『マッドサイエンティストの手帳』622

●マッドサイエンティスト日記(2016年1月後半)


主な事件
 ・寒波到来、穴蔵の日々
 ・播州龍野いたりきたり
 ・創サポ講義(23日)
 ・ラスカルズ@ニューサン(23日)
 ・谷口英治NEWカルテット@ロイヤルホース(27日)
 ・幻の人形アニメ(30日)
 ・創サポ講義(30日)


1月16日(土) 穴蔵
 寒くて出歩く気分にならず、終日穴蔵。
 ボケーーーーッとタドコロ状態で過ごす。
 いかんなあ。

1月17日(日) 穴蔵/追悼の日
 午前5時起床。
 5:46、ほんの数秒間黙祷。
 追悼の気持ちはあるものの、次の瞬間にも激しい揺れに襲われるのではという恐怖感の方が強く、長くは黙祷できない。
 今後も変わらんだろう。
 7:45からNHKで桂春団治「高尾」を見る。ビラビラ揺らしながら立ち上がるところ、たまらんなあ。
 運動不足なので昼前から散歩に出る。
 南東方向。
 書店巡り、地下街を抜けて、曾根崎。
 おっ、お初天神通のゴーストビルが更地になっているではないか。
  *
 深夜にしか瓦礫の搬出ができなかったはず。4年前には、あと10年はかかると予想していたが、5、6年で片づいたのか。
 この周辺、あとがどうなるのか、生きてるうちに確認できそうにないなあ。
 扇町公園を抜け、青空書房は休みだからパスして、昼はタカセ市場横の総菜売り場兼食堂で430円のカレーうどん。あえてオススメはしない。
 13:30に帰館。
 14時からNHK「日本の話芸」で桂春団治「皿屋敷」を見る。
 幽霊のことを聞きに来た町内のアホに六兵衛がいう。
 「今日はまた何しにうせさらしたんじゃ」
 舞台は姫路。西播の言葉はひどいといわれるが、ここまではきたなくない。
 ただし、(姫路出身の)米朝師匠も同じ表現だった。
 米朝師匠によれば、皿屋敷伝説は全国的で、虚構が前提。
 姫路市民は、姫路城の「お菊井戸」を知っているから、最初から嘘と思うが、もとは五軒邸あたりと聞くと妙に信憑性を帯びてくる。
 このあたりが(西播の人間には)面白い噺だ。
 六兵衛の言葉遣いも虚構なんだろうな。
 昔、東映で遠藤太津朗扮する親分が子分どもを呼ぶのに「お前らちょっとこっちへ来さらせ」というシーンがあって、場内に爆笑が起こった。あの作品は何だったか、思い出せない。

1月18日(月) 穴蔵
 雨である。
 朝のニュースでは、東京は雪でダイヤ大混乱らしい。
 関西は今夜から寒波、明日は降雪かも。
 2、3日、播州龍野行きのつもりだったが、今期いちばんの冷え込み、しかも強風らしいので、延期する。
 とうことで、終日穴蔵。
 散歩に出る気分にもならず。またもタドコロ状態。いかんなあ。
 たちまち夕刻となる。
 寒いので、夜は専属料理人がブイヤベースを作ってくれた。
  *
 これで静岡方面から送ってもらった「DAMES」を少しばかり。ダメ!かと思ったら貴婦人らしい。うまっ。
 早寝するのである。

1月19日(火) 穴蔵
 寒いのであった。
 終日穴蔵。
 西風が強く、青空を白い群雲が見る見る東へ流れていく。
 ボケーーーーーーッと空を眺めつつ、タドコロ状態で過ごす。
 明日はさらに寒くなりそうで、今週の播州龍野行きは見合わせることにする。
 夜は湯豆腐、山かけなど並べてもらって呉春。
  *
 北梅田の夜景を眺めつつ。
 白い群雲の移動は夜になっても変わらず。明日は雪になるか。
 それにしても……
 昨夜SMAPが「空中分解を回避した」と会見したらしく、ニュースはそればっかり。どうでもいいことなのに、総理大臣が国会で答弁とは何事だ。質問するバカがいかんのだが。
 テレビはほとんど見ないおれでもSMAPは知っている。
 しかし、この20年ほどを思い出しても、見たのは3つだけではないか。
・テレビで香取慎吾が主演した『蘇る金狼』……これは筒井康隆氏がヤクザの親分で出てたから見たもので、親分が撃たれたあとは見ていない。
・草ナギ剛『日本沈没』……これはこちらに書いてるが、失敗作。
・稲垣吾郎がバカ殿を演じた『十三人の刺客』……これはよかった。こちらに書いてるが「地」で演じているようなよさがあった。
 たったこれだけ。
 だが、事務所を出版社に、担当マネージャーを担当編集者に、SAMPをSF作家に置き換えてみると、SAMPの利権がいかに大きいか実感できるなあ。

