HORI AKIRAJALINET

『マッドサイエンティストの手帳』306

●マッドサイエンティスト日記(2004年7月前半)


主な事件
 ・穴蔵の日々(1日〜)
 ・2004 JPS展(3日)
 ・大阪市立科学館の新型プラネタリウムを見る(5日)
 ・播州龍野の日々(11日〜)

2004年

7月1日(木)
 久しぶりに「穴蔵」生活再開である。
 月末に処理しなければならなかった雑件含めて、雑用がずいぶん溜まってしまった。
 早朝からせっせと処理。
 10時前に自転車で出かける。
 梅田のデパート前、異様な人の列。どうやらバーゲンの初日らしい。
 紀伊之国屋書店の東、ヤンマーの北側の道にも異様な人の列。これはパチンコ屋のオープン待ち? きちんとネクタイしたのも並んでいるが。
 ヒマなんだのう。
 市内ウロウロ。
 役所関係のこともあって、夕方までかかると思っていたら、意外にも15時前に片づいてしまった。
 梅田を通りかかったので、久しぶりにハチに寄る。
 恒例ハチママ誕生日8/8の山下洋輔さんライブ、今年は8月7日(土)19時〜に決まったという。慌てて予約、今年は8番よりだいぶあとの番号になってしまった。
 明日、京都で山下さんのソロ・コンサートがあり、これは知ってはいたのだが、こちらの予定が決まらず、諦める他なかったのである。ハチママは当然ながら京都遠征という。
 ま、しかたあるまい。
 夜は久しぶりにボンクラ息子その2を入れての3人夕食。夏野菜パスタに冷えた白ワイン。600円のワインというが、バカウマ。本日だけのバーゲンで買ってきたという。専属料理人もあのオバハンの列に並んでいたのか? と聞けば、夕方行ったので1本しか残っていなかったという。やっぱりオバハンの嗅覚はあなどれんのだなあ。
 ワインを飲みながら、阪神がナベツネ棒振団を成敗するのを見物。ははは。エラー続出がたまらんし、西村くんというなかなかの打たれ屋登場にも拍手。だが、最後はやっぱり好漢・河原に登場してほしかったなあ。
 それにしても、ナベツネ、こんなチーム中心に1リーグ化して何が面白いんだろう。たまにこういう鬱憤ばらし試合があるから少しは面白いものの、これはずっこけの面白さであって、ナベツネ・チームにスポーツ本来の美学がまったく感じられないからなあ。

7月2日(金)
 暑い。
 クーラー効かせた部屋に閉じこもっていたいが、雑事まだ片づいておらず、昼前、自転車で市内ウロウロ。
 ついでにヨドバシでUSBフラッシュメモリーを購入。実家とのデータ持ち運びにCD−RWを使っていたが、書き込みに時間がかかってイライラするため、携帯メモリーに変更である。
 午後は穴蔵。
 室温32℃で、エアコンを稼働させる臨界温度突破。31℃なら扇風機だけで快適なのだが。

7月3日(土)
 朝から京都へ。
 京都市立美術館。
 日本写真家協会が主催する「2004 JPS展」を見る。
 金賞の「濁流の夜 蛍幼虫大上陸!そして…」は、河岸を這い上がる蛍の幼虫の群を長時間露光で撮った異色作。不気味にして幻想的な美しさである。蛍の幼虫が微光を放つことを初めて知った。
 「会員」の出展作は「写真の原点」でモノクロに限定されていて、さすがにプロの世界だけに多様。
 off
 なかでも永野一晃さんの「故 桂歌之助」は異彩を放っている。若く眼光鋭い時代の舞台、これは明らかに「口入屋」で膳棚を支えている場面である。
 ちなみに、「2004 JPS展」関西展は京都で7月4日までだが、このあと、
 ・名古屋展 愛知県美術館 7月13日〜19日
 ・札幌店 札幌市民ギャラリー 8月4日〜8日
 と開催される。
 受付にいた永野さんに挨拶。
 本当は夕方から永野さん行きつけの「祇園の店」でちょっと一杯やりたいところだが、まだ京都で飲んで大阪へ帰るまでには体力が回復しておらず、またの機会とする。
 といいつつ、炎天下を河原町まで歩いたら、さすがにフラフラ。
 おなじみミュンヘンのカウンター席で中ジョッキ。
 まっすぐ帰宅したら14時前である。
 夕刻、かんべむさし氏来穴蔵。
 久しぶりに1時間ほど雑談。
 実家にいる兄とメール交換数回。老母は暑さに弱いので戸惑うこと多いようである。
 夜はカッシーニが送ってきた土星の環の画像を眺める。
 ドナルド・A・ウォルハイム『土星の環の秘密』に感動してからほぼ半世紀! 人類の指先がここまで届いたかと、感無量であるなあ……。

