HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』273

●マッドサイエンティスト日記(2003年4月後半)


主な事件
 ・第15回グリーンコンサート(20日)
 ・雑読雑聴というコーナー開設(25日)
 ・山下洋輔氏、紫綬褒章受章の発表(28日)

2003年

4月16日(水)
 早朝の電車で播州龍野のタイムマシン格納庫に移動。
 タイムマシンの機内トイレのランプについて規格の変更を検討する。
 夕方帰阪。
 谷川渥篇『廃墟大全』(中公文庫)を読む。

4月17日(木)
 終日穴蔵。
 快晴で暖かいので、穴蔵に外気を入れて乾燥させる。まだ桧の花粉が多くて気になるのだが、閉めきりの雰囲気ちょっと限界。午後出かける間に、専属料理人に掃除機をかけてもらうことにする。ついでに冬物関係大量の洗濯依頼。専属掃除人と専属洗濯人の兼務を命ず、である。
 体を動かし出すと、調子が出てきて、書棚も整理、ベランダも掃除する。
 こんな日に限って雑件集中。
 電話の多い日である。
 その間、少しは仕事もするのであった。
 昼過ぎ、自転車で5分ほどの某施設へ。旧NULL同人だった川崎恭子さんを奈良から右原彰子さんが見舞いに来ているので、ロビーまで。
 off
 川崎さん、脚は弱いがお元気である。「犬の面会日」という不思議な日で、「それぞれにお馴染みの犬が10数匹マイクロバスで訪ねてくる」というのである。
 続々と犬たちがやってくる。
 使えそうな場面であるなあ。
 2時間近く雑談の後、掃除が終わった穴蔵に帰館、やっぱりくしゃみが出る。

4月18日(金)
 終日穴蔵。
 初夏の陽気である。

4月19日(土)
 夕方からの「大阪シナリオ学校・エンターテインメント講座専科」のため、昨日から読んでいた提出作品を再読。5篇中、中編が3篇あり、それぞれに面白い。
 講座終了後、例によって中華店で雑談。他の講座の流れもあって大盛況である。
 「とり・みき」そっくりの某くん、仕事が大手電機で天文機器を担当、すばるの関係でハワイへもよく行くという。現地駐在の林佐絵子さんとも知り合いだというのにびっくり。すばるは一度見学に行きたいのだが、おれには天文台まで一気に登るのは無理だろうからなあ。

4月20日(日)
 世間休日とはいえ、定刻午前4時に起床するのであった。
 5時からのニュースのあと、『日本の話芸』の再放送、なんと桂米朝『鹿政談』である。小松左京マガジン5号での発言どおり、奉行は川路聖護で演じられている。朝からこんなのが見られるとはなあ。……早朝の映画とかJAZZ・CDはダメだが、米朝師匠だけは別格である。
 ボンクラ息子その1から電話。「フィアットを買う」ので、住民票を東京に移すから、転出届を出してくれという。
 大丈夫なんかいな。平日は仕事ばかりで何の楽しみもないからというが。
 午後、地下鉄で森ノ宮ピロティホールへ。
 友人の菊川素子さんがバイオリンで参加しているグリーン交響楽団の、第15回グリーンコンサート。
 ジャズばかりでなく、たまにはクラシックも聴くのであった。
 off
 「東欧エキゾチズムの饗宴」という特集で、
 ・スラブ行進曲
 ・組曲「コーカサスの風景」
 ・ハンガリー狂詩曲第2番
 ・序曲「謝肉祭」
 最後に、ブラスオルケスタや男声合唱団など全出演者、会場も含めて「大きな古時計」大合唱。これはちょっと照れくさいね。
 夜、愛知県で39歳の「不動産会社社長誘拐殺人」の報道。幼児でないのが珍しい。

4月21日(月)
 朝食抜きで近所の医院へ。血圧測定とついでに血液検査もする。
 この医院、呼吸器系もあって、待合室でやたら咳き込む老人が多く、こりゃ時節柄、気になるなあ。
 あと、区役所へ行ってボンクラ息子その1の転出手続き。
 ついでにネクタイして市内での仕事幾つか。
 結局、雑事で夕方までかかってしまう。
 『駅馬車』衛星放送……何度目かなあ。今週はヒチコックも色々放映している。ただ、ヒチコックはちと見飽きた。ジョン・フォードは何度見ても飽きないなあ。

4月22日(火)
 午前3時に目が覚めてる。
 臨時ニュースがないかとテレビをつけるたら、とつぜん「北北西に進路をとれ」のパロディ場面が出てきた。番組表を見ると『裸の銃を持つ逃亡者』という映画の終わりの方。しばらく見ていると、パロディ場面続出のコメデイらしい。「北北西」の場面はよく出来ているが、あとは散漫。こういうのはシリアスな演技で見せる方が面白いのだがなあ。「独立愚連隊西へ」で岡本喜八がやった西部劇パロディの方が遙かに優れている。
 昼まで穴蔵で仕事。
 まだ雑用が残っていて、午後は自転車で市内ウロウロ。
 愛知県の誘拐殺人、「犯人」らしいのがマニラから送還され、20時頃に成田着? マニセに「当日券」で行けるのか?

