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『マッドサイエンティストの手帳』368

●マッドサイエンティスト日記(2006年3月前半)


主な事件
 ・タイムマシン陸送ふたたび(1日)
 ・上京(2日〜)
 ・SF大賞授賞式(3日)
 はやぶさは生きていた(8日)
 ・播州龍野の日常(9日〜)
 ・穴蔵の日々(12日〜)



3月1日(水) 穴蔵/タイムマシン陸送ふたたび/1周年
 朝から雨である。
 嫌な予報はよく当たるのであった。
 昼前から出かける。
 雨の中、歩いて梅田へ。昨日の雑用色々。主に銀行、郵便局関係。
 梅田地下街でだいたい用が足せるから便利ではある。
 が、本日午前、ホワイティ梅田で「テロを想定した訓練」があって、一時閉鎖されたらしい。……拙作『梅田地下オデッセイ』の冒頭場面に使った、阪急コンコースを南に降りたあたりらしい。曾根崎署が近いこともあるが、やっぱり梅チカでテロをやるならここだろうなあ。
 地下街南端まで歩き、ここから土佐堀方面の某所まで。
 雨中、タイムマシンを陸送してきたクルマと合流。
 夕刻までマシンの設置作業。
 無事、完了したのであった。
 これで年末からキンタマ収縮させつつやってきた作業は一区切り。
 明日からしばらく上京する予定である。
 あ、本日は、このブログ開設して1年になるのだった。
 去年の今頃も上京準備でゴタゴタしていたのだなあ。
 今さら進歩はなく、ややボケが進行している。嗚呼……

3月2日(木) 大阪→東京/色々途中下車
 定刻4時に起きて、雑用片づけ。
 早朝のJR東海道線で上京。
 久しぶりに青春18きっぷを利用する。
 大阪〜米原〜大垣と移動して、大垣から浜松行き快速。
 午前10時頃に、岡崎で途中下車。
 徒歩10分ほどの「シビックセンター」へ。
 内田修ジャズコレクションをはじめて訪問する。
 内田修先生が寄贈されたジャズ資料館で、現在「渡辺貞夫特別展」が開かれている。
 図書館の別室みたいな感じで、展示コーナーと所蔵LPジャケットのコピーがファイルに整理されている。ヘッドホンで聴けるようテーブルも並んでいて、ジャズ試聴室の雰囲気である。
 ただ、こちらの目的はジャズ資料……とくに「文献」の方に興味があったのだが、雑誌やジャズ文献は別の場所に保管してあるらしい。
 開架式の棚に並べるのは、資料の散逸防止のためにも、難しいようである。
 こちらの「森山威男研究」の主旨を伝えて、また改めてお願いに来ることにする。
 本格的に文献調査となると、1週間ほど泊まり込みとなるであろう。
 岡崎ジャズストリートのあわせてスケジュールを調整するか。
 岡崎市のうどんのダシもチェックしたかったが、JR岡崎周辺にはうどんやがまったくない。これも後日の課題である。
 静岡まで移動。
 ここでちょっと遅めの昼飯。
 静岡には専属料理人の実家があるので、あまり外食の機会がない。
 おれの唯一好きな店が駅構内・東南の隅にある「三久」という居酒屋風の店。
 
 以前、ここには「三点盛り」とかいう皿があって、静岡名物「黒はんぺん、桜エビの掻き揚げ、しらす」がセットになっていた。これでビールというのがたまらないのである。
 このセットはなく、定食メニューに組み込まれてしまったようである。
 掻き揚げの定食でビール一杯。
 沼津まで移動する。
 1時間ほど市内散策。
 20年ぶりであろうか……。
 熱海まで移動、ここで乗り換えて、有楽町に午後7時着。
 交通会館の中にあるステーショナリーで「システムダテアリー」の年間スケジュール表を購入。
 西大島へ。
 東京は小雨である。
 ボンクラ息子その1の部屋に荷物を置いて、食材を買いに出る。
 ということで、たぶん23時頃に帰宅する予定の「家主」のために、東京での居候中はおれが専属料理人を務めることになるのであった。
 こちらには、おれが使用していてノートパソコンが設置してあるから、使い勝手はいいなあ……。

