HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』196

●マッドサイエンティスト日記(2001年4月後半)


主な事件
 ・ルン吉くんの運命(16日)
 ・滝川雅弘カルテットを聴く(17日)
 ・ニューオリンズ・ラスカルズを聴く(21日)
 ・ネスパ特別宴席(25日)

2001年

4月16日(月)
 午後「尊いお方ご懐妊の可能性」のニュースが流れる。へえ。水面下で「賭け」が流行りそうだ。
 夜、集合住宅の理事会。またも2年間、理事をやらねばならぬ。昨年で終わったところなのだが、「輪番制」という制度を導入した張本人だからいたしかたなし。自分の決めた制度が自分に回ってくるパターンは、人口抑制の「間引き」に関して、星さんのショートショートにあったような気がする。
 で、理事会終了後の雑談で、前の路上のルン吉くんが話題になる。
 理事のひとりの談話。
 『……あの人は、2年前に、背広でボストンバッグを下げた姿で天六付近でデビューしたのよ。仕事に行く途中で時々見かけたもの。スーツのまま寝ていて、だんだんすり切れていく過程に、人間がどんな風に変わっていくのか気になって。それが去年の秋からピンクの防寒服に衣替えしたのよ。この冬は前の路上に寝ていたけど、こないだはエスト1の横で寝ていたわよ……』
 ふーん。佐川ミツオの「背広姿の渡り鳥」を思い出す。もとはサラリーマンだったのか? 明日はわが身である。

4月17日(火)
 夕方、上六へ。近鉄のハイハイタウンの「やぐら」で串カツ。1年半ぶりか。
 20時過ぎに谷九の「SUB」へ。毎月の第3火曜に滝川雅弘カルテットのライブがあるとわかったのである。経営者の西やん、なぜもっと宣伝しないんだよ。滝川さんの定期ライブがあるのなら、もっと早くから聴きにきたのに。
 20:30開演で、1ステージ目、わしを入れて客4人! 演奏者と同数である。
 しかもすぐ後ろにいたカップルがよくしゃべる。演奏中もぺらぺらぺらぺらしゃべるしゃべるしゃべるしゃべる。8割くらいしゃべりっぱなし。ふつう女がおしゃべりな場合、漫才でも男がたしなめるものだが、このカップル、両方揃ってしゃべるものだから堪らない。……何か差し入れ持参だから滝川ファンではあるのだろう。が、差し入れして聴かないのはファンといえるのかしらん?…などと、なまじ面識ができてしまうと悪口が書きにくいから、今のうちに書いておく。
 演奏は最高。1ステージ、リクエスト中心にするということで「Now the Time」をお願いした。モダンジャズの店だし、妥協なしのモダン・クラを聴けるの全国でも数少ない場所ではないか。
 ジャズクラ・ファンの皆さん、第三火曜の夜は谷町九丁目、地下鉄6番出口にある「SUB」へ!
 ピアノの八木隆幸さんがホームページを開設したという。さっそくリンクを張らせていただくことにした。
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 滝川雅弘カルテット   ピアノの八木隆幸さんと店を手伝っているボーカルのHyunさん
 滝川雅弘さんはやはり東の谷口英治と並ぶモダン・クラの両雄だと再認識する。応援ページを作ろうかしらん。
 23時まで。終演後、上町筋まで歩いて「サイカ」でラーメンを食べたが、これはひどいものであった。

4月18日(水)
 早朝から東奔西走。あまりアタマは使わず。

4月19日(木)
 専属料理人が不在であると食生活が不規則になりかねない。が、ボンクラ息子その2は意外にマメで、本日、手分けして煮魚、ヤッコ、高野豆腐、トマトサラダというメニュー。食器の片づけを全部やってくれる。意外にこういうことは好きなのであろうか。新車に乗った巨根みたいな「男中」にならねばいいが、とこれは余計な心配か。

4月20日(金)
 ボンクラ息子その2といっしょに食品スーパーへ買い物に行く。ふたりですき焼きを作る。
 テレビで小林旭が歌っている。
 結構な夜である。

4月21日(土)
 バスで野田阪神の電器量販店へ。仕事場のFAX、送信状態がおかしかったのが、受信も不調になり、買い換えである。子機もついた感熱型、マイラインの登録をするとさらに千円値引きという。消費税込みで18,000円弱で購入。子機をパソコン横に置く。……もっともこの番号は限られた人間しか知らないから、めったに話すことはない。
 夕方からボンクラ息子その2と野菜を刻んだりして、本日は鉄板焼きである。どうも肉系が多くなるなあ。
 21時過ぎ、久しぶりにサントリー5へ。ニューオリンズ・ラスカルズを聴きに行く。給料日前で空いていると予想したが、いっぱい。そうか、高齢者が多くて、給与生活者が少数なのだな。
 カウンターにひとつ空いていた席が、なんと前にも会った内田美紗さんの隣りである。……この方、年齢不詳であるが、なんと「南里文雄の追っかけ歴がある」という。ほんまかいな! 南里文雄は、ぼくは亡くなられる2年ほど前に聴いたことがある。70年代のはじめである。
 最終23時まで。トントン・森朋子さんが珍しく「In the garden」を歌った。
 off off
           クラの河合良一さんと内田さん。
 小雨のなか、帰宅23:30。