4月23日(水)
 早朝の電車で播州龍野のタイムマシン格納庫に移動。
 上海方面の話がどうなるのか、先行き不透明である。おそらく近日、渡航延期勧告が出るのではないか。
 龍野、曇り空で、肌寒い。
 実家に寄り、老母としばらく雑談。こういう場合、あまり話題がなくて困る。最近は向田邦子を再読しているとかで、高島俊男の向田邦子論も読んでいるから、ボケは心配しなくていいようだ。
 夕刻帰阪。

4月24日(木)
 時々小雨が降る曇天。
 終日穴蔵。
 星野力『幻層夢』を読む。
 感想をアップしたい本がたまっているので、本の感想ページを独立させる準備をする。

4月25日(金)
 曇天、小雨が降ったりやんだりの典型的菜種梅雨である。
 こんな日は雨読に限る。
 終日穴蔵。
 星野力先生の『幻層夢』も含めて、新規開設した雑読雑聴に感想をアップ。ここ1年ほど、読んだものの何も書いていない本がずいぶんたまってしまった。この際「職業意識」は捨てて、気楽にランダムに新旧色々アップ、ともかく新刊に追いつくようなしようと思う。
 夕刻のニュースで、島根沖それも原発の近くに「大型潜水艦」が現れた(目撃者は茶髪のダイバー?)というのは、いったい何だ? 前の江ノ島に工作員上陸と同じとは思えないし。

4月26日(土)
 夕方から天満で大阪シナリオ学校「SFの書き方」講座。
 「SF概論」的なことを話しても無駄とわかってきた。SF専門でやろうとしている人なら「SFの定義」「SFの歴史」はいずれ自分で調べるだろうし、SF以外の小説を志している人には時間の無駄。つまり「SF独自の文章表現」に重点を置いて、のっけから「実技」の方が役に立つだろうという判断である。書かなければ何も始まらないから。……ということで、従来4時間かけた部分を1時間に圧縮。あと30分を「実技」の説明、残りを「課題」説明としたが……詰め込み過ぎであろうか。普段よりかなり早口になっていたようで、かなり疲れた。
 あと、ビールがうまい。
 帰路、旭屋で『と学会年鑑BLUE』。午後10時まで営業しているのでありがたい。
 帰宅後水割り。と、阪神が「奇跡の逆転」をやってのけたらしい。
 今から梅田地下街へ行けば面白い騒ぎが見られそうだが、さすがに元気なし。

4月27日(日)
 5月中旬の陽気である。
 が、気分は梅雨空のごとく。……朝からまたも集合住宅関係でややこしい電話。「ペット」と「老人問題」が絡むからややこしくなる。
 要するに、足腰の衰弱予防のため(および「癒し」とかなんとかもあって)犬を飼っている独居老人がいる。が、脚が弱ってあまり散歩に行けない。犬は出たがって、異様な声で鳴く。この声が不気味で(死体の横で忠犬が鳴いている場面を想像させるらしい)、なんとかならないかという相談電話。「犬の散歩を引き受けてくれるところもあるそうですよ」といわれるが、そりゃ本末転倒だろうが。ペットは規約では禁止だけに、難しい問題だ。
 ま、その後色々あって、仕事する気分にはなれず。
 夜のニュース。
 豊郷町の大魔神・大野和三郎が返り咲きらしい。
 余所の町のことだから、口を挟むことでもないが、嫌なことは重なるものである。

4月28日(月)
 嫌なことがあればいいこともある。
 朝刊で山下洋輔さんの紫綬褒章受章を知る。
 これで、桂米朝、筒井康隆、山下洋輔と『3大「大好き」』揃って紫綬褒章受章である。
 ※この『3大「大好き」』というのは、阪大フロンティア研究機構の河田機構長のアトム誕生祝賀講演会での発言で、河田教授の場合は、桂米朝、小松左京、ミック・ジャガーである。小松さんか可能性あるが、ミック・ジャガーに紫綬褒章は難しいだろうなあ。
 さっそく祝メール。メールを使わない「大阪の約1名」も多分大騒ぎしているであろう。
 昼を待って「大阪の約1名」のいるインタープレイ・ハチへ。
 ハチママ、当然のことながら大ハシャギで、案の定「ちょっと、何着て行こ?」などといっておる。
 当然のことながら、山下さんのフィギュアを前に置いて、ビールで乾杯。
 off
 「ハチママ、メールを使わないから、ハチママの分もお祝い書いてメール送っといたで」
 「ウチは朝7時半に電話したがな」
 ……とても待ちきれなかったらしい。まあ、朝刊後は電話殺到であったろうが、やはりハチママ、「一番乗り」したかったらしい。
 白ワインを買って帰宅。
 夜は、専属料理人に、春野菜のパスタなど色々作ってもらって、キリッと冷やしたシャブリで祝杯。
 ニューヨーク・トリオ中心に山下さんのCDを流す。
 ふだんジャズを聴かないボンクラ息子その2、「おじいさんの古時計」に感心したらしく、ちょっと凄いやん。これを機会に更正してジャズ好きになってくれればいいのだが。

4月29日(火)
 初夏の陽気。朝から室温27℃である。
 終日穴蔵。少しは仕事もするのであった。
 気分がいいので、午後、自転車でかんべむさし氏の事務所までサイクリング。
 ここでも祝賀。ただしビールは飲まず。

4月30日(水)
 大塚英志『キャラクター小説の作り方』(講談社新書)を読む。
 わがシナリオ学校の講義と重なる部分が多く(換骨奪胎法/別名パクリの技術と呼んでいるが)さすがにまとめ方はうまい。ただ、後段はちょっと異論も。
 ただ、手の内をここまで公開してある点は立派である。
 ネクタイしての仕事で午後、市内ウロウロするものの、月末と連休前が重なってか、銀行はどこも長い列。
 銀行関係は明日に延ばして(借金がないということは、こういう場合嬉しいね)、某部品屋にタイムマシンの部品を受け取りに行く。
 ボンクラ息子その1から電話があったらしく、「フィアットを受け取りに行き、そのまま夜中走って、明朝帰阪する」とか。大丈夫なんかいな。
 明朝、こちらはタイムマシンの部品を龍野の格納庫まで運ばねばならず、珍しく夜中まで仕事をするのであった。


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