1月20日(水) 穴蔵
 午前5時に起床。室温16℃、外気4℃。まあ、こんなものであろう。
 終日穴蔵。
 タドコロ状態を続けては、本当にアタマがボケかねないので、マジメに机に向かう。
 7時間机、3時間コタツで雑読、2時間自宅で食事などで夕刻となる。
 ポストまで往復、753歩。
 運動不足だが、寒波到来期間の標準的過ごし方としては、これでいいであろう。
 グラタン、蒸し野菜などでコノスルを少しばかり。
 早寝するのである。

1月21日(木) 穴蔵/甘利辞任必至
 早朝、コンビニで週刊文春を買ってくる。
「甘利明に賄賂1200万円」は久々のスクープである。建設会社の一色武氏の実名告発、写真あり、録音も残してあるという。とらやの羊羹といっしょに渡された50万円入りの封筒を内ポケットに入れる描写などなかなか。これは辞任必至。
 昼前の国会中継……さすがに「事実無根」とはいえず、「記憶が曖昧」「説明責任は果たす」の繰り返し。
 過去の事例でも「説明責任」とやらは辞任するまで果たしたとは認められないから、悪あがきせず、あっさり辞めるのがいいだろう。
 週刊文春、しばらく前から急激に読むところのない週刊誌に堕ちていたのが、「春画」を特集して更迭された編集長が復帰したらしい。変わるものである。
 それにしても、せっかくのスクープも「早刷り」を入手したテレビや新聞が発売前に騒ぎ立てるから、週刊誌は気の毒であるなあ。甘利など昨日のテレビで「まだ週刊誌は読んでないが」といいつつ釈明してたらしいではないか。続報含めて、しばらく週刊文春は購読するからね。
 運動不足なので、午後、散歩に出かけたら小雨になり、すぐ引き返す。
 結局、終日穴蔵。
 天気しだいだが、明日は体を動かすつもり。

1月22日(金) 大阪←→播州龍野
 早朝(というより未明)の電車で播州龍野へ向かう。
 天気予報によると、週末〜週明け、「数十年に一度の寒波」というから、来週の予定を繰り上げる。
 午前9時前に実家着。書斎室温は6℃だが、晴れていて、外は早春の気配までする。
 3ヶ所ほどうろうろ。タイムマシン格納庫で打ち合わせも。昼前に片づく。
 昼、姫路へ移動。
 姫路城の大手門を入った広場まで行ってみる。
  *
 雲の動きが急である。
 観光客は少ない。が、天守閣に上るのは面倒で、後日とする。
 駅方向へ引き返し、小溝筋の灘菊直営店「かっぱ」で日替定食。灘菊熱燗を一杯。
 酒麹の効いた小鉢がたまらんね。
 午後の新快速で帰阪。

1月23日(土) 創サポ講義/ニューサン
 曇天、外は寒そうである。
 終日穴蔵。資料をチェック、メモ作成を行う。
 夕刻這い出て天満橋へ。
創作サポートセンターの講義。
 提出作品約20篇(ショートショート)にコメントしつつ「SFの書き方」を話す。多くは30〜50枚くらいにすべきアイデアなので、いかに短編に展開するか、実技指導を兼ねてだから、かなりの詰め込み講義、30分超過となった。
 帰路、東梅田でニューサンに寄る。夜の外出をほとんどしなくなったから、こんな機会でないと酒場へは行かない。
 ラスカルズを2ステ途中から聴く。
  *
 最終ステージは(寒波の影響もあって)だいぶ空席ができたので、福田さんのトロンボーン正面の席に移る。
 今年もメンバーが減らぬことを願うばかいなり。

1月24日(日) 穴蔵
 わ、目覚めれば午前9時。よく寝たもの。夜遊びはするものだ。
 大寒波・雪の予報だが、大阪は快晴。
 ベランダの気温は4℃だが、室内にいれば快適なもの。
 終日穴蔵。
 ボケーーーーーーッとタドコロ状態で過ごす。
 いかんなあ。