7月4日(日)
 終日穴蔵。
 室温32℃、午後は扇風機で下着姿で机に向かっていたら、気持ち悪い汗ダラダラ。
 そのまま夕方まで。
 穴蔵に下着の着替えを用意をしていなかったので、シャワーなし、そのまま夕食、ビール。
 うへ、体がベタベタして気持ち悪くて眠れない。
 飲んでからシャワーというのは、おれとしては珍しいことだが、まあそれほど暑かったのである。

7月5日(月)
 リスボンの「ロボカップ2004」のヒューマノイドリーグで「チーム大阪」優勝のニュース。『ロボット・オペラ』とのシンクロニシティを感じるなあ。来年の「ロボカップ2005大阪」に向けて勢いがついたというもの。
 本日も暑く、曇天で湿度が高いから困ったもの。
 午後は雨という予想なので、歩いて梅田へ。梅田地下街を北端(三番街)から南端(堂島地下センター)まで歩き、ジュンクドーを覗いてから、市立科学館へ。
 プラネタリウムが新しくなり、七夕の「リニューアルオープン」に先立っての「内見会」……一種の試写会。宇宙作家クラブ会員ということで見せていただく。
 コニカミノルタの「インフィニウムL-OSAKA」と全天周動画システム「デジタル・スカイ・ビュー」(五藤光学研究所)の組み合わせ、音響システムとドーム照明、スクリーンとシートも新しくなっている。
 星のキラメキや色もリアルに再現……キラメキが強すぎるように感じる。これは澄んだ山頂で見る星空であろう。星座のパターンなど画像が映された時の少し明るい時の方がリアルに感じられる、こちらの視覚が街灯やネオンの照明公害に毒されているからであろう。
 off
 「インフィニウムL-OSAKA」は意外にコンパクトである。……が、プラネタリウムの格好は、やっぱりカールツァイスのが雰囲気があるなあ。
 『星空へのパスポート』上映、太陽系から超銀河団の構造まで見せる構成。
 カッシーニからの映像もいずれはここで見たいものだ。
 35分歩いて帰宅。
 結局雨は降らず。カンカン照りになった。気温35℃以上。またも体が汗でギトギト。
 シャワーのあとのビールが旨い。
 冷ヤッコ、イワシの梅肉巻き、ミニオムレツ・夏野菜添え、トリキモ煮、トマトサラダを並べてビール、水割り。CDはステファン・グラッペリ、バディ・デフランコ。暑いのもよろしいなあ。

7月6日(火)
 わ、午前1時半に目が覚めてしまった。暑くて眠れない。
 ちょうど『AKIRA』が放映される時間であったので40分ほど見るが、しんどくなる。作品がつまらないのではない。映画が辛いというか、「時間芸術一般」がしんどくなってきたのである。よほどの作品でない限り、2時間以上拘束されるのは体がもたない。
 クーラーをつけて、横田順彌『古書ワンダーランドA』を拾い読み。
 やっと眠りかけたら、東側がベランダの穴蔵、朝から強烈な直射光で加熱される。
 たまらないので、遮光カーテンを引いて、またクーラーつける。朝9時半までこうしておけば、昼間は扇風機だけで過ごせるから不思議だ。
 終日穴蔵……のつもりが、午後、某シナリオ学校のS崎さん、近くまで来たからと連絡あり、近くのスタバで雑談。小説の話をしているとやっぱり面白い。

7月7日(水)
 終日穴蔵……のつもりが、まだ雑用が片づいておらず、午前中、市内を自転車でウロウロ。
 曇空のはずがたちまちカンカン照りになる。
 このところ、毎日「この夏いちばんの暑さ」と報道されているような気がするなあ。
 午後は穴蔵。
 ボケーっとしていたらもう夕方である。
 わが穴蔵、窓の外は古い市営住宅が棟を並べていて、住民の多くはご老人である。都心の谷底みたいで、夕暮れは急に暗くなる。空は真夏の青空で、遠くのマンションのみ西日が射す。昼と夜が混在するマグリツトの世界。
 これは秋口の雰囲気なのだが、まだ梅雨も明けていないはず。時刻も季節も人生もたそがれであるのかなあ。プロ野球もしかり。ナベツネの傲慢さを見ると、もう野球への興味は失せた。
 off
 空梅雨のはや暮れにける街の底

