『マッドサイエンティストの手帳』727

●マッドサイエンティスト日記(2020年4月前半)


主な事件
 ・(新型コロナ禍により)穴蔵の日々
 ・緊急事態宣言発出(6日)


4月1日(水) 穴蔵でお仕事させて頂きます
 定刻午前4時に起床。4月になっていた。
 新年度のスタートである。今期はまじめに仕事することにしよう。
 宮藤官九郎が新コロナに感染のニュース。
 そういえば週刊文春のコラム「いまなんてった?」に、公演中止かもしれないが、週6ペースで芝居の稽古中と書いている。稽古も濃厚接触なんだろうな。中止やむなし。劇団員はどうなるのやら。
 クドカン、そのコラムの中で「させて頂きます」について書いてはる。
 役者やタレントが「出る」といえば済むところを「出させて頂きます」とやる。この過剰なへりくだりは「私見ですが、東日本大震災直後の自粛ムードが関係している」という。
 いや、もっと古いよ。おれの記憶では、このフレーズを最初に発したのは松坂大輔で、結婚発表のときに「結婚させて頂くことになりました」とやった。こちらに書いているとおり。2004年、新潟県中越地震の直後である(地震は関係ないと思うけど)。
 おれはテレビに出てくる連中がすべて自分の仕事を「お仕事」という方が気になるけどね。
 10時頃から雨になり、だんだん雨脚が強くなる。
 落ち着いてよろしい。
 終日穴蔵にこもって仕事。
 夕刻、ニュースを見る。
 大阪でも北新地で新コロナのクラスター発生? ショーパブとクラブらしいが、店名は明かされない。
 テレビに出てきた「北新地社交料飲協会」の理事長は、なんと東司丘さんではないか。
 ムルソーには10年前に初めて行った。
 以後、本当に時たま寄る程度だが、ムルソーはジャズバーで、女っ気ゼロ、「接待」とも無縁の店である。
 しんどい役職を引き受けられてるんだなあ。

4月2日(木) 穴蔵
 曇、午後は晴れてくる。
 移り変わる空を眺めつつ、終日穴蔵でボケーーーーッと過ごす。
 北新地のクラブ(クラスター)が店名非公開を貫き、まあ北新地は行かないからいいけど、大阪の新コロナ感染者が梅田で「会食」していたとの報道が相次ぐから、恐ろしくて出歩けない。
 おれ自身はコロッと逝ければいいのだが、新コロナだと周囲に迷惑かけるから、それが恐ろしいのである。
 一応机に向かうが、集合住宅関係のつまらん連絡(ベランダからハトにエサ投げてるのがいる、とか、郵便配達の投函状態がどうたらとか)があって、その度に中断、現場を見に行ったり。
 あほらしくなり、午後はテレビで笑福亭たま師匠を見る。今や巨匠であるなあ。

4月3日(金) 穴蔵
 晴。外は花見日和のようである。
 おれは「お上」には逆らわないから「不要不急の外出自粛要請」を遵守して、終日穴蔵。
 たいして仕事は進まず。
 集合住宅の委員会や総会をどう進めるか(狭い集会室に密集して長々と議論はしたくない)、理事長として案を練らねばならぬ。
 任期の最後に、ややこしいことがあるものよ。
 夕刻、エリス・マルサリスの訃報。
 新型コロナウイルスの合併症で。85歳。……1989年にスナッグハーバーで聴いてから31年か。
 まだ現役だったとすると、ニューオリンズ全域が危ないことになるなあ。
 たちまち夕刻。
 専属料理人の並べた標準的メニューでビール。
  *
 あと、HATSUTATSUのパンでワインを少し飲みつつ「エリス・マルサリス・トリオ」を聴く。
 これは新地のムルソーで聴いて、いいなと思って入手したもの。
 東司丘さんはエリスを楽しむ気分ではないだろうな。
 おや、かんべさんのページによれば、3月末で宝塚ホテルが閉館したらしい。
 ここで手塚治虫氏が結婚式をあげられたと書いてはるが、筒井康隆氏もここ。じつはおれも結婚するならここでと憧れていたが……事情があって叶わなかった。SF関係と会社関係と学校関係と親戚が同席となるとややこし過ぎて……他にも事情はあるけど、幻のホテルになったなあ。