3月3日(金) 東京/SF大賞
 東京の隠れ家というか、ボンクラ息子その1の部屋で定刻午前4時に目が覚める。
 が、また寝るのであった。
 ボンクラ息子その1が出勤のあと、午前中、パソコンを借りて、少しは仕事もするのであった。
 いいなあ、東京の休日。
 午後、地下鉄で秋葉原で石丸ソフト3号館へ。あと有楽町へ移動して山野楽器を覗く。
 ケン・ペプロフスキーなどCD3枚。
 小雨が降ってきた。
 16時前、東京會舘へ。
 SF作家クラブ総会……10年ぶりに、名誉会員から普通の会員に出戻ったので、総会出席も久しぶりである。
 事務局長・東野司さんの事務処理ぶりに感嘆……物書きってのはええかげんなのが多いのだが、このテキパキとした進行は見事である。
 18時〜大藪春彦賞・日本SF大賞・日本SF新人賞の贈賞式。あと、パーティ。
 本年度の受賞者と受賞作品は、
 第8回大藪春彦賞 ヒキタクニオ『遠くて浅い海』(文藝春秋)
 第26回日本SF大賞 飛浩隆『象られた力』(早川書房)
 第7回日本SF新人賞 タタツシンイチ『マーダー・アイアン ――万聖節前夜祭――』(徳間書店刊行予定)

 
 左から、タタツ、飛、ヒキタの各氏。
 カタカナ2氏受賞というのも珍しい。
 『象られた力』の受賞理由は、ともかくその圧倒的文章力ということらしい。
 それは同感だが、その根底には、自己のアイデアとテーマ(むろん複数あるのだが)についての極めて粘着的な体質があるのではないかと思う。20年以上それらを考え続けている。
 これは、たとえば山本弘さんの『まだ見ぬ冬の悲しみも』にも感じるし、神林長平さんなど、そんな体質の代表格だ。
 『象られた力』が長期間にわたって書かれた短編集なのに新鮮な理由はそのあたりにあるのだろう。
 おれとしては、20年前から名のみ知っていた飛浩隆さんの実物に会えたのが感激であった。その生活パターンにも見習わねばならぬところが多い。
 ということで、ミーハー的記念写真、谷甲州さんと。「堀・飛・谷」と、姓が一字のはいい男ばかりである。
 実際に挨拶した飛さん、作品の印象どおり、理知的で物静かな方であった。
 島根在住のSF作家といえば日常会話も百メートル先でも聞こえる大音声の持ち主と思っていたので、意外といえば意外……あまりにも対称的なのである。
   
 日本SF新人賞のタタツシンイチさんのスピーチも人柄も面白かった。
 その受賞の言葉、「20年間コツコツと書き続けてきてとつぜん明るい光があたった」「まるでパニック状態」「ともかく今後も精進を続けます」……深々と一例して「どうもありがとうございました」
 と、まことに慎み深く、また真情がこもっていた。
 「SF Japan」の写真は和服で、ちょっと文士気質を感じさせる……と思ったが、挨拶して「本名」の名詞を見せて貰ったらペンネームの由来が氷解、まるでギャグである。笑いの線も期待できるかな。
 受賞作は「バブルが終わらないままの日本でサラリーマンが戦闘する」というユニークな作品らしいが、先に読んだ受賞第1作『様斬人形』は妖刀を巡る奇譚で、色々なものが書ける人のようである。
 ということで、久々に色々な方とお目にかかる。
 夏に公開される映画『日本沈没』に関連して何やら小松プロジェクトが進行している気配。
 角川春樹事務所は『神様のパズル』の主演女優の公募を発表しているし、映画がらみの話題が大きくなりそうな。
 まっすぐ東京の隠れ家に帰館。
 これから専属料理人としての仕事をはじめる。

3月4日(土) 浅草/阿佐ヶ谷
 本日は東京の休日である。
 深夜に録画しておいた『ブレージング・サドル』を見る。
 前に公開された時に見ているから、30年ぶりくらいかな。荒野のまっただなかでカウント・ベイシー・オーケストラが演奏している場面はよく覚えているが、その他のギャグは記憶にあるイメージの方が面白い。もっと爆笑したような気がするのだがなあ。
 昼、ボンクラ息子その1と浅草へ出かける。
 安くてまあまあの寿司屋があるというので行ってみる。
 なるほど、なかなかのもの。
 小さい店なので店名は伏せる。
 浅草寺から六区をブラブラ歩いて、合羽橋商店街まで行く。
 大阪の道具屋筋では見つからなかった「銅の雪平鍋」を探す。
 さすが合羽橋、店舗数もけた違いである。
 銅鍋を並べている店も数店。
 
