『マッドサイエンティストの手帳』747

●マッドサイエンティスト日記(2021年1月後半)


主な事件
 ・創サポオンライン(16日)
 ・創サポオンライン特別編(23日)


1月16日(土) 創作サポートセンター
 天候不安定。曇天、昼前には雨。午後は晴れ間が増えてきた。
 天気はどうでもよろしい。終日穴蔵にて過ごす。
 コタツで資料を読む。
 夜、創作サポートセンターの講義。
 本日は初めてオンライン開催。
 昨年からオンライン参加が増えたが、本日は講師もオンライン。
 穴蔵でパソコンに向かって話す。
 zoomで、顔が映る人もいれば、チャットで文字返信の人もいる。ひとりは病気でベッドからなので音声のみ、これはこれで面白い。
 作品3篇。
・拾われた猫がたどり着いたのは、気性の激しいおばはんが飼い犬と暮らすマンション。上階に住むのは女房に愛想尽かしされた元棟梁。2匹と高齢男女のややこしそうな生活が始まる……おれがコメントする作品ではない気もするが、じつに面白い展開である。
・テレビコメンテーターのところに社会学者と女性電子工学者が奇妙な針金状デバイスを持って現れる。これが真コロナ禍で必須のある製品に使用されることになるのだが、裏には国際的な謀略が……アイデア賞ものである。
・孤独な少年にある日とつぜん背中のランドセルが語りかける。よく考えられたショートショートの秀作。
 全体の顔が見えないので「会場」からの自由な意見が聞けないのがまどろこしいが、まあまあスムースに進行した気もする。
 これからはこの方式が主流になるのか。
 ただ、新アイデアが出ると、もっと突っ込んだ議論がしたいなあ。

1月17日(日) 穴蔵
 定刻午前4時に目覚める。
 5時46分……関西の各テレビ局は神戸から大震災の追悼中継。
 この時間、黙祷しようかと思うが、次の瞬間にも激震が襲ってきそうで、怖くて目は瞑れない。
 本棚が両側から崩れてきた程度でこれだから、阪神間にいた人は、今もこんなものではないはず。
 6時のニュースになってほっとする。
 あとは穴蔵にてボケーーーッと過ごす。
 午後、さすがに運動不足なので、お上のいいつけを破って、人のいない道を30分ほど散歩。
 うろうろしてみるものだ。
 貨物線地下化工事、豊崎第6架道橋の西側まで掘削工事が進んできたが、なにやら「遺構」を掘り当てた模様である。
  *
 このあたりは線路が地下に潜り込む入口で、U字擁壁が作られる予定の場所。
 これは何だったのか。水路の跡にしては作りが大げさだし。
 撤去には相当手間がかかりそうな。
 当分楽しめそうである。

1月18日(月) 某院/穴蔵
 朝、天六方面へ歩く。
 昨秋入院していた某院の整形外科へ。3ヶ月目の健診である。
 不思議なもので、3ヶ月が目途といわれていたが、この数日、少し違和感は残るものの、急速に楽になってきた……ような気がする。
 ただし、最近、別の場所が少し痛み出した。こちらは「年相応のもの」で、精密に調べるなら、再度レントゲン撮影の上で……と、かなり時間がかかりそうなので、次回にする。
 運動不足はいかんらしい。最近は「コロナロコモ」をよく耳にするし。お上に従順すぎると体調を悪化させる。お代官様よりは医師を信じる方が賢明であろう。
 エレベーターを乗り間違えて、病院の半地下のホールに出てしまった。
  *
 こんな場所があるとは。今時、ライブやるのに最適の環境ではないか。ややこしいとすぐ入院できる。
 昼前に歩いて帰館。久しぶりに6,000歩を超えた。
 午後は穴蔵にこもる。
 夜のニュースで黙食という言葉を知る。
 福岡のカレー店が「黙食にご協力ください」のPOPを貼り出したという。
 これは今年の流行語大賞の有力候補になるのではないか。
 政治家も「黙食」なら会食はやらんだろうし。