4月4日(土) 穴蔵
 快晴で暖。たぶん本日が花見には最高の日であろう。
 出歩くこともなく、穴蔵にて過ごす。
 おれは「お上(←ともかく偉い方々)」のいいつけを忠実に守って、外出自粛に徹するのである。
 お名前を挙げるまでもないが、あんな立派な方々のいいつけには絶対に背いてはならない。
 忠犬となって終日「おあずけ」状態で過ごす。
 あ、「よし」という声がかからないから、机に飛びついて原稿を書く動作もできない。嗚呼。
 お上、なんとかしてくれよ。
 集合住宅の2階屋上の桜(樹齢42年)が満開。
  *
 これを眺めて本年の花見とする。
 神戸新聞文化センターから電話あり、4〜5月の講座は休講となる。こちらから申し出ようとしていたところ。
 大阪JAZZの例会、島之内教会のコンサートも中止。ビッグリバーは延期。さらに、なんと秋の神戸ジャズストリートも中止(こちらは「諸般の事情により」でコロナかどうかは不明だが)。
 SFでは、日本SF大賞贈賞式が中止。4月に上京の予定が1件あったが、これもどうやらテレワーク? 筒井伸輔さんの個展に行くのは難しくなつた。
 落語関係もほぼ全滅。
 5月末頃まで穴蔵生活になりそうだ。

4月5日(日) 穴蔵/お代官様
 晴。3月中旬の気温というが、室内におれば、特に変化なし。
 本日も「お上」に逆らわず、終日穴蔵にて自粛。
 不要不急の外出はするなということで、考えてみると、おれ自身、社会的には「不要」な存在だし、生き急いでいる訳でもなく、外出する理由は見当たらない。
 お上のいいつけには忠実に服従するが、「いちばん上のお方」のおっしゃることは、マスク2枚を下さることと、観光旅行の割引クーポン券?
 マスクは外出しないから「不要」だし(布製なら専属料理人が作った、もっといいのがある)、観光旅行は「不急」だし、この国でいちばん偉い方のおっしゃることは、「不要不急」としか思えない。
 おれは自粛しているのだから、自粛を続けたらどうなるのをご教示くださりませ、お代官様。奥様が花見ではしゃいではるのは、まことに結構なことでございます。お上にはそれくらいの余裕がなければ。しかし、下々へのご教示は、できますれば理解可能な日本語で、何卒。
 お上のいいつけを守って、集合住宅の理事長として、理事会と通常集会を文書回覧方式で行うことにする。5月末まで、密閉空間での集会はもってのほかである。
 回覧文書案をあれこれ試作してたら、たちまち夕刻になってしまった。
 生産的なことは何もできず。嗚呼。

4月6日(月) 穴蔵
 晴。3月中旬の……以下昨日と同じ。穴蔵で自粛生活。
 調べたいことあり、しかし市立図書館は今週から再開予定が、またも5月6日まで臨時休館延長となった。
 ネットで予約して借り出しは可能らしいが……検索すると「館内閲覧用」である。嗚呼。
 5月の連休明けまで、これを理由に寝て過ごすか。
 集合住宅関係のこと色々。
 苦手な折衝もやって、なんとか5月に、密閉空間で密集の集会なしで、理事長のお役御免の目処がたった。
 ともかく、あとひと月である。

4月7日(火) 穴蔵/緊急事態宣言
 晴。終日穴蔵にあり。
 夕食時、テレビ全局が「緊急事態宣言」の会見中継。
 さっぱり聞き取れない。
 要点は後刻ネットで見よう。だいたいはわかってることだが。
 CDでパキート師匠、ドン・バイロン師匠を聴きつつビール、ワイン。
 お、今夜はスーパームーンである。写真撮ろうとしたが、酔っぱらってうまくいかない。嗚呼。
 早寝するのである。

4月8日(水) 穴蔵
 昨日「緊急事態宣言」が「発出」された。ややこしい役人言葉だなあ。原稿書いた官僚は、デンデンくんが出発と読み間違わないかヒヤヒヤしてたのではないか。
 兵庫県も対象区域に指定された。これで当分実家へは行けない。「納税」があるのだが、これは不要不急だから構わんか。
 ただ、兵庫県、感染者ゼロの鳥取県との県境付近の状態が気になる。具体的には浜坂・諸寄(中学時代の夏に臨海学校で行った)あたりだが。浜坂高校は5月6日まで休業らしい。迷惑なことだろうな。
 大阪府のお上は「ともかく家にいてください」を連呼。
 従順なおれは、いいつけを守って終日穴蔵にこもる。
 本日は天六のガス爆発から50年である。
 先代・桂歌之助さんを思い出す。
 歌やんは天六交差点にあった市民会館の落語会に前座(兼お茶子)で出演、これが噺家デビューのはずであった。
 ところがガス爆発で会館で吹っ飛び、デビューはパー。
 奇しくも同じ頃、おれはデビュー作「イカルスの翼」が雑誌に載った。
 後日、へんなことでデビューがずれたなあと語り合ったものだが、歌やんの起こした大惨事はこんなもので済まなかったなあ。
 夜は歌やんを偲びつつ献杯。
 ベランダからスーパームーンを眺める。
  *
 やっぱりうまく撮れない。こんなものか。