1月25日(月) 穴蔵
 午前5時に起きる。
 ベランダは1℃で、氷点下にはなってない。
 明るくなり、快晴である。降雪は気配もなし。30メートル先に見える野々村竜太郎の生家にも朝日が当たるのであった。
 テレビニュースは西日本の大雪報道ばかり、大阪だけが「最強寒波」から仲間外れみたいである。
 穴蔵にて資料を読んで過ごす。
 午後、徒歩7分のジュンクドー往復。
 帰路、豊崎交差点で見るに、15時の気温13℃である。
  *
 何かの間違いではないか。温度計も日立製だと信用失いまっせ。東芝にならないことを祈る。
 10分後に帰館、ベランダは7℃(百均で買った寒暖計)、気象庁のデータでは大阪5.2℃である。これでも日立が正しいのか。
 たちまち夕刻となる。
 ニュースでは、神戸地検が野々村竜太郎の拘引状を執行、昼前に地裁に引き渡し、明日の公判まで「刑事施設」で拘束という。竜太郎、今夜は代用監獄にぶち込まれているのかな。
 神戸地裁へ行ってみたい気もするが、傍聴券取得は無理だろう。明日はコタツでテレビで中継を楽しむことにしよう。
 それほどの大事件ではなく、国民の関心はアタマだけなのだが、騒ぎをここまで大きくしたのは竜太郎本人なんだからなあ。

1月26日(火) 穴蔵
 天気晴朗なれど終日穴蔵。
 本を読みつつ、昼前から断続的に神戸地裁前からの中継を見ながら過ごす。
 野々村竜太郎、神戸拘置所からクルマで運ばれてきたが、カメラには写らず。
 「丸刈り」で出てきたらしい。「アタマを剃って」という局もあり。
 これは予想していたことだが、姉歯ほどの潔さはないようだ。
 午後になって法廷画が色々出てきたが、いずれもツルツルに剃ったようには見えない。
 中では読売テレビ(竹本佐治氏)のが、いちばんリアルというか悪意的というか。後頭部にうっすらと残っているのがよくわかる。
 途中、専属料理人とN酒店へ行く。ビールのポーター役。
 酒屋の大将に「野々村くんの取材はまだあるんかいな」と訊いたら「一昨日も○○放送が来たけど、面倒くさいから、よう知らんいうてるねん」……といいつつ、面白い話を聞く。
 竜太郎くん、「覚えておりません」の一点張り。
 裁判長もアタマに来たのだろう、2ヶ月の拘留となって神戸拘置所入り。歌やんやないけど、笑ろてしまいますな。実質的「実刑」で代用監獄入りだものな。
 つぎは2月22日(月)。どんなアタマで出廷するのか……おれの予想では出廷前に剃るのは許されず、1月分のヒヨコ状産毛が生えたマダラアタマで出てくるのではないか。つまり、地毛がどの程度残っているのか確認できるわけで、楽しみは尽きない。
 ということで、夜は専属料理人が作ってくれたなんとかグラタンなど。
  *
 中本酒店が買ってきた格安バカうまのイタリアワインを少しばかり。
 うまっ。

1月27日(水) 谷口英治NEWカルテット@ロイヤルホース
 天気晴朗なれど終日穴蔵。
 夕刻に這い出て、専属料理人と新御堂筋をロイヤルホースまで歩く。
 谷口英治NEWカルテットの出演日。昨年3月以来である。
  *
 谷口英治(cl) 田窪寛之(p) 楠井五月(b) 岡田朋之(ds)
 ワンホーンのカルテット構成はモダン・スイングに最適である。
 スタンダード中心に、谷口流のちょっとひねったアレンジが快適。テンポの変化が多い曲もあって、これをビシッと支えている岡田朋之のドラムが素晴らしい。
 最前列右側、昨年と同じ席で、音はいいのだが、会議室の堅い椅子みたいなので、日頃エルゴヒューマン(5〜10時間/日)に座っている身には、30分ほどで腰が痛くなってくる。ま、贅沢はいうまい。
 2ステージ、22時過ぎまで。

