HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』218

●マッドサイエンティスト日記(2001年11月前半)


主な事件
 ・ルン吉くん一周年(10日)
 ・大阪シナリオ学校のエンターテインメント小説講座開講式(10日)
 ・ナム・ジャズ・クラブ第1回ライブ(12日)
 ・怪文書?(12日)
 ・司馬遼太郎記念館を訪問(14日)

2001年

11月1日(木)
 わ、2時に目が覚めてしまった。
 空腹を覚えて午前3時、キタ新地まで自転車で行く。滝川さんご推薦の「まるとく」という店を視察。こんな場所でビール大瓶480円とは信じがたい。おでんと蛤の酒蒸し。メニュー豊富で大衆酒場の価格である。新地のオネエちゃんもちらほら。滝川さん、飲めないくせにいい店を知っているなあ。
 原稿も書いたのであった。

11月2日(金)
 畠山けんじ『中村修二の反乱』(角川書店)を読む。青色発光ダイオードに関して発明者「スレイブ中村」が元勤務先の日亜化学を提訴している事件だが、本書は事件ものではなく、まあ中村修二のちょっと早めの評伝というところか。少年時代から提訴にいたるまで、よく書けていると思うが、事件への興味で読む立場としては物足りない。特に提訴に至る「主因」と思える「悪役」日亜の二代目社長について、名前も書かれていないし(小川英治だということは調べればすぐわかるじゃないか)インタビューもしていない。拒否されたのならそう書くべきだ。創業社長の婿養子で、キャラクターからいくと通産官僚みたいな雰囲気、興味をそそられるところだがなあ。また豊田合成と特許にからんで係争中の「ライバル」A氏についても、やはり取材してほしいところだ。元名古屋大から名城大に移った天野浩・元教授なんだろ? 同じ学会で前後して論文発表もされているわけだから、ここはどっちの味方というのでなく取材してほしいところだ。が、ともかく青色ダイオード事件の第1弾ということで面白く読んだ。
 つづけて、別冊ジュリスト157『著作権判例百選』(有斐閣)を拾い読み。
 これは87年に出た別冊ジュリスト91『著作権判例百選』を取捨選択して新判例を加えたもので、わが「太陽風交点事件」も再録されている。
 ありがたいことだが、この「事実の概要」の要約が間違っているのでちょっとコメントしておく。……「日本SF大賞」が受賞作を徳間書店の文庫本に収録を前提としているという記載。これは間違い。そう主張したのは原告側(早川)であり、徳間は準備書面でこれを否定、証拠として賞の規定と覚書を提出している。その後、この点は争点から外れている。判決をよく読めばわかるが、被告側が認めたのは「文庫が出版された」という事実だけであり、賞の規定にしたがって出版されたわけではない。
 谷井精之助氏の「解説」は、この点について「これが真実だとすれば、少しおかしい」と出版契約の効力について疑問を述べておられるが、そのとおりで「これは真実ではない」のである。そのことだけコメントしておく。

11月3日(土)
 珍しく雨の文化の日。
 終日「穴蔵」。
 某H氏からメールあり「相方の父親」という文言があって仰天、てっきり独身……いや、家族関係など興味ないので質問したことすらなかったのだ。あわてて返信問い合わせると、親しい友人しか知らないが、年内入籍の予定なのだとか。まあめでたいことである。
 梨元なんて下司は、こうなると大騒ぎするのだろうな。

11月4日(日)
 終日「穴蔵」
 タイムマシンに関して、色々な文書を作成。
 特許出願はまあ慣れているけど、司法書士の分野は神経を使うことである。
 夜、テレビで北野武『BROTHER』を観る。……こりゃひどい。長く間延びしたシーンが多く、散漫。やくざの不気味さなら、コッポラのやくざ、ええっとタイトル何だっけ、ロバート・ミッチャムと健さんが演ったの、あの方が指詰めだけでも遙かに凄くまたおかしかった。