4月9日(木) 穴蔵
 晴。終日穴蔵にあり。
 これといったことはできず。
 午後、某所から連絡あり、必要あってスマホでZOOMを試してみる。なかなか便利な。
 ますます出歩くことはなくなりそうな。

4月10日(金) 穴蔵
 晴。終日穴蔵にあり。
 これといったことはできず。
 妙なニュース。
 マスクだけの全裸男が出現。
 今岡清ではないか。
 身長約170センチのやせ形、黒色の長髪というからな。
 ただ、鹿児島の事件だから、ちがうかもしれない。

4月11日(土) 穴蔵
 晴。午後はだんだん雲が増えてくる。
 終日穴蔵にあり。仕事らしきことは皆目できまへん。
 午後、お上のいいつけを破って、ちょっと外出。
 重い荷物を運ぶ必要あり(ビールだけどね)、買い物の手伝い。4月になって初めての外出である。
 豊崎西公園の周辺だけ、500歩ほどだけど。
 桜はほとんど散り、花水木が咲きかけている。
  *
 10日ほどのうちに、季節は変るのである。
 中本酒店に寄り、あと公園東の翁豆腐に寄り、寄せ豆腐を求める。
 翁豆腐は北新地その他への配達激減でたいへんらしい。
 店主はハチの常連。ハチもしばらく休店で寂しいなといったら、福盛進也さんが帰国中と教えてくれた。EUは日本どころではないらしい(【Syncopation Project】という企画がスタート、楽しみなことである)。
 豆腐もジャズもたいへんである。4月は翁豆腐で一杯飲みつつCDでJAZZを聴くことにしよう。

4月12日(日) 穴蔵
 曇天。9時頃から雨になり、終日降りつづく。
 寒い日である。ベランダの気温は、7時11℃、12時10℃、20時10℃。
 エアコン稼働、穴蔵にてボケーーーーーッと過ごす。
 こんな日がつづくのであろう。

4月13日(月) 穴蔵
 未明だ(3:30AM)。雨が降っている。浅田飴までは待てず。
 ゴミ出しなど下男仕事を片づけ、しばらく机に向かうが、アタマ働かず。
 終日穴蔵にあり。
 生産的なことはさっぱり。嗚呼。
 必要あって、午後20分間ほど食材の買い物に出る。
 桜はほぼ散ったが(今年は全体に長生きだったようだが)、公園にしぶといのが1本。
  *
 小雨の中で、新緑との対比がちょっといい。
 ということで、夜は(事情あって)穴蔵で独酌。
 翁豆腐の湯豆腐、串カツ、キャベツのザク切りでビール、湯割り。
 早寝するのである。

4月14日(火) 穴蔵
 快晴。初夏を思わせる日射しである。
 終日穴蔵にあり。
 外出は、午後20分ほど、買い物の当番で近所の食品スーパー往復のみ。
 翁豆腐の西側にえげつないクルマが駐車している。
 東京のナンバーだが、大阪へコロナ疎開ではあるまい。
  *
 ハンドルがどうなってるのか、よくわからん。

4月15日(水) 穴蔵
 晴。朝肌寒く昼は初夏のごとく夕は肌寒し。
 終日穴蔵だから、外の気温はよくわからん。
 相棒の某くんが本日は播州龍野行きである。クルマで行き、タイムマシン格納庫で孤独な作業だから、コロナの心配はなし。
 わが実家の方もチェックして、連絡をもらう。
 雑件ゾロゾロ。
 先週ご近所で、長年懇意の方が亡くなられているが、このご時世、家族葬であったらしい。
 税金関係、これは「不急」だけど、計算だけはしておく。
 その他あれこれ。「テレワーク」で処理するが、限界があるなあ。
 あとは、色々考え事して過ごす。SF関係。嬉しい悩みとでもいうべきか。これは後日に。
 なんとなく忙しい日であった。


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