1月28日(木) 穴蔵/ウロウロ/甘利辞任
 ちょっと調べたいことができて、午前、西長堀の中央図書館へ行く。
 2時間ほど3階の大阪関係の資料コーナーで過ごす。
 ここにいると色々と関連テーマが発生して、夕刻まで居続けになりかねない(むろんそうしてもいいのだが、当面のテーマに区切りをつけねば)。
 寒波が去ったので、久しぶりに木津川沿いを下流に歩く。
  *
 岩崎橋付近、河岸の柵にユリカモメがずらっと並んでいる。
 大正駅まで歩き、ガード下の「いちゃりば」でこういうものをいただく。
  *
 オリオンは夜空より昼間に限る。
 帰路、地下鉄内で週刊文春を読む。甘利の金銭授受については特に新情報はなし。
 17時から甘利の会見を見る。
 要約すれば秘書が、300万円ネコババして「費消した」、わしは現金を内ポケットには入れてない。以上30分。あと10分近く心境の吐露があって、5:40に辞任表明。
 事件が報道されてから1週間だから、早くもなく悪あがきもせず、まあ適当なところか。
 夜は、和風ハンバーグ・温野菜、根野菜の煮たの、サラダなどの標準的メニューでちょっと一杯。
 早寝するのである。

1月29日(金) 穴蔵
 雨ぞ降る。
 終日穴蔵。
 明日の講義のため、作品を読み、メモ作成して過ごす。
 2時間の講義だが準備に延べ13時間ほどかかる。こちらの思考が脱線して、思いついたことをメモしたりするからで、まったく苦にはならないのである。
 たちまち夕刻。
 北梅田の夜景を眺めつつ、専属料理人が並べた、湯豆腐、鮭ムニ、菜っぱの煮たの、ダイコンのたいたんの妖女などの粗食で黒糖焼酎れんとの湯割り。
  *
 雨の夜はアプローズが石油ストーブのように炎上する。
 トミフラ師匠、バロン師匠のピアノトリオを流す。

1月30日(土) 幻の人形アニメ/創サポ講義
 終日穴蔵。
 昼前後、メールと電話が飛び交う。
 1件は夕刻からの講義についての予定変更。もう1件は先日取材を受けた「幻の人形アニメ」について、今日の夕刊に掲載するからと最終確認。
 で、夕刻、読売の夕刊を見たら、なんと一面トップ記事ではないか。
  *
 昨秋、小松さんの書庫から5分間アニメの絵コンテが発見されたのだが、これは1965年に企画されていた人形アニメのパイロットフィルム用のコンテである。当時この制作に関わった人間で、詳細を覚えている人は数名(たぶん3人)しかいない。おれも、まさかコンテが残っているとは思わなかった。
 詳細はたぶん近日小松左京ライブラリに発表されるはず。
 それに合わせて、こちらでも当時のことを書くことにしよう。
 夕刻、天満橋のエルおおさかへ。
 創作サポートセンター・専科の講義。
 変則的だが、提出された短編2篇を題材に。
・奴隷労働を強いられている工場に潜入して反乱を工作する男の戦い……これは古くは手塚さんの「38度線上の××」のような傑作があるのだが、よく書けている。
・ゴミ掃除のためヒーターのセルフタップねじをはずし、ごちゃ混ぜにしたため、パネルの再取付に悪戦苦闘するという体験的エッセイ。これだけでは小説になってないが「SFを書かずにSFを書く」という意図は実によくわかる。
 先行作品や類似作品とのちがい、わが体験的試行錯誤例、ついでに野々村竜太郎(なに関係あるねんと思われるかもしれんが、話を大きくする手法としては参考になるのである)まで、やや脱線気味で話していたら2時間経過してしまった。
 帰路、ハチに寄って、今頃年始の挨拶。
 ハチママ、まあまあ普通に、らしい。

1月31日(日) 穴蔵
 目覚めれば午前8時。よく寝たものだ。早朝の春團治師匠追悼番組は見逃した。
 「題名のない音楽会」を見る。「ジャズ新世紀の音楽会」として黒田卓也×スガダイロー、なかなか刺激的である。
 あとはボケーーーーッとタドコロ状態。
 天気がいいので、午後、散歩に出る。
 淀川堤を東へ。早春の気配ただよう。
  *
 長柄橋まで行き、天八〜天六〜中崎町を抜け、タカセ市場で黒糖焼酎を買って帰館。
 夜は、揚げの焼いたん、豚肉と白菜を煮込んだん、野菜刻んだんなどで、れんとを湯で割ったんを飲む。
 パキートがキューバンサウンドで吹きまくったんを聴きつつ。
 早寝するのである。
 あと10年ほどこんな日々を続けてオサラバするのであろうか。
 もう少し何かやらねばいかんなあ。


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