HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』83

●阿佐ヶ谷ジャズストリートを歩く

阿佐ヶ谷で降りるのははじめてである。緑の多い落ち着いた町であり、山下洋輔氏ゆかりの土地でもある。ジャズストリートで色々なジャズを聴いた。
 阿佐ヶ谷のメインストリートはJR阿佐谷と地下鉄南阿佐谷を結ぶ700メートルほどの並木道である。欅の並木がきれいだ。
 この通りを中心にあちこちでジャズ・ライブが2日間に渡って繰り広げられる。……結果として、ぼくはこの並木道を一晩3往復して、すっかりこの町が好きになってしまった。

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 北端の演奏会場がJR駅を北へ3分ほどの阿佐ヶ谷神社・神明宮。駅からすぐなのに静かで、境内には篝火が焚かれている。
 午後6時半から「山下洋輔+津上研太」デュオ。……薪能の雰囲気。雨が心配されていたが夕方で上がり、周辺は真っ暗で樹のざわめきが聞こえる程度。駅から徒歩3分とは信じられない幽玄さである。
 8時ちょちとで、今度は、南端の会場、ホテル・アミスタの1階レストランへ急ぐ。ここには谷口英治クインテットが出演中、「アバロン」などスタンダード中心の1ステージ、ビールを1杯。
 なんだかいちばん好きなのをつまみ食いしている気分だが、まあ、この慌ただしさもジャズ・ストリートの特質である。
 またも(今度はジャズならぬ用件で)JR駅近くに向かう途中、ゾロゾロと人が移動していくのでついていくと、通りからちょっと入った会館のホールで、威勢のいいラテン系の音が聞こえてきた。入ってみると「野田久和オーケストラ」……30歳前後の実力派が集まった臨時編成バンドらしい。アルトに山田穰がいて、つぎに出てきたボーカル歌伴をきちんとこなしている。
 このボーカル、はじめて聴いたのだが、小林桂、若干19歳! これが結構ステージ慣れしているし、「BODY AND SOUL」なんて結構雰囲気を出しているのでびっくりする。名前と経歴から思うに、ピアニスト・小林祥さんのご子息か? 小林さんのピアノなら花岡詠二グループで聴いたことがある。時代は変わっているのだなあ。そういえば、津上研太さんも若そうだし。
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 写真はこの夜聴いた、山下洋輔・津上研太デュオ、谷口英治5、小林桂と野田久和オーケストラ

 21時、駅近くのヤキトリ屋「鳥正」へ行く。
 ここは山下さんの昔からの地場にして熱狂的横浜(大洋)ファンの巣窟。「大魔人」という酒が並ぶ恐ろしい店である。ここに演奏終了後の山下さんとパソコン通信関係集結との情報あり、ケヤキ並木を駆けつけると、もう宴たけなわ。
 山下洋輔・津上研太両氏をはじめ、魯痴珍、MIN、ぶる、芋男爵、文豪ミニ、JPとなにやらわからん面々。野球中継を含めて23時過ぎまで大騒ぎ。
 ちなみに下の写真のような店である。
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 店主を真ん中に記念撮影。鳥正ご主人は、熱狂的というより、もの静かな印象の方で、ぼくは、バディ・デフランコに似ていると思った。見比べていただきたい。鳥正のヤキトリと白菜漬けは、デフランコの味わいである。
 駅前で解散、ぼくはフラフラと欅の並木道をホテルへ向かう。


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