7月8日(木)
 SFウェブマガジン「Anima Solaris」50号が公開されている。
 ぼくもメッセージを書いているので感想が重なるが、内容のレベル、ウェブ技術、ともにたいしたものだと思う。
 終日穴蔵。
 本日も「この夏いちばんの暑さ」だったのではないかい。
 テレビは曽我さんのインドネシアへの出発の中継ばかり(らしい/見てないから推測)。
 夜はビール飲みながら、デフランコ、トミー・フラナガン。

7月9日(金)
 本日もたぶん「この夏いちばんの暑さ」みたいな日照り。
 今日も穴蔵に閉じこもっていたいが、来週からしばらく実家行き、ウィークディ昼間に片づけておかねばの用事があって、市内を自転車でウロウロ。……日本橋の部品屋まで自転車というのは、たぶん途中で脱水状態になりそうなので、南森町に自転車を置いて、地下鉄で往復。日本橋、しばらく来ないうちにだいぶ雰囲気が変わっている。変わらぬのはジャンク屋だけか。
 昼過ぎ……冷たい蕎麦が食べたくなって、西天満の「なにわ翁」へ。ここは初めて。ぞるそば800円を試みるが……まあこんなものか。基本的に、わしゃ蕎麦の味はよくわからんな。「たかはた」でぶっかけ2杯食べた方がよかった。
 午後帰宅。
 疲れる。体が干上がったみたい。食欲がない。
 机に向かってぐったりする。
 夕方、ミホさんから電話。
 ミホさんが豚肉アスパラ巻きや蕪の梅肉和えを作ってくれた。
 ミホさんと曽我さん一家の再会中継を見ながらビールを飲む。
 すこし気分がましになってきた。
 ……こんな文体、難しいものだなあ。
 テレビがつまらんので、CD。本日はデフランコ「枯葉」とモンク「ソロ・オン・ウォーグ」でジャックダニエルの水割り。

7月10日(土)
 朝6時、久しぶりに激しい雨。
 豪雨時の慣例でベランダの掃除。血痕を赤いペンキで隠すのと同じである。ちょっとちがうか。
 雨は2時間ほどでやむ。
 昼、明日からの播州龍野行きのために買い物など。CDショップタワー、ディスクピア、梅田ロフトを覗くが、特にめぼしいものなし。全体にJAZZが減ったなあ。
 午後帰宅。
 疲れる。体が干上がったみたい。食欲がない。
 机に向かってぐったりする。
 夜、専属料理人から電話。「夕食遅くなってすみません」
 専属料理人が並べた「鶏肉なんとか風のグリル・アスパラ添え、スルメイカのボイルとトマトをオリーブ油でなんとかしたサラダ、夏野菜を色々なんとか風に炒めたなんとか」でビール、ワイン。
 少し元気が出てくる。

7月11日(日)
 朝5時過ぎ、専属料理人が珍しく早起きしておる。
 選挙の立会人を頼まれていて、6時半集合なのだという。
 朝食を作ってもらうのは久しぶりである。
 午前7時に投票。……7時10秒前に投票所に行ったら、結構人が並んでいる。早く投票済ませて遊びに行こうという雰囲気でもなし、やはりせっかちが多いのであろう。
 投票後、直ちに播州龍野に向かうのであった。
 「播州龍野の標準的日々」再開である。
 老母は今回の参院選「はじめて」棄権という。
 タクシーを使ってまで投票に行くのが面倒という。確かに投票所(中学校)の校門まで行っても、校庭を横切り体育館を通過するのはリハビリ中の母には辛そうである。ふだん世話してくれる「近い身内」は本日法要でクルマともども全員出払っている。しかたあるまい。
 ……このへんが某宗教政党の組織力とちがうところだ。
 大阪のご近所、とんでもないドラ息子がいて、明け方にバイクでけたたましい音を響かせて走り回る、路上で朝までたむろして騒ぐ、ゴミはばらまく吸い殻は捨てる、とんでもない悪ガキだが、選挙権獲得するや、親に連れられて投票に来るという。親も親であるなあ、近所迷惑よりも政治。投票所に連れてくる力があるなら教祖様のお力で迷惑行為をとめてくれよ。
 20時から選挙の開票速報を見ながらビール。
 老母は「投票してないと面白くない」と早々と寝てしまった。次回は無理しても連れて行くからね。
 自民は「惨敗には至らず」で、確かにそう面白くもない結果のようである。
 おれも早寝。