 本日は調査のみ。
 高級なプロ用はアルミ鍋の10倍以上する。
 「今度帰省する時にみやげに買って帰る」と、嬉しいことをいってくれるではないか。
 いったん帰館したら、ベースの望月<グズラ>英明さんからメールが入っている。
 わが住所の確認である。
 東京に来ているよと返信。と、「渡したいものがある」と連絡がくる。
 ということで、阿佐ヶ谷で会うことにした。
 夕刻、阿佐ヶ谷の「鳥正」へ。
 グズラさんから、森山威男研究では「幻の資料」ともいうべきものをいただく。
 グズラさんが指導している「生徒さん」が偶然発見したものらしい。
 ありがたいことである。
 あと、モツ煮込み、ブリ大根、白菜の漬け物でビール、湯割り。
 望月さんは相当な読書家であり、特に深く読んでいる共通の作家がいるから、その情報交換などやっているうちに、たちまち2時間。
 だんだん「ご近所」まで巻き込んで、こういう雰囲気になる。
  
 あと、近くの、ライブも時々ある「スターダスト」という店へ。エリントン作品が揃っていて、ジミー・ハミルトンのフィーチャー曲をかけてもらって水割り飲んでいたら、すっかり酔っぱらってしまって、最後は↑これである。
 21時前まで。
 阿佐ヶ谷から千葉方面への直通が走っているうちに帰館。
 予定時刻をだいぶ超過しているというので、ボンクラ息子その1が亀戸までクルマで向かえに来てくれた。
 困った親父である。

3月5日(日) 東京→大阪
 朝5時半に目覚ましがなって目が覚める。
 げ、二日酔いである。
 ボンクラ息子その1は早朝からゴルフに出かけるという。
 いっしょに出て、クルマで駅まで送ってもらう。
 帰路は新幹線で、昼前に穴蔵に戻る。
 車中、眠りつづけ、帰ってから、溜まった新聞や郵便物を片づけつつ、やっぱり昼寝してしまう。
 夕刻、やっと気分回復、入浴、ビール。
 午後10時〜NHK-FM「セッション505」に森山威男カルテット登場。
 これを聞き逃し(録音忘れ)してはいかんので、本日帰宅したようなものである。
 Hush-a-bye、グズラさんのベースの響きがひときわ胸にしみるのであった。

3月6日(月) 穴蔵
 春雨霏々。時に強風余寒を送る。
 気象庁役人の予言、卯月上旬の気温なれど当たりたる験しなし。
 終日穴蔵、電脳卓に凭る。
 過日浅草を歩くに荷風のおっさんの気配憑依するなりや。

3月7日(火) 穴蔵
 昨夜、午後9時頃に眠ってしまったら、午前2時前に目が覚めてしまう。
 早寝がいかんのである。
 生活パターンを正常にしなければならぬ。
 が、「無理して起きている」のはできるが「無理して眠る」というのが難しい。
 昼前まで断続的に仮眠。
 昼メシその他で出かけようとしたら、自転車の後輪がパンクしている。
 原因不明。徒歩5分・豊崎のサイクルセンターまで押していく。修理代525円、これは5年前に廃業した徒歩3分のおっさんの半額である。良心的であるなあ。5年に1度くらいのことだけど。
 昼は「大甚」でカツ丼。今度は夜来るからね。
 この店はグズラさん好みのはずである。
 午後は穴蔵。
 22時を過ぎたので、そろそろ眠るのである。

