HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』140

●マッドサイエンティスト日記(2000年2月前半)


主な事件
 ・休日は書斎に籠もる日々…
 ・坂井原正光(cl)と「Musette Jazz Quintet」を聴く。(8日)
 ・東野圭吾「白夜行」を読んだが……

2000年

2月1日(火)
 5時、朝刊に、筒井康隆「わたしのグランパ」が読売文学賞の記事。ナベツネも希にいいことをする。あ、ナベツネが選考したわけではないか。……この作品については、作者には当然として、登場人物におめでとうといいたくなる。
 ボンサラ、誠実に手抜き仕事。
 夜、書斎でじっとしている。

2月2日(水)
 ボンサラ、誠実に仕事。つまらん日である。
 夕方帰宅して書斎で陰気に座っている。
 ちょっと必要があって「カレンダー」のことを調べていたら須賀隆氏のホームページに行き着く。この「暦変換ソフト」の凄さに仰天。アサヒネットにこんなのが開設されていたとは……。
 須賀隆さんとは10年近く会ってないが、ハードSF研の中核メンバーで、「天才少年」の雰囲気を漂わせている、やっぱり天才的な才能の持ち主。「火星暦」があるのが嬉しい。

2月3日(木)
 ボンサラ、誠実に仕事。
 どういう訳か、「女性関係でややこしくなりつつある」キナクサイ話を3件、それもバラバラで聞く。珍しいこともるものだ。
 むろん特定のモデルがあっての話だが、ここでは、特定のモデルはありません、ということにしておいて……。
 その1。さるオヤジさん。「息子が女作りよって、手切れ金やと100万持っていきよった」
 その2。某氏は韓国クラブに入り浸り。10万くらいの勘定はさっと支払う。破滅しまっせ。いや、親戚ら遺産を相続してヨメはんには内緒やそうな、もう1千万ほど使うたそうな。あとなんぼありますねん。さあ……。
 その3。このご時世に離婚用の手切れ金ほしさに退職するアホがおるらしい。辞めてどないしますねん。女といっしょになる。職と金を失ってもてるのかね、そんな顔ちがうやろ。さあ……。
 あやかりたいのは「その2」だけど、まあ元気な連中であるなあ。
 繰り返すが、特定のモデルはありません。

2月4日(金)
 ボンサラ、誠実に手抜き仕事。
 夕刻より久しぶりに徹夜モードに入る。と、覚悟したものの、夜中2時頃に寝てしまう。……まあ「普通の人」にとっては朝5時まで起きているのに相当するから、実質徹夜か。それにしては進み方がトホホである。

2月5日(土)
 終日書斎。
 夕方のニュースで京都の小学生刺殺事件、任意同行を求めた21歳の浪人生が飛び降り自殺のニュース。同級生のアルバム争奪戦が始まっているのだろうなあ。

2月6日(日)
 朝、雨の中を散歩をかねて「エロタコ知事の跡目争い」投票に行く。
 戻って、また終日書斎。

2月7日(月)
 ……徹夜。朝6時まで。ああ眠い。7時過ぎ、気晴らしに出社。
 階段を降りるとヒザがガクガク。2日半座りっぱなしでこれだから、10代の成長期に9年寝たままの生活を強いられたら、その悲惨さ……わしゃとても書けない。牧野修恐るべし、である。佐藤宣行擁護の「人権派」またも出ますのかねえ。

2月8日(火)
 朝から姫路へ。午後帰社。強風、天気予報通りおそろしく冷たい風である。
 夕食(←ビーフシチューとワインなどたらふく!)後、専属料理人とロイヤルホースへ。この店には満腹状態で行くことにしたのだ、ははは。
 関西のクラリネット成長株・坂井原正光くん「Musette Jazz Quintet」という、アコーディオンを中心とする「フランス風ジャズ」グループにゲスト参加である。シャンソンとジャズの融合かなあ、グラッペリ・ファンとしてはなかなかのものと思う。ギターが「ノコギリ・バイオリン」に持ち替えたり……。「なかなか乙でげすな、でへへへへ」と円生のフレーズを思い出してしまう。……ついでに昔あった「円生が歌うマイ・ファニー・バレンタイン」というのまで思い出してしまった。

 off off off

 坂井原くん、本日はバスクラも披露、長身でハンサムだからすごくサマになっている。……あ、むろん、音色もすばらしい。特にクラリネットは抑制して吹いているところがいい。ゲスト参加だから1ステージ3曲というのはしかたがないが、できればあと5曲くらい聴きたかった。つまらんノコギリやるより、ゲストのクラを聴かせてほしかったなあ。
 終演後、記念撮影。
 off
 店からでると雪が降っている。雨具なし。雪の中を道行きムードで帰宅23時過ぎ。

2月9日(水)
 5時起床、寒いが、大阪市内、積雪はたいしたことなし。
 ボンサラ、まあまあ誠実に仕事。
 会社からの帰り、かんべむさしの事務所に寄り、「グリコ森永事件」関連本2冊を借りる。
 すぐ読みたいところなれど、集合住宅の理事会なるものに午後9時半まで拘束される。

2月10日(木)
 久しぶりに滋賀県八日市市にある研究所へ。こちらは積雪がまだだいぶ残っている。
 夕方から近江八幡の駅前居酒屋でちょっと一杯。帰宅22時。

2月11日(金)
 建国記念日で休日。
 終日書斎。雑読。……宮崎学は信用できない。むろん『突破者』を読む限り、世界が違う人間であるのは確かだが、その後の著作、特に『最重要参考人M』を読むと、文筆家としても信用できない人物であることがわかる。宮崎はグリコ・森永事件の犯人てではあるまい。ただ、思わせぶりが過ぎる。『突破者』の凄みが薄れて、だんだん講釈士に成り下がって行く雰囲気が情けない。

2月12日(土)
 終日書斎。雑読。雑原稿。
 小林信彦「現代<死語>ノートII」。……6歳の時の「曲学阿世」は覚えている。ずっと後になって、小林亜星に関する冗談につながるわけだ。
 森下一仁「思考する物語 SFの原理・歴史・主題」……これについては別項で書くことにする。

2月13日(日)
 終日書斎。雑読。
 東野圭吾「白夜行」を読んだが、落胆。決して悪い作品ではないが、「評判」が良すぎたのかな。やっぱり素人書評(というか、例のアンケートとかベストなんとか上位というの)は信用できない。殺人に関する不備数ヶ所、ホテル玄関のトリック(?)に疑問、ミステリーの趣向を除いても、「男」の方が後半、裏に回って「超人」になるから、カタルシスなし。……歳をとると読む方がひねくれるのかなあ。しかし、『天空の蜂』の方が数段優れた傑作と思う。
 まあ、わしゃいわゆる「感動」なんてどうでもいいんだけどね。お金払って読むなら、笑わせてほしい、びっくりさせてほしいという立場だから。

2月14日(月)
 3時頃に目が覚めて眠り断続的。新聞休刊日で、朝が退屈である。
 早朝出社、ボンサラ誠実に仕事。ただ、3日間の「書斎頭」がリセットされるのが辛い。
 まっすぐ帰宅、ビール飲んで寝ていたら、23時前に起こされる。某ゲラ、至急チェックの要請、あ、確かにこちらの間違い。で、目が覚めたところでパソコンを起動してみると、バレンタインディらしきハッピーなメール。わしがハッピーなのではない。他人のハッピー。めでたいことではありませんか。まだ起きている専属料理人に命じて、祝いの名目で水割り一杯。

2月15日(火)
 ボンサラ誠実に手抜き仕事。
 またも寒風の強い日である。


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