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『マッドサイエンティストの手帳』377

●マッドサイエンティスト日記(2006年7月前半)


主な事件
 ・穴蔵の日々(〜2日)
 ・播州龍野の日常(3〜6日)
 ・穴蔵生活(7〜10日)
 ・播州龍野の日常(11〜14日)
 ・HP開設10周年(13日)



7月1日(土) 穴蔵/創サポ講義
 終日穴蔵。
 昨夜、朝食用の「お弁当」を作ってもらっているので、一歩も出ず、着替えもせず。
 播州龍野の生活がつづくと、朝刊を読まなくてもかまわない気分になってしまう。
 田舎では朝刊のニュースは実質的には1日遅れ。ネットでニュースを見て、翌日新聞で確認というパターンになってしまう。
 大阪に戻ってもこのパターンで、朝刊は晩飯の時に読めばいいという気分。朝刊を読むために「外出」するのが面倒になってしまった。
 夕方に穴蔵を這い出て、天満のエルおおさかへ。
 「創作サポートセンター」専科の講義である。
 本日、通常クラスの講師は眉村卓さんであった。
 ロビーで久しぶりに眉村さんと雑談。
 
 おれの方がふんぞり返っているように見えるが、キンタマが痒かったのでこんな姿勢になってしまったのである。
 新作『いいかげんワールド』について少し聞く。
 新井素子さんが「推薦文」を書いているのが面白い。
 そして眉村さんは橋元淳一郎さんの思弁的ハードSF『神の仕掛けた玩具』の帯に推薦文を寄せておられる。
 となると、今度は橋元さんが新井さんについて書くべきか。
 これらの作品については近日、別途取り上げることにする。
 と、なんと高井信さんがやってきた。
 眉村さんの講義を「聴講」に来たという。近くに住んでいるからなあ。
 専科の生徒も合流して、おれもいっしょに聴こうかと思ったが、それだと教室に入りきれない。
 ということで、こちらは提出作品4篇についてのコメント中心講義。
 長めの作品ばかりで、合計1000枚を超える。しかも作風は世話物からファンタジーまで色々だから、こちらも冷や汗ものである。
 午後8時過ぎまで。
 あと、いっしょに中華屋というコースもあったのだが、疲労が蓄積しており、皆さんにちょっと挨拶して、まっすぐ帰館。
 午後9時半頃から夕食となるが……こちらも八宝菜、中華サラダに餃子という中華メニューであった。

7月2日(日) 穴蔵
 定刻4時に目が覚める。
 久々のディスカバリーの打ち上げ中継、雷雲あり1日延期となる。
 5時、NHKの定時ニュースは繰り上げで、サッカー中継(録画か?)が優先している。
 日曜早朝の定番「日本の話芸」は本日放送なし。けしからんなあ。
 終日穴蔵。
 本日も「お弁当」あり、夕方まで外出せず着替えもせず。
 色々溜まっている本を読んで過ごす。
 午後7時半、一応シャツを着て「自宅」へ行く。
 本日は和風メニュー。
 枝豆、卵豆腐、肉じゃが、焼き茄子・おくら、中トロ刺身、山芋のり巻き、茄子・胡瓜の浅漬け……と書くと、大量に食べてるみたいだが、それぞれの量は小鉢程度。
 これでビール、つづいて某方面からいただいた秋田の大吟醸「まんさくの花」を冷酒で一献。これがバカうまである。
 ということで、いい気分で酔っぱらっているところに、22時からNHK-FM「セッション2006」にA.P.J.登場。難波弘之・水野正敏・池長一美の織りなす変拍子サウンドでさらに酩酊。
 たまらんなあ。
 明日からまた田舎である。

7月3日(月) 大阪→播州龍野
 午前3時過ぎに目が覚める。
 ディスカバリー、またも打ち上げ延期である。……テポドンの場合、注入された?燃料はどうなっているのだろう。
 7月に入ると、夜の明けるのが遅くなったなあと実感する。
 10分ほどの違いは大きい。
 秋の気配を感じて気が重くなるのであった。
 早朝の電車で播州龍野へ移動。
 龍野の実家、門柱横の凌霄花(のうぜんかづら)が咲き始めている。
 
 去年は6月28日であった。今年は5日ほど遅い。
 凌霄花の開花は、長年わが家では熱いお茶から麦茶に切り替えの合図であり、今年もそうする。
 あとはのどかな日常……のはずが、本日から西側の畠で宅地の造成工事が始まった。
 小型の重機が入り、ダンプが頻繁に出入りして土を搬出している。
 終日騒音……と思っていたら、午後、数年ぶりかと思われる猛烈な夕立。
 隣地の工事も冠水で本日は中止のようである。
 騒がしい日である。フロリダも龍野も。