1月19日(火) 穴蔵
 朝5時、室温15℃、外は5℃。
 昼になってもそう変わらないような。
 外出自粛でわからんけど、たぶん寒い日なのであろう。
 終日穴蔵。
 このところフィッシング・メールが多い。特にamazonに集中しているような。
 ほとんどは読まずに削除するが……本日、たまたま読んでみたら、もっともらしい文面の最後が、
 「ご清聴ありがとうございました。」
 となっていた。

1月20日(水) 穴蔵
 朝5時、室温15℃、外は5℃。昼間、外は8℃くらい。
 外出自粛でわからんけど、たぶん昨日と似たようなもの。
 終日穴蔵。少しは生産的なこともするのであった。
 たちまち夕刻。
 夜は粗食で一杯。
 トランプ退場まであと数時間。まだ何かやりそうで気がかりだが、早寝するのである。

1月21日(木) 穴蔵
 定刻午前4時に目覚め、午前2時(現地20日正午)、やっとトランプ退場を確認する。
 正確には、新大統領の就任を確認する、か。
 トランプ・ファミリーの運命やいかに。お楽しみはこれからだ。
 晴れて暖かそうな日である。外出しないから、わからんけど。
 午前中は一応マジメに机に向かう。
 午後はBSで映画2本を続けて見る。
 ともに60年ぶりに見る作品である。
『勝手にしやがれ』
 これは高1の時に姫路の新星劇場(小溝筋にあった2本立50円の洋画館)で見たが、期待外れであった。フランスのギャング映画と思って入ったのだが、チンピラの不良映画で、トイレで財布奪う場面が面白い程度。シーツがモコモコする場面も、何年か経ってベッドシーンだと理解したくらいである。大藪春彦が「まるでおれが描く世界だ」などと書いていて、何を見当違いなと思ったほど。今回見ると、なるほど斬新な映像だったんだなとアタマで理解できるが、これはその後、本(たとえば堀潤之教授の訳書『ゴダール・映画・歴史』など)で読んで理解したからだろう。大学時代に見るべきであった。
『ギターを持った渡り鳥』
 こちらは中3の時に龍野の銀映3本立50円で見た。渡り鳥シリーズの第1作。アキラは函館に歩いてくる。馬に乗るのは『赤い夕陽の渡り鳥』あたりから。身分も神戸の元刑事。最後は函館港までタクシーで来て連絡船で去る。墓参りに佐渡へ行くというから(佐渡ロケは『渡り鳥いつまた帰る』)続きも企画されていたわけだ。宍戸錠は頬に傷のあるヤクザで、まだ笑いの要素はない(凄みでは『街が眠る時』の殺し屋の方がよかった)。まだ無国籍映画にはなっておらず、その辺が逆に物足りない感じだ。
 それにしても本日の2本立て、よく計算された組み合わせだなあ。

1月22日(金) 穴蔵
 朝だ。雨はまだ降ってない……と思ってたら浅田飴になった。
 終日穴蔵。
 殊勝にお上への忠誠を誓っての外出自粛である。
 筋肉の衰えはひどいもの。立ち上がるのも面倒である。
 夜「ごはんよ」と声がかかると、よれよれ状態でコタツから這い出て、廊下を匍匐前進、やっと食卓に着く。
  *
 山かけ、オムレツ、フライドポテトなど並べてもらってビール、安ワイン少しばかり。うまっ。
 早寝するのである。
 明日はお上に少し反逆するつもり。もう少し生きたいからなあ。