3月8日(水) はやぶさ/朝ミラ/十三・やまもと/青空/ハチ/ミムラ
 定刻4時起床。
 「はやぶさは生きていた」というニュースは感動的だ。崩落現場で子供が生き延びていたニュースにも通じる。これから、まだまだ長い「救出」作業がつづくのだが、できれば2010年まで希望をつないでほしい。おれもあと4年、生きる目的ができるのだから……。
 気になって「案山子」のページも見る。こちらのページも生きている。さだまさしなんてまったく興味がなかったが、「替え歌(の一種)」で好きになるなんて、これまた希有な事例である。
 6時半に穴蔵を出てラジオ大阪へ。
 天気がいいので自転車で行こうかと迷うが、弁天町まで走った経験なし、遅れてもいかんので地下鉄で移動。
 『朝はミラクル』のゲスト出演である。
 本日のテーマは「自費出版」。何度か話題になっていたらしい。
 自分の著作を残すというのはいいことだが、身近な楽しみと考えるべきで、結婚式とか葬式とか何かの褒章みたいな「一生一度の大行事」と大げさに考えるべきでないと思っている。
 おれは「趣味としての自費出版」くらいに考えていたのだが、意外にもかんべさんの方が舌鋒鋭く、最近の「共同出版」という名のアコギな商法批判がメインになった。
 ただ、こちらも露骨な営業妨害をするつもりはなし、「歌手やタレントを夢見る人たち」を食い物にする商売に較べれば、まだ良心的なのかもしれない。
 おれの意見は、『桂歌之助』の本を作った経験から、わがHPに「自費出版について」としてアップしておいた。
 本日は「朝の市内探検」はせず、まっすぐ穴蔵に戻る。
 昼、穴蔵を這い出て、自転車で出かける。
 十三の「丹波」へ行って「きさらぎ漬」購入。明日からの龍野用である。
 ついでにネギ焼きの元祖「やまもと」の前にいたる。
 ちょうど席が空いていたので入店。5分もしないうちに、背後に行列。タイミングが良かったのかな。
 焼きそばを頼み、中ジョッキ一杯飲みだしたところで、カメラマンが「焼き場」をウロウロしはじめた。
 店の了解を得た取材らしい。が、カメちゃん、目障りである。
 撮影対象だけを気にして周囲を無視するカメラマン特有の無神経さが気に障るのである。お前、特権階級じゃないんだぜ。ま、そんなこと気にしていたら仕事にならんのだろうけど。
 
 ※2006年3月8日13時5分 やまもと(十三)
 角度によってはビールを飲むおれが写りそうな。
 むろん、おれのボケ面(焦点がボケた顔の意)が勝手にグルメ誌に載せられても、愉快ではないが、苦情をいうつもりは毛頭ない。
 その代わり、おれも断りなくカメラマンのボケ面(この場合はボケた表情の意味)を撮させてもらうことにする。おれが撮ってるの、気づかないようだったけど。
 落ち着かぬ昼食であった。
 淀川北側を柴島浄水場まで走り、長柄橋を渡って天五へ。
 青空書房に寄る。坂本さんとちょっと雑談。
 扇町公園を抜けて、インタープレイ・ハチでコーヒー。相変わらず「年金グループが増えてきた」という話題。
 昼間のハチが「年金ジャズ酒場」になるアイデア、実現するかも。おれは参加しないけど。
 帰路、「ジャズの専門店ミムラ」に寄る。佐藤允彦トリオの復刻版『パラジウム』が入荷していた。
 ということで、夜は『パラジウム』とアラン・バッシェのクラを聴きながらビール、湯割り。
 そろそろ早寝。明日からしばらく田舎生活である。

3月9日(木) 大阪→播州龍野
 定刻4時起床。
 早朝の電車で播州龍野へ移動。
 午前9時からタイムマシン格納庫にこもる。
 夕刻、実家に戻り、老母と晩酌……といっても、母は飲まないが。
 まだ花粉の影響はなし。
 寒いとはいえ、風呂場でキンタマを見たら、先月よりはシワシワが増えた気がする。キンタマ緩む……じゃなかった、寒さ緩む季節であろうか。
 もう寝るのである。