4月22日(日)
 自民党の総裁選、予備選挙で小泉圧勝、朝刊一面は「小泉で決定」の様相である。積極的支持はしたくもないが、これで民主党の目論見がつぶれるのは面白い……。
 天気がいいので掃除洗濯。専属料理人から電話があり、夕方帰宅するから、夕食の準備は不要という。
 夕食のメニュー、すべて静岡駅にある生鮮食品売場で買ってきた食材らしく、鰺のひらき、黒はんぺん、わさび漬け、しらすおろしなど、小鉢いっぱい並べて晩酌。毎日こうだとこりゃ泣けてくる。家計も破綻でなお泣ける。

4月23日(月)
 専属料理人、久しぶりに帰宅してメールをチェックしようとしたら、画面真っ黒という。メビウスの液晶画面、確かに点灯しない。サービスセンターを問い合わす。まだ3月もたっとらんのに、面倒なことである。わしのデスクトップよの高機能のノートパソコンである。夕方近く、メビウスを持って恵美須町のメビウス・サポートラボへ届ける。やはりバックライトの基板不調らしい。
 帰路、堺筋本町で降りて、「うまいもんや・回」で会社関係のある種のセレモニー。
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 和風食材を使った洋風創作料理の店でワインがぶ飲み、21時頃まで。
 個人的には極めて珍しい宴会である。

4月24日(火)
 先日からの書斎整理が遅々として進まず。いかんなあ。積み上げた書類の分類を考えるだけで作業がストップする。
 どんな分類をしても5%は「その他」である。……とは故・倉田正也氏の名言である。
 わしゃどうも、この5%をさらに分けようとしているのではないか。
 気分転換に21時頃にサントリー5へ。月末火曜でサウスサイド・ジャズバンドの出演日。2ステージ。本日、やっぱりロートルの酔客多し。いいことなのだが、我がもの顔で振る舞う(大声でリクエストを連呼するとか、フラフラ演奏者の近くまで歩いていくとか)約2名が目立って、気分はいまひとつである。

4月25日(水)
 昼間、やたらセカセカウロウロ動くこと多し。
 なぜか……は、まあ、そのうち連載開始巨編『人魚の溺死』にご期待ください、としかいえんなあ。
 夕方、専属料理人と梅田へ。某タクマ特別顧問の若村氏と、近大講師の長谷川容子さんの4人。わしがまあちょっと特別な日でもあったので、一席設けてもらった感じ。西梅田の「ネスパ」で名物のコロペットでワイン、あとライブを聴きたいところだが、あまりいいのがないのと明日が早いので、ネスパ向かい側のジャズを流しているバーで水割り。
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 長谷川さんは国際経営論が専門というが、いかなる学問分野なりや。ユニクロの「成功」で生産の中国移転がブームみたいだけど、中国に向かって先頭を走るやつがいちばん危ない。「回れ右」した時には最後尾になるからである。わしゃ中国には30年間に2度煮え湯を飲まされているから断言するが、また2、3年後に状況が一転するぞ。教訓を生かせない経営者がアホで、何度繰り返しても懲りないんだよね。……中国の商法に関してずばりと批判したのは、15年ほど前、当時朝日の上海駐在員だった伴野朗氏だけだったと思う。メーカーや商社関係の実務者はよくぞ書いてくれたと快哉を叫んだものだった。本質は今も変わっているとは思えない。……といったことに関して若き女性学者の意見を訊いてみたかったが、学問と実務は違うかなあ。
 歩いて帰宅。帰宅後、冬物スーツとセーターの整理、クリーニング用の仕訳などをやらされて、23時就眠。

4月26日(木)
 定刻4時起床、原稿を書く。たいしたものだ。9時前から本町界隈ウロウロ。慌ただしい日だ。
 1時間ほどで雑件片づけて、播州龍野の豪華別荘へ。夕方までタイムマシンの組立。
 実家の庭に色々な花が咲いている。花鳥風月とんと興味が沸かないが、母の要請で1枚。白牡丹らしい。
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 実家泊。
小泉内閣の組閣ニュース、田中マキ子の外相、なんとかいう森派長老79歳の財務相では先が思いやられる。(先といってもほんの数ヶ月先だけど)
 夜は少し寒く21時に就眠。

4月27日(金)
 定刻4時起床、朝6時過ぎからタイムマシンの組立。
 夕方まで熱中するが、停止用目覚まし時計の取り付けブラケットの方向がまたも間違っていることが判明。いやになって帰阪。

4月28日(土)
 恵比須町往復、メビウスの修理品の受け取り。
 野尻抱介『ふわふわの泉』(ファミ通文庫)を読む。傑作である。ちょっと焦るなあ。
 「小松左京マガジン」第2巻を読む。瀬名秀明氏の発言に感嘆することしきり。
 20時過ぎ、仕事部屋へ移動中に、おや珍しくこんな時間にルン吉が歩道定位置に座っている。もう5月というのに例のピンクの防寒服のままである。寒がりのわしがトレーナー一枚というのに、2月の深夜を過ごした同じスタイルのままである。防寒服もすり切れるまで着るのだろうか。これから異臭が立ちはじめるぞ。……明日はわが身である。

4月29日(日)
 本屋、CD店などを回ろうかと自転車で梅田に向かいかけたところで雨になる。
 引き返して、自宅で昼食時にビール。夕方までごろ寝雑読。いかんなあ。

4月30日(月)
 大型連休2日目らしいが、何の実感もないなあ。
 天気予報では雨だったが、曇り空。昼、自転車で阪神デパートへ。開催中の松井守男画伯の個展を見る。昨日なら来場されていたのだった。コルシカ定住以来、波のイメージが多く、青が増えた印象も。珍しい水彩画のスケッチなどもあり、ワインのラベルに使われているものある。パンフレットのみ購入。
 明日また「別荘」へ行かねばならぬが、電車が混みそうで気が重い。


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