1月23日(土) 創サポ講座・特別編
 朝だ。雨が降っている。雨読。穴蔵にて眉村作品を再読する。
 夕方に近い午後、創作サポートセンターの事務局が入っている谷町筋の某ビルへ。
 ここの会議室で創サポ講座の特別編をオンライン開催する。
 関西在住のSF作家に創作法を聞くシリーズ、5年前の上田早夕里さんから昨年末の田中啓文さんまで続けてきたが、本日は最終回・特別編である。
 このシリーズを始めた時から、最終回は眉村さんと決めていて、眉村さんからも了承をいただいていた。残念ながら間にあわず、本日は特別ゲストとして、村上知子さんに来ていただいた。
  *
 全員オンラインでも可能なのだが、他に不要不急ではない重要打ち合わせ事項もあり、一度は顔合わせしておく必要もあって、ゲストの他に「門下生の筆頭格」ともいうべき数氏にも参加してもらい、会議室からの中継方式で行った。
 創作法を聞くというより、村上知子さんから見た眉村さんの意外な側面など、興味深い話が多い。
 特に病床での『その果てを知らず』執筆のエピソード。
 持参いただいた「メモボード」は、初めて見るものだ。
 
 厚手の用紙(下敷きにもなる)数枚に細かいメモがびっしり書かれている。
 一枚にはR,C,S,D…などの記号(それぞれRealとかDreamなどの意味がある)と番号がつけられていて、それらは完成稿では消されたとか。
 どう見てもこれはプロット用紙であり、「門下生」諸氏もまったく知らなかったもの。
 これを見るだけでも、集まった値打ちがあった。
 終了後……一杯やりたい気分になるが、ここはストイックに解散。
 早く新コロナが収束してほしいものである。

1月24日(日) 穴蔵
 雨が降りつづく。
 終日穴蔵。
 あまり生産的なことはできず。

1月25日(月) 穴蔵
 快晴で暖。
 外出日和だが自粛。
 終日穴蔵にあり。
 たいした仕事はできず。
 休肝日につき、粗食。
 早寝するのである。

1月26日(火) 穴蔵
 晴れて暖。終日穴蔵。昨日と同じである。
 机に向かって左を見ると、野々村竜太郎の生家(のある市営住宅)と駐車場が見える。
 その駐車場に先日から赤いシートが張られ、今日はクレーン車がきた。
  *
 いまさら駐車場の建て直しとは思えず。
 3年後には竜太郎の生家は取り壊しだし、これから4,5年「明窓浄机」からの眺めは激変しそうである。
 見届けるまで何とか生きることにするか。
 お楽しみはこんなことしかない。嗚呼。

1月27日(水) 穴蔵
 夜中に雨が降ったようだが、曇天、だんだん晴れ間も出てくる。
 終日穴蔵。不調……絶不調である。机に向かっているものの、アタマ働かず、時間だけが過ぎる。
 理由もはっきりしている。運動不足である。筋肉の衰えが頭脳の衰えに直結しているとしか思えない。
 たいしたことできぬまま、たちまち夕刻。
 専属料理人が「絵にかいたようなご馳走」を並べた。
  *
 湯豆腐、トンカツ、刺身。
 おれの場合、トンカツを串カツに変えれば、いちばん好みの居酒屋メニューである。
 これでビール、熱燗。あと、明太子か塩辛があればいくらでも飲めるのだが、1時間でストップとなった。
 早寝するのである。
 明日は買い物の分担など理由をつけて、少しは歩くつもり。

1月28日(木) 穴蔵
 晴れて、外は暖かそうである。
 ビールを買ってこようかと申し出たら、「今日は休肝日ですから、明日でいいでしょ」。
 散歩してもビールなしとなると、出歩く気がしなくなった。
 終日穴蔵。気合入らず。たちまち夕刻。粗食。早寝。