3月10日(金) 播州龍野の日常
 睾丸の皺伸びる暖なれど、未明より細雨烟のごとし。
 昼前、老母と相合い傘で五百米ほど歩いて医院往復。検査値は良好であった。
 午後は書斎に籠もる。
 夕刻より晩酌。
 母の夕食は18時であるから、それにあわせておれもビール。ボンクラ・サラリーマン時代には考えられない時間帯だ。
 この時間(午後6時台)、 NHKは井上二郎くんが担当している「ニュース神戸発」という地方ニュースであり、金曜にはジャズ・ライブがある。
 龍野にいると、午後7時前に、一杯飲みながらライブを聴くという、贅沢な時間が過ごせるのである。
 本日、松永貴志が登場、ピアノソロで2曲。「チャイルド・イズ・ヴォーン」がなかなか。
老母「ぶさいくな娘やな」
おれ「男やで」
老母「ええっ、そうかいな」
 と聴いていて、終わったところで拍手。
おれ「わかるか」
老母「暗譜であれだけ弾けるのはたいしたものや」
 鋭い指摘ではないか……。
 ということで、ライブ終わり、片づけ終わり。
 だんだん就眠時間が早くなる。

3月11日(土) 播州龍野→大阪
 朝、霧が深い。庭の松がかすんで見える。
 雨あがり、松にキリ。これで桜の開花が早く、坊主のTくんが来れば五光なのだが。
 午後の電車で帰阪。
 夕刻、久しぶりにかんべむさし氏来穴蔵。
 ビール飲みながら「SF検討会」なるものを開催。
 テーマはマル秘。強いていうなら「病気の話」だが、歳にふさわしからぬ病気にかかった場合の対処法ということになろうか。
 たとえば、おれが急にニキビに悩まされるとしたら、どこかおかしいと思った方がいい。
 まあそのような症例についての分析2時間。『宇宙病地帯』とか初期のSFマガジン「宇宙病」特集が懐かしい。

3月12日(日) 穴蔵
 定刻4時起床。
 久しぶりに早朝グルメ、自転車で暁暗の梅田を徘徊したいと思っていたら、雨である。
 しかたあるまい。
 5時、NHKニュースで2週間前に見た綾小路きみまろ似のMアナを確認しようとしたら、本日、別アナウンサーであった。
 ついてない日である。
 こういう日は何もしないに限る。
 ということで、終日穴蔵、ひたすら読書。
 今頃『容疑者Xの献身』を読む……感想は、直木賞選評を読んでからにするか。
 おれは東野さんの最高傑作は『天空の蜂』と思っている。

3月13日(月) 穴蔵
 終日穴蔵。
 外出すべき用事もあるのだが、昼前、なんと雪がちらつき、方針変更。
 久しぶりに穴蔵の大掃除を行う。
 夕刻、これも久しぶりに相撲中継を30分ほど見る。
 朝の『朝はミラクル』のゲストが桂文福師匠で、大相撲大阪場所についてしゃべりまくっていたからである。
 こんなに相撲に詳しいとは知らなかった。
 今場所の予想について、少しぼやかしたいい方だが「栃東は期待薄」で、明言したのは「白鵬が断然いい」。
 そのつもりで見ていたらドンピシャ、まったく予想通りの展開であった。文福師匠恐るべし。
 ……ポン人大関、ここ数年「いざという時はダメ」なのばかりである。それにしても朝青龍、品位がないなあ。
 夜、これまた久しぶりにBSで『大いなる西部』を見る。封切り時に見て以来だから47年ぶり?
 全編、背景に広がる平原の風景描写が素晴らしいが、最後が「峡谷」で終わるのがやっぱり不満である。広大な西部に訪れる新時代という雰囲気が、なんとも息苦しい圧迫感で閉じる。老害が共倒れするだけで、画面からまったく開放感・解放感が伝わってこないのである。
 中学時代の記憶は間違っていなかった。
 それとは関係なく、この峡谷シーン、「スターウォーズ」に影響しているのだろうか。冒頭が『隠し砦の三悪人』というのは有名だが、R2D2が峡谷を行く場面がよく似ている気がする。
 と、23時近くまで映画を見るのも久しぶりであった。

3月14日(火) 市内徘徊
 午前穴蔵、昼前から自転車でキタ徘徊。
 タイムマシンの部品関係、銀行、郵便局、その他。
 天五から扇町公園経由、ハチに向かう。
 おそろしい強風で、公園内、自転車で進めない。反対向きに姿勢を変えると、漕がずに走り出すからすごい。広場を避けて、建物沿いに移動。
 ハチ。
 珍しくも昼間に大ちゃんが来ている。せっかくなのでランチ+ビール1杯。
 大ちゃんも仕事の端境期で、ちょっと時間ができたところ。
 