 ※この映画はコッポラでなくシドニー・ポラックの「ザ・ヤクザ」であるとシネマ1987のhiroさんから教えていただいた。そうでありました。あの指詰め、ミッチャムが「友情の印」として詰める、へんなものだった。ヤクザの事務所にでかい提灯がぶらさがっていたり。沢木耕太郎のエッセイで健さんが語るミッチャムの別荘の話は、たぶんこの映画が縁であろう。真夏に冷房を効かして室内に暖炉があるというのが凄い。(2001.11.16)

11月5日(月)
 曇天の大阪市内、昨日作成の書類持って自転車でウロウロ。
 あ、思い出して、正月の米朝独演会のチケット買う。1月3日分、もう2階席しかない。これでサンケイの独演会最終というのは本当であろうか。

11月6日(火)
 またも書類持ってウロウロ。公証役場なるところへは初めて入る。

11月7日(水)
 またも書類持って市内を自転車で走る。本日は「上町台地」の背骨みたいな場所まで走るのだから、いい運動になる。
 某役所の某書類、大阪はOCR方式になっていて、書式がまったく異なることが判明。
 帰路、南森町の歩道で同級生のH田くんとばったり。「よお、何しとるねん」「タイムマシンの認可をとりつけるねん」……向こうは肩書きが「執行役員」である。しんどそうな仕事だなあ。
 帰宅後、夜中まで「穴蔵」。23時過ぎ、自転車で速達を中央郵便局まで投函に行く。ちょっと寒い。
 大阪駅北側、ヨドバシカメラの裏手、道路や駐車場など突貫工事中、間に合うのかなあ。確か22日オープンのはずだが。これが不思議に間に合うんだよなあ、日本の場合。万博しかり、わが書類しかり。

11月8日(木)
 早朝から播州龍野へ移動。
 こちらでも、ちょっとややこしい事務手続き。ああしんど。
 実家の庭の冨有柿がまだだいぶ残っている。いいのを選んで3キロほど下げて、夕方帰阪。
 帰りの車中で週刊文春を読んでいたら坂田明さんのインタビュー記事。子息・坂田学のドラムと親子共演するとか。難波弘之氏が「坂田学のドラムはユニークで面白い」といってたから、一度聴いてみたいものだ。ぼくが聴いたのは小学上級か中学生に一度だけではなかったかな。……その坂田明さん、8月にオジイチャンになったというからびっくり。いや、みんなそういう年齢なんだよなあ。

11月9日(金)
 書類にちょっとミスがあり、またも本日、大阪市内を自転車で東奔西走。
 西長堀の図書館へ返却の資料もあり、その帰りに、かんべむさし氏の事務所に寄る。Windows XP 機が入ったというので、ちょっと見学、ぼくがいじって変なクセをつけてはいけないので、しばらくは、不明の時だけレクチャーということにするが、もうある程度使い慣れている気配である。(かんべ氏はつい先日までMS-DOS機)
 野田阪神へ行く必要あり、JR野田駅前、ここでさぬきや並びの立ち食いうどん「笑顔満腹」という店、ここはいい。いきなりランキング上位進出である。
 ……ああよく走った日である。たぶん20キロ以上……30キロ近いかな。

