HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』130

●森山威男ジャズコンサートin多治見

森山威男カルテットのコンサートが多治見市であった。森山威男研究会からただひとり駆けつけたメンバーとしては、「保存会」その他追っかけ諸君にさきがけてレポートをアップせねばなるまい。

 1999年11月21日14時〜
 まなびパークたじみ 7階 多目的ホール
 主催:多治見市文化事業団
 チケットは1000円!である。

 多治見駅前にある会館には写真のような可愛いポスター。1000円のチケットは早々と完売。……本来、納税者たる市民の皆さんに還元されるべきコンサート、よそ者が紛れ込むのは申し訳ない気分だ。まあ、多治見市は本当にいい町だ、と申し上げることでご容赦を。
 舞台の上でなく、フロア前方に演奏場所を作って、ライブハウスの雰囲気にしてある。これもなかなかの配慮である。

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 開場の1時半に行ったら、最前列に座れた。……列の先頭は追っかけナンバーワン(CD「Live at Lovely」のライナーノーツご参照)間違いなしの塩之谷香さんで、2時間前から並んだという! 2番目が開場10分前に来たというから、この場合「並ぶ」という表現は適さない。単に立っていたということである。
 大阪からわが盟友・大ちゃんも。それにラブリーではお馴染みの顔ぶれ。
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 塩之谷さんとはメールとお互いのホームページでの知り合いで、本日初めてご挨拶。リンクを張らせていただくことになった。

 午後2時開演。
 演奏については、もうこのところオブチ並のボキャ貧で、わしゃあの素晴らしい演奏をとても文章で表現する自信がないのです。
 初めて演奏された曲もあるので、曲目のみ紹介しておきたい。

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   森山威男(ds) 音川英二(ts,ss) 望月英明(b) 田中信正(p)

 EXCHANGE
 WILD RIVER(音川さんの曲。邦題は「春よ来い」?)
 GRATITUDE
 SUNRISE
 (休憩)
 城辺(音川さんの曲。ジョーヘン。四国の町の名前で、森山さんが発作的に命名)
 浜辺の歌(2年前の浜松以来!)
 HASH-A-BYE
 GOOD BYE

 森山語録を少し採録。
 ・この前ピットインで演りました。懐かしがる人ばかりでなく、若い女性も結構来ていました。演奏が終わって休憩していると、その声が聞こえてきました。「あのドラム、凄いわね。で、あのオジサン、なんという人なの」
 ・(音川さんの新曲を紹介して)新曲を書いてくれたメンバーはみんな離れていくというジンクスがあります。うーむ。音川は30代、田中は20代……あ、30になったのか。(望月さんを見て)あんたは50になったか?
 ・地元ではおとなしくしてようと思ってました。固く誓っておりました。それがこうして演ることになって、どんな顔で叩けばいいのか。知り合いの皆さんがいるのだし、お店屋さんなんかで会う時の顔か……スポットライトを浴びている時の顔か……迷いましたが、演ってみると、どちらでも変わらないことがわかりました。
 ・インターネットの記事を見て、一周忌が過ぎた父のことを思い出しました。病床で、「威男、わしゃ歯医者に向いてないように思う」……今頃いわれても困るのですが、ぼくもドラマーに向いてないのではないかと思うようになりました。その父が、死ぬ前にこんなことをいいました。「なあ威男、もうちょっとがんばって、立派なたぬきになろう」……この意味が今でもわかりません。

 終演後、10人ほどで、駅近くの「PAPA’Z」という店へ。
 森山夫人、愛娘さおりちゃんも。
 多治見では有名な店らしく時々ライブもあるらしい。コンサートの流れらしい人が多い。
 ビールを飲み出すと、もう、ガヤガヤと色んな話になって、断片的にしか覚えていない。勝沼の絶品のワインまで差し入れられた席でメモなどとるわけにもいきませんし、そんなことしていたら、ワインがなくなってしまいます。
 で、記憶のフラグメントのみ。
 ・携帯の着信メロディ自慢大会。名古屋組は「SUNRISE」でこれもピアノから入るかテナー部分か何バージョンかあるらしい。森山研は「わたらせ」が主流。わしゃ携帯を持ってないので仲間はずれにされる。
 ・「木曽」をやっと聴けたのだが、森山さんはLPを持ってないという。この録音は急に決まったもので、録音には山下さん立ち会い、「森山、負けるな」との凄い「声援」であったという。
 ・「たぬき」の解釈に幾つかの意見が出た。ぼくの推論は、楽器と肉体の一致説。「威男、もう少し歳をとったらドラムが自分の肉体の一部だと思う境地に至るはずだ」という意味ではなかろうか。……これに対して、森山さんは、幼児体験説が捨てきれないという。医師であった祖父は芸術に理解があり、芸大の画学生を支援していた。その一人が「たぬき」を絵を置いていったことがあるという。これが強い記憶として残っていたのではないか。……うーん、落語で雀とか虎の絵は出てくるけど、たぬきの絵というのが解せないなあ。これは「市民ケーン」の薔薇のつぼみに匹敵する謎である。

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 ・東京から来た某嬢(失礼。お名前聞き忘れ)、正面に座っている大ちゃんにおずおずと「あのう、何か怒っておられるんですか?」……元ボクサーという経歴の大ちゃんは、寡黙で、どかって座っているとすごい存在感がある。山下さんのカーネギー出演の楽屋へハチママと大ちゃんが訪ねていった。背広でどかっと座っている大ちゃんはたちまち注目を集め、ありゃ何者だと、高倉健みたいな人気者になった。さあ、ハチママの嫉妬すること……と、以後冷戦が2年ほど続いた。ちなみに、大ちゃんは用心棒を務めてくれますが、暴力は振るいません。
 ・ベースの後ろに扉をつけて、中で寝られるようにしたら便利ではないですか? いや、○○が溜まってきて音が悪くなります。
 ・森山研というのは東西に2名ずつだから、これを東京支部、大阪支部にして、名古屋を本部にすればいいのではないか? ……むむむ。名古屋には塩之谷、伊藤という最強メンバーがいるから、本当に実現しかねない。
 ・九州に「森山威男保存会」がある。本日は来ていないので悪口のいい放題。
 「だいたい保存会という名前がよくないわよ。森山さんをホルマリン漬けにして置いているみたいじゃないの」「そうだそうだ」「けしからん」「だいたいヤツラは大阪の美女ふたりをかっさらった連中である」「それは大阪の男がふがいないからでしょ」「そりゃそうだけど……」
 ・塩之谷さんは「静電気人間」であって、冬場は地下鉄の切符が誤動作したりホテルの磁気カードのキーが使えなくなるという。小松左京『継ぐのは誰か』に出てくる新人類に似ている。「治療に役に立たないんですか」「マッサージしたら発電機になります」「パチンコ屋で手かざしやってみたら」とジャズからますます離れていく。
 ・望月“グズラ”英明さんがダジャレ連発であったのだが、もうこの辺になるとまるで覚えていない。
 ・わしゃもう何を言ってもオヤジギャグになってしまい、「言わなきゃ良かった今夜のわたし」と「芸者ワルツ」(古いね)フレーズになるていたらく。嗚呼……
 ・1月21日、東京・神田のTUCが次の会場である。リクエスト曲が早くも出たがねまさかど演歌を……

 と、多治見から中央線、新幹線を乗り継いで、自宅まで2時間ちょっと。便利だなあ。


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