 ↑夜の雰囲気だが、13時。テーブルにあるのはお冷やである。
 亀田3兄弟について意見を聞く。ボクサーとしての資質はなかなかで、辰吉の上を行く素材らしい。
 「あの親父は知ってるんかいな」
 「親父はしょせんアマチュアやないか」
 と、歯牙にもかけぬ様子。さすが元プロのプライドである。
 明日から龍野行きなので、帰路、旭屋に寄って数冊購入。
 寒い。
 明日からは春らしい陽気が戻るとかいうが、パッチはまだ脱がんぞ。

 ついでに雑読メモ。
●文藝春秋4月号、村上春樹「ある編集者の生と死」
 生原稿流出事件についてだが、安原顕との関わりが主。不思議な事件だ。
 ヤスケンが他の作家の原稿も売ったのかどうかがポイントだろう。
 なぜ、ある時期急に「春樹評価」を変えたのか……。原稿「売却」は死の半年ほど前らしいが、金に困ってとは思えない。店頭価格と「卸値」は大きく違うはずだし。
 森永ひさし(といっても、誰も知らないだろうな)じゃないけど、「何があったの」と訊きたくなるねえ。

●オール讀物3月号で直木賞の選評を読む。
 昨日読んだ『容疑者Xの献身』について。トリック明かしているのが数名。井上ひさしともあろう人がこの選評、いかんなあ。
 阿刀田高評がもっとも的確。「謎解き小説」としてのみ評価しており、「人間を描く」ことなどハナから問題にしていない……というよりも、構造上無理として、謎解きだけで直木賞に値するとも評価である。正反対の立場が渡辺淳一で、これも、「謎解き小説」として評価しない限り、正しい態度である。他の委員はすべて中途半端。
 おれはむろんミステリーとして評価すべき作品と思う。が、ミステリーとしてそこまで傑出した作品か?
 もっと凄い作品にできたのではないか。
 「ガリレオ探偵」が出てくるシリーズものの一編で、探偵側は既知の存在として描かれている。一方の「犯人」石神は探偵の旧友で「天才数学者」と認められる存在。
 ならばここでは「物理」対「数学」、あるいは「帰納」対「演繹」の息詰まる論理的対決が展開されないと面白くないではないか。
 これが思わせぶりな概論だけで、まったく迫力なし。偶然による旧友再会で酒を酌み交わしてどうなるのよ。
 ここに瀬名秀明『デカルトの密室』における「論理的バトル」のレベルを期待するのは酷かもしれないけど……それなら、おれには『デカルトの密室』がなぜ直木賞を受賞しないか不思議に思えてくるのである。
 『容疑者Xの献身』はミステリーとしては秀作と思うが、作者の代表作『天空の蜂』を超えるものでもないなあ。

●桂枝雀『桂枝雀爆笑コレクション4 萬事機嫌よく』(ちくま文庫)
 全5巻の4巻目。
 完結したところでと思っていたけど、やはりこの4巻目が白眉であろう。
 
 帯がすべてを語っている。
 「名キャラクター松本留五郎登場!」
 いうまでもなく巻頭の「代書」(代書屋)に登場する「ポン!」「ガタロ」の留である。
 枝雀師匠の演目からベストファイブを選ぶとなると、ファンの間では揉めに揉めるだろうが、「鷺とり」と「代書」はおそらくトップを争うだろう。
 特にキャラクターの創出ということでは、この松本留五郎が突出している。
 そして、活字で読んでも、やっぱり爆笑ものである。
 この留やん、枝雀落語では別作品でも活躍する重要人物だが、そういえば落語とはまったく関係ないこんなところにも名前があるのであった。
 このシリーズ、小佐田定雄氏の念入りな解題が値打ちだが、「代書」に関しては、噺家の区分に加えて枝雀師匠のバージョン違いも解説してあって貴重である。

3月15日(水) 大阪→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動。
 朝9時、龍野の「書斎」の室温5℃である。大阪の「穴蔵」が午前5時で16℃であったから、11℃低下。真冬ではないか。仕事にならず。

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