7月12日(月)
 朝5時に朝刊到着、昨夜の午後11時くらいまでをカバーしているから立派なもの。
 たいして面白みのない結果である。
 ま、「おかしなの」がほとんど落ちたのは痛快。宗男、清美、幸男だけどね。
 朝、植木屋がタンクを積んだトラックでやってきて庭木に消毒剤を散布しはじめた。先日依頼していたらしい。窓を閉め切る。
 庭木なんて、自分の部屋の窓からボケーと眺めているだけで、死角も多く、どんな木が生えているのかゆっくり見たこともない。
 通用口の外側にバラ(だろう、これは?)が咲いていた。
 別に手入れいているわけでなく、なんとなく生えているのである。
 off
 高倉健さん、来てくれないかなあ。
 ま、安曇野の白い庭とはえらい違いだからなあ。
 庭木の手入れなんて面倒で面倒で……ま、司馬記念館みたいな雑木林がいちばんだろうな。あれはあれで細かく計算してある感じだが。
 夜は水割り飲みながらLPを聴く。
 森山威男の「INTRODUCING TAKEO MORIYAMA」を大音響で聴いていて、曲順がジャケットの裏に記載されているのと違うことに気づく。これはジャケットの印刷が間違い。トップの曲は「Hachi」である。むろんわがディスコグラフィ記載のが正しい。これ、CDでは直っているのかなあ。
 このLP、演奏は素晴らしいが、なぜか録音がひどい。当時、オーディオ系のファンが酷評していたのを思い出す。確かにバスドラがズシンとは響いてこない。
 ちょっと物足りないなと思っていたら、とつぜん家がグラグラッと揺れだした。
 後で調べたら、次のような地方ニュースであった。
 『兵庫県で震度3。12日午後9時45分ごろ、関西地方を中心に地震があり、兵庫県福崎町で震度3の揺れを記録した。気象庁の観測によると、震源地は兵庫県南西部で、震源の深さは約10キロ、地震の規模(マグニチュード)は4.0と推定される。』
 森山御大の怒りとしか思えんぜ。

7月13日(火)
 播州龍野の標準的1日である。
 梅雨明けであるらしい。
 「白骨温泉」で入浴剤をぶちこんでいるというニュース。
 ゴキブリが一匹見つかったのと同じで、こりゃ全国の温泉で似たようなことはでやってるはずだ。
 新参者が増えるにつれて老舗の湯が涸れるということもあるはず。「なんとか温泉組合」といっても仲良しクラブではなく、土地にしがみついた連中の利益団体、水面下ならぬ「湯面下」でドロドロの争いが繰り広げられているはず……と、おれは百姓の「水争い」がいかに陰湿で凄まじいものかを目撃してきた(さすがに殺人まではないけどね)ことがあるだけに、そのアナロジーから想像するのであった。
 白濁した湯にそのうち血が混じるぜ……と温泉なんてものに皆目興味のないおれは思うのであった。
 温泉なんてSF作家クラブの旅行で熱海に行って以来、もう20年以上行ったことがないのではないか。SF大会とかダイナコンなどが温泉であっても、入浴したことはないものなあ。だいたい風呂に入るなんてことは月に一度あるかないか。温泉なんてもう一生行くことはあるまい……などと、猛暑の夕刻、シャワーを浴びつつ愚考するのであった。

7月14日(水)
 播州龍野の標準的1日である。
 ちと事情があって、「カトリック大阪大司教区」の「管財」関係という人が大阪から来るので、龍野のあちこちを案内することになった。
 龍野教会というのは、「霞城町」という優雅な名の場所にあって、旧大名屋敷がそのまま教会である。珍しい形態なので白壁の屋敷が観光案内には必ず紹介してある。ここが、まあ、都市計画とかなんとか……らしい。で、まあ、市内あちこちを……ということらしい。
 どんな人が来るのかと思ったら、サファリ・ルックのヒゲ面の兄ちゃんがジムニーで乗り付けてきたからびっくり。まあ、神父ではないようだけど。
 探検家みたいな気分で炎天下の龍野市内ウロウロ。
 まあ、狭い町だなあ。1時間もあればだいたい回れる。
 ということで、シャワーのあとのビールがうまい。
 野球……オリンピックの「壮行試合」とかいうのをやっとるが、これ、何か意味あるのかしらん。
 プロ野球に興味を失ったおれは、プロアマ混成チームの棒振りにも関心がわかないのであった。
 オリンピックにもナベツネはからんでいるのかな? わからんなあ。ツツミがからんでいるからなあ。欲ボケ老人、どこに出てきても不思議ではない。

7月15日(木)
 播州龍野の標準的1日である。
 猛暑である。
 昼の室温32℃。クーラーのない(設置のしようのない)家、風通しのよい場所に寝転がって本を読むしかすることがないのであった。


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