11月10日(土)
 朝、お、ルン吉くんが雨上がりの路上に、体を左右にゆするおなじみの仕種で立っている。10月18日以来。……昨年の今頃に来てちょうど一年ではないか。確か、ピンクの防寒服で現れたのが昨年の11月はじめ。気になりだしたのが11月7日、初めてデジカメに記録したのが11月14日である。まったく同じ位置で同じ姿勢。防寒服だけが汚れたが、ともかく1周年である。
 週刊ダイヤモンド恒例の「倒産危険度ランキング」が出るのもこの頃。
 明日はわが身である。
 夕刻、天満のエル大阪へ。
 大阪シナリオ学校の「エンターテインメントノベル講座」入講式で、記念に募集している「ショートショート大賞」の授賞式も兼ねている。
 出題と選考が小生。
 今回(第3回)の題は「時計」であったが、予想通り、タイムマシンにした作品が多かった。
 ……選評はシナリオ学校のホームページに掲載されるかな?
 受賞作は安成美純『クロック』
 佳作2編、それに境界線上にあった作品もそれぞれ面白い。
 安成美純さんは第1回「最終選考候補」、第2回「佳作」と着実に腕を上げてきた人で、今回のは短編を圧縮したようなところがあるが、新加速剤かと思わせて別のテーマを持ってきたところが面白い。
 off
 前回の入校式が「放送作家」の講座といっしょで、こちらの講師・萩原さんが型破りの挨拶をしたので、もし同じ形式なら、今年はこっちも過激に行こうかと思っていたのだが、今年は「ノベル」部門だけだったので、インパクトには欠けたかもしれない。
 ただし小林一博『出版大崩壊』(イーストプレス)は立ち読みでいいから目を通しておいた方がいいと話す。

11月11日(日)
 夕刻、和泉府中の宝国寺へ。ジャズライブを聴く『ナム・ジャズ・クラブ』の新規発足第1回である。発足会員は17名。ビジターもあって20人ほど。最初だということで、はじめにビールで乾杯。
 井上弘道(ts)八木隆幸(p)枝信夫(b)石川潤二(ds)のカルテット、2ステージ。井上弘道さんは初めて聴くがいい音色のテナーである。早めにリクエスト用紙に記入したので「Body and Soul」を3曲目に演奏してくれたが、これは絶品であった。2ステの「アイ・リメンバー・クリフォード」も。バラードの音色が特にいい。
 off
 だんだん気心が知れてきて、近所からお酒やオードブルが回ってくる。ありがたいことである。
 ドラムの石川さんは、顎髭をのばすとオサマ・ビン・ラディンに似ているのではないか、とか、ベースの枝さんは「馬場のぼる」そっくり(といっても、わかる人は少なくなったなあ……)とか。ハイキング気分のライブで、演奏者はスリッパか靴下という、実にアットホームな雰囲気である。
 off off
 これからは年2回くらいのライブになりそうである。

11月12日(月)
 夜中にとつぜんFAX受信。
 何やらレポートらしきものだが……
 縦に「班」、横に「項目」が並んだ集計表みたいである。
 下記のような書式だ。

   創価班 成果報告
 ------------------------------------------------
 班名   統監 本流 入会 入決 本流達成者 本流予定者
 ------------------------------------------------
 ○○班
 ○○班
 ○○班
 ○○班
 ○○班
 ……
 ------------------------------------------------
 区合計
 ------------------------------------------------

 こんな集計表である。ここに数字が記入してある。「本日中にすい上げ」とか深夜「班長会」とかのメモも。わしゃ熟睡時間だから、班長会には行けまへんで。
 だいたい「本流」って何なんだ? 傍流、亜流、小笠原流、北辰一刀流などもあるのだろうか。
 まあ、わしゃ三流だから、あんまり関係なさそうだけど。
 こちら「区委員長」さんじゃありませんから、深夜FAXはどうかご勘弁を。

 夜中に目が覚めてしまったのと、新聞休刊日であって、早朝になっても「区切りの活字」がなし。
 ダラダラと今頃『米朝・上岡が語る 昭和上方漫才』(朝日新聞社)を読む。……で朝まで読んでしまった。両氏の記憶力には改めて驚かされる。あわせて、この構成者(戸田学氏)の、米朝師匠の話言葉の「再現力」に感心する。
 睡眠時間が変則的になって、終日ボケーーーーッと過ごすのであった。