1月29日(金) 穴蔵
 晴れて北風強く寒し。
 久しぶりに外出……といっても近所の公園を横切って酒屋へ買い物に行くだけだけど。
 数百歩だが、疲れるなあ。毎日歩かなければ。
 自分の筋肉維持のための散歩が「お代官様のご指示」に反するのかどうか……悩むところだ。
 15分ほどの外出以外、終日穴蔵。
 午後BSで『昼下がりの決斗』を見る。
 ランドルフ・スコットとジョエル・マクリーが共演。ともに子供の時に夢中になった(龍野の平和館で観た)西部劇のスターだ(ペキンパーもそうだったのだろう)。
 老ガンマンの描き方はいいのだが、話は女がからむと面白くなくなる。金塊争奪戦に徹してほしかったなあ。
 ……まあ、活劇としては『ワイルドバンチ』、西部劇への挽歌としては『砂漠の流れ者』という、西部劇の大傑作につながる貴重な作品だけど。
 たちまち夕刻。
 専属料理人が手羽焼き、明太パスタ、サラダなど並べた。
  *
 ビール、格安ワインを盛大にいただく。
 早寝。

1月30日(土) 穴蔵/シンギュラリティサロン
 晴れて寒そうな日である。外出自粛なのでよくわからん。
 終日穴蔵。
 午後シンギュラリティサロン、本日はyoutubeで開催。
「知能爆発はいつどのように起きるのか」
 講師は高橋恒一先生(理化学研究所生命機能科学研究センターチームリーダー/慶大特任教授/他)
 松田卓也先生の紹介では、自然科学発展の5段階の5段目「AI駆動科学」を実践している気鋭で、iPS細胞の「完全自律継代培養技術」などを行われている。
  講義はとても要約できない。youtubeで見られるのでご確認を。
 松田先生の(妄想に近いという)「半知半能の神」に至る過程には、上限シナリオ・生態系シナリオ・多極シナリオなどの分岐点があり、最終的なシングルトンシナリオに近づけるのは「世界の覇権を握った者」だけ……わが理解では「半知半能の神(←超知能)」を作ったものが世界の覇者になるのではないらしい。
 シンギュラリテイは遠いのである。
 しかも光速の壁が待ち受けており、いちばんの分岐点は「熱力学的限界」……と、機械工学科出身のわしには、これは実感できる。
 刺激的な仮説が多くて、痴呆寸前のわがドタマでは整理しきれず。
 わしゃ「自然科学発展の5段階」の3段階目「シミュレーション科学」にとどまっておるのだなあ。嗚呼。

1月31日(日) 穴蔵/ウロウロ
 晴れて寒そうな日である。
 外出自粛……のつもりでいたが、必要(不要不急でない用事)が生じて、午後、駅前第1ビルの中央郵便局まで行くことにする。
 グラフロから大阪駅にかけては人出が多い。
 人通りの少ない西側の道を抜けて第1ビルへ。
 郵便局の用事は3分で片づく。
 大阪駅を通らず帰館するため、進路を東へ。
 駅前ビルの第1→2→3のB1階通路(日曜だとほとんど人通りのない通路)を歩くが、安居酒屋が増えたのに驚く。
 第1から第2にかけては「生中190円」の店が軒を連ね、午後3時頃だが、どことも盛大に飲っとる。
 コロナさえなければ寄っていきたい雰囲気だが、さすがになあ……飛沫が通路まで飛んできそうで、急いで通り過ぎる。
 駅前ビルB1フロア、しばらく来ないうちに、場末感が漂う、いい地下街になった……とは思うけどね。
 梅新から新御堂まで歩き、APAホテルの工事現場を見学(くどいようだけど、大丈夫かねえ)して、新御堂高架下を北上、ジュンクドーを覗いて帰館。
 久しぶりに8千歩を超えた。
 膝もまずまず。
 やはり歩かねばいかんなあ。
 夜。
 BSで『パーカー』を見る。
 ジェイソン・ステイサムがパーカーをやる2013年作品。テンポよく、まあまあ面白いが、あまりにも「不死身」過ぎる。
 やはりパーカーものは最初の『ポイントプランク』に尽きる。数々の見せ場(特に狙撃シーン)がよく、何よりリー・マービンが凄かった。ボンドがショーン・コネリーに限るように、パーカーはマービンでなければならぬ。


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