『マッドサイエンティストの手帳』532

●世にも奇妙な「原辰徳の女性問題」事件

 2012年6月20日(水)午後のことである。
 ネットのニュースで不思議な事件報道を読む。
 要約する。
・明日(6月21日)発売の週刊文春が、「原監督が元暴力団員に1億円支払っていた」という記事を掲載するという。
・原辰徳は女性問題で金を払ったことを認めて「不徳の致すところ」とコメントした。
・しかし、過去のこんなニュースをリークするのは「清武さんのほかに、いったいだれがいるのか」と発言した。
・読売球団は、週刊文春に対して名誉棄損訴訟を起こすことを決めたという。
・清武氏は「私はその記事を拝見してませんし、そもそもこうした記事についてコメントする立場にありません」と“潔白”を主張した、という。
 ……と、おれがこんな要約しなくても、ネットに大量の情報があふれている。
 おれが驚くのは、明日出るスクープについて、ここまで事件が進展していることである。
 本来、これは明日起こるべき騒動ではないのか。
 こりゃ、筒井さんも書かなかった疑似イベントSFではないか。
 明日出る記事の犯人を名指しした原は凄いねえ。これこそ名誉毀損ものではないか。
 (清武氏のコメントだけが冷静である。潔白を主張しているわけではない。「明日犯人にされまっせ」といわれた気分だろう。)
 ともかく、明朝、コンビニへ週刊文春を買いに行くことにしよう。
 すべてはそれからである。
 東京にいれば1日早く週刊誌を入手できる場所は知っているのだが、Too late。
 ただ、マスコミ関係者の特権的立場で、一般読者が知る前に「ネタバレ」報道してしまうのはどうかと思う。そういう問題点も含めて、この事件には注目したい。
 (以上、2012.6.20 23:20)

 さて……
 6月21日早朝、さっそく週刊文春6月28日号を買ってきて、スクープ記事「原監督が元暴力団員に一億円払っていた!」を読んだ。
 ネットにも関連記事があふれているが、備忘録として、おれなりに要約しておくことにする。
・1988年、原辰徳は芦屋・竹園旅館のアルバイト女性とねんごろになった。
・その女性はキタでホステスとなり、ホストクラブにはまり、借金苦に陥る。
・1995年、阪神大震災と前後するかたちで、女性は姿を消した。ただ女性は「克明な日記」を残した。
・日記は同居女性から人を介して「暴力団関係者」(Y)の手に渡った。
・日記はさらにその「舎弟」(H)の手元に行き着いた。
・Hは日記の内容を「元暴力団員」(K)に打ち明けた。Kは現役プロ野球選手の父親であった。ちなみにKの小指は欠損している。
・2006年8月、読売の監督である原辰徳はKからの電話を受け、遠征先の熊本のホテルでKとHと会う。
・Kは日記のコピーを見せて「表に出ないようにするから」と1億円を要求した。
・原は自分のマネージメント会社「エイトコーポレーション」の社員に指示して1億円を用意し、Kは金と引き替えに、その場で「日記」をシュレッダーにかけ、領収証を切った。
・2007年9月15日、札幌道でHの運転する車がスリップし、Hは死亡した。(事件性はなさそう)
 これで日記は闇に葬られたはずだった。
・2009年4月、読売の球団事務所はYからの電話を受ける。「原監督に渡っている、ある女性の日記を返してほしい」という要求であった。
 この段階で、球団は原の過去の経緯を知る。
 Yはその後も球団事務所、原の自宅、球場にまで押しかける。Yは金銭要求はせず、「Hが勝手に持ち出した日記を返してほしい」と要求を続ける。
・2009年12月1日、Yは(日記返還要求とは別の)威力業務妨害で逮捕され、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。公判では原のスキャンダルには一切触れられていない。
・Kは熱海にいるらしいが取材拒否。
(要約終り)
 なかなかドラマチックな事件である。
 週刊文春が売り場に並ぶ前日からコメント類が飛び交ったが、おれが興味を持ったボイントを列記しておくことに。
・悲劇のヒロインであるはずの女性はどうしているのか。
 原は釈明コメントでこの女性について「私はある女性と関係を持ちました。女性とはまもなく連絡を断ちましたが、それから約18年後……」と述べている。原の方から連絡を断ったと読める。つまり、性欲処理道具として使い捨てにしたということなのか。
 おれには日記に原が「連絡を断つ」前後の事情が詳細に記述してあるとしか思えない。お互いが愛情を感じての関係なら、褒められたことではないにせよ、日記の処分に1億円も支払うことはないだろう。
 また、1億円が女性に渡った形跡もない。原に贖罪意識があるのなら、金は女性に支払うべきではなかったか。謝るのなら、自分の女房よりも失踪した女性に対してではないのか。
 原は「私は球団にすべてを打ち明けました。妻にもすぐに告白しました。一番傷つけてしまうのは妻だと思ったからでした。」というが、順序がちがうのではないか。
 ともかく日記の中身が知りたい。おれには「暴力団関係者」が「これなら1億円はいける」と判断した何かがあるとしか思えないのである。
・1億円はどう分配されたのか。
・原がこのスキャンダルを漏洩した犯人を「清武さんのほかに、いったいだれがいるのか」と断じているが、これこそ名誉毀損になるのではないか。
 読売の桃井球団社長は、この報道への清武英利氏を関与を断言し、根拠として、
1.2009年当時の球団の機密事項で、知っていたのは桃井社長、清武代表、原沢副代表、法務担当者の4人だけ。
2.清武は解任当時「おれは原の弱みを握っている」「原と刺し違える。俺の性格を知っているだろう。徹底的に仕返しする」と醜聞暴露をほのめかしていた。
3.清武氏が多数の内部資料を持ち出していたことが確実になった。
 という。
 2は誰が聞いたのか、3の事情がよくわからんが、1についても、口が堅い連中ばかりとは思えんし、原の女房は? エイト・コーポレーションの社員は? ナベツネは知らなかったのか?
・その他色々あるが、面倒になってきた。日記のコピーがないはずはない。続報が待たれる。
・原は選手を集めて「これからジャイアンツの一員として、報告の義務をしっかり果たしてほしい」と訓示したそうだが、選手にしたら、あんたにいわれたくはねえよ、だろうな。
・そういえば原は2009年「暴力団追放」キャンペーンのポスターに出て、「暴力団に金を出さない」だと!
 これに似たことはあったなあ。江川の二重契約で大騒ぎになった頃、栃木県警の交通安全ポスターに江川が登場、「守ってますか、ルール」とあったんだよなあ。
 読売棒振団はスキャンダルの発覚タイミングだけは見事だ。
 ま、週刊文春の「日記の発掘」に期待することにしよう。
 (以上、2012.6.22 13:30)

 (つづく……かもしれない)


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