11月13日(火)
 朝刊一面にニューヨークで飛行機墜落255人死亡。あわててテレビ。テロではないというが……。
 ついでに昨日、スーパーカミオカンデの光電管11000本の半数以上が破損したという記事、これはテレビ報道なし。被害は数十億円? 浜松ホトニクスの「品質管理」問題か。一個壊れてドミノみたいなものか。しかし「地響きと衝撃音」があったというから不気味だ。また水を抜くことになるのか。
 西宮にいる妹から、カニをあげるから来いという連絡。ダンナが単身赴任中だから、大きなカニをクール宅急便で貰っても困るらしい。ウチの専属料理人に料理させるから、食事をしに持ってこいというが、体調がいまいちという。仕事を放り出してホイホイと駆けつける。わ、山崎蒸留所の「樽出し原酒」という63度のウイスキーもくれた!
 夕方近い時刻、書類が揃ったので公証役場へ。公証人の仕事ぶりを初めて見る。ノンキャリ特有の親切な人が全部対応してくれて、書類を揃えて机の向こうでふんぞり返っている公証人くんのところへサインを貰いに行ってくれる。サインひとつで○万円の、いい仕事であるなあ。
 鍋の予定が、カニの状態を見て、蒸してそのまま甘酢で食べることにする。ビール〜白ワイン。
 兄思いの妹であることよ。

11月14日(水)
 昨日できた謄本を持って某所へ。
 稟議が必要なので、あさってに再度来てくれということになる。
 昼前で、時間が中途半端になってしまった。
 少し寒いが天気がいいので、専属料理人といっしょに「司馬遼太郎記念館」へ行くことにする。
 近鉄小坂から商店街を抜けて徒歩10ほど。細い道だが、案内板が角ごとにあって迷う心配はない。
 写真で見た安藤忠雄設計の展示館よりも、やっぱりまず「書斎」に興味があるなあ。
 L字型の机は特注らしいが、意外に簡素。手塚治虫さんの仕事机がごくありふれたテーブルだったのを思い出す。特別なものは何もないが、体が馴染んでいた雰囲気だ。パソコン・デスクではこの雰囲気は無理である。
 off
 展示室……これは、まあ圧倒されますが。
 賢明なるやつがれは、双眼鏡持参、展示室フロアの椅子に座って、30分ほど大書架の「背表紙ウォッチング」を楽しんだのであった。あちこちにいてはるボランティア的警備の方々、あきれるやら感心するやらの気配。
 館長の上村さんが在館だったので、30ほどご挨拶と雑談。上村さんとは記者時代からのつき合い。記者としては訥弁の雰囲気があった上村さん、開館までの折衝ごとなどたいへんだったらしく、そんな経過など、ものすごく能弁にしゃべってくれる。開館直後の来客「一巡」が終わってからが勝負で、色んな企画はこれからだという。「官」に依存しない記念館だから、息の長い活動が必要なのだろう。……本当の「お宝」といえるのは司馬邸(自宅)の書庫応接廊下階段をびっしりと埋めている4万冊であるから、まだまだ先は長い。
 結局2時間ほどいて、帰りにナンバで遅めの昼飯。
 ウナギ屋でビールを飲み「ひつまむし」(←いつも「暇つぶし」と間違う)で最後はお茶漬け。贅沢な日であるなあ。
 夕食は大根の煮たので粗食である。焼酎は飲んだけどね。

11月15日(木)
 定刻の午前4時起床、寒い。お、おおっ、ルン吉くんが定位置に寝ているではないか。寒くなったなあ。寒さを心配した昨年とまさに同じ状況。年々歳々ルン相似たり年々歳々靴同じからず、黄色い騎兵隊みたいな長靴に変わっている。
 off
 午前7時、やっと起きあがった。
 がんばるんだよ。……明日はわが身だものなあ。
 午前7時から午後7時まで、うどんを食べた昼の15分間を除いて、ひたすら書類作りに没頭したのであった。
 寒がりだから、路上で寝たくはないものなあ……。


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