人出多し。専属料理人はぷららで買い物したかったらしいが、ここも混雑しているので断念。
 裏通りを歩いて玉一へ。ここは空いていたので、一年ぶりに焼肉定食。生中も。
 天六からゆっくり歩いて昼過ぎに帰館。
 8000歩を超えた。
 午後はシンギュラリティサロン(オンライン開催)。
 本日のテーマは「意識の謎」。
 第1部はセーラー服おじさん(小林秀章氏)による、ここ数年の意識を巡る議論の総ざらい。
 たいへんなスピードで1時間ぶっつづけ……自由エネルギー原理あたりから、やっぱり混沌としてくる。
 ともかく一度眠って、目が覚めたところから考えるのがいいようだ。
 おれは先月「全身麻酔」を経験しているから、今ある「意識」には懐疑的なのである。
 前と同じ「意識」が戻ったのか、ぜんぜん別物と入れ替わったのか。
 体の一部は人工物と入れ替わっているのだしなあ……

11月15日(日) 穴蔵
 小春日和である。終日穴蔵。
 カード会社からのDMを見てたら、団体の傷害保険とかのチラシが入っていた。
 いちばん目立つところに「65才以上の骨折による入院の平均日数は約46日間」とある。
 おれは10月1日に入院したから、今日が46日目。
(他にも、高齢者事故の約8割が転倒事故/自宅内が56.3%/発生場所の1位は居室・寝室……などと当てはまる「平均的な記述」ばかり/出典は平成29年のデータ)
 今日まで入院してたと思えばいい訳か。
 明日こそ少しは仕事らしいことをするつもり……で、一杯飲んで寝る。


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