7月4日(火) 播州龍野の日常
 わ、午前2時頃に目が覚めた。
 朝刊が届くまで雑読。SFマガジンの1962年あたり拾い読み。初心であるなあ。
 終日書斎……とはいかず。
 下男仕事に加えて、タイムマシン関係でも検討事項発生。
 色々と動かねばならぬ。
 もっとも、書斎にこもっていても、隣接地の宅地造成作業の騒音と振動で、仕事にはなりそうにない。
 どうやら2ヶ月……8月末まで断続的につづくようである。
 南米産の山羊を死ぬまで飼育してどうなんのよ的判決を夜のTVニュースで見ながら、ちょっと悪酔い。
 もう寝る。

7月5日(水) 播州龍野の日常
 夜更かししたため、起床が5時になってしまった。
 ディスカバリー発射は見逃し。
 結果を確認しようとネット接続……と、北朝鮮がミサイル発射のニュース。
 テレビに切り替えてみると、稚内に落ちたみたいな画像(NHK)が映る。
 おととい、ディスカバリーの発射延期にからめて、テポドンの注入燃料の心配をしてたら、まさか同時発射とは……。
 下男(おとこし)仕事しつつ、午前中、テレビ・サーフィン。
 午前10時の段階で北朝鮮は6発発射、テホドンは3発目で、ディスカバリーと同時ではないらしい。
 派手にやるなあ。
 が、3時間ほど見ていたら、興味はテポドン2の落下点が失敗によるのか意図的な距離かにしぼられてくる。(おれは太平洋まで飛ばすつもりが失敗したと思うがなあ)
 午後は北朝鮮にかまってられず。
 雑事色々。
 夕刻、炊事していたら、老母が見ているテレビの音声、姫路のモノレールとか聞こえてくる。
 NHKの「もっともっと関西」という番組が「姫路モノレール」を取り上げているのであった。手柄山に保管してあるモノレールの車両が映された。廃墟に近い地下室に保管してあり、非公開。……見学用の通路だけでも作るべきではないか。
 などと思いつつビールを飲んでいたら、小金ちゃん、7発目発射のニュース。
 ガキのダダコネか。

7月6日(木) 播州龍野の日常
 終日、下男(おとこし)仕事。
 老母を井上医院へ連れて行ったら、なんと待合室が満席。
 1時間15分ほど新聞雑誌を読む。
 アエラなんて、こんな場所でしか読むことないもんね。
 この週刊誌、広告のダジャレに呆れて、今まで手にすることもなかったが、幾つか面白い記事あり。ただ、定期購読したくなるようなコラムは皆無である。
 ということで早寝。

7月7日(金) 播州龍野→大阪
 曇天である。
 朝から西側隣地で工事が始まった。
 畑(もとは水田)を宅地化するのだが、重機で土を掘り返し、運び出し、砂利の混じった土を入れて、さらにその上に土を盛る。水はけのためであろう。
 そう広くない道路をダンプが頻繁に出入りする。
 工期は8月末までらしい。
 
 わが実家からは、西に龍野のシンボル・鶏籠山が見える。
 子供の時から見慣れているから、毎日眺めているわけではないが、たまに来客があると、たいていの人がうらやましがる。年輩の人は特にそうらしい。
 西側にどんな住宅が建つのかは不明だが、鶏籠山が見えなくなるのは確実。
 おれは特別の感慨はないが、80年以上同じ山を眺めてきた老母は寂しいようである。
 富士山の見える土地ではよくあることだろうな。
 下男仕事色々の後、午後の電車で帰阪。
 JR姫路駅の構内でも大がかりな工事が始まっている。
 
 こちらは姫新線の線路だけ残し、旧山陽線のレールは撤去、橋脚の基礎らしいのが作られている。ここが姫新線の高架になるのか?
 姫新線の高架化なんて生きているうちは無理と思っていたのが、案外早く実現するのかもしれない。

7月8日(土) 穴蔵
 終日穴蔵。
 少しは仕事も……しなければいかんのだが、アタマが働かず、夕方まで机に向かったままボケーッと過ごす。
 今日から日本SF大会か……。今年はずいぶん早い開催だなあ。
 夜は集合住宅の某委員会があり、2時間拘束される。
 困ったものだ。

7月9日(日) 穴蔵
 終日穴蔵。
 夕食以外には出ず、机に向かう覚悟である。
 と、朝のNHKニュースの特集で『日本沈没第二部』が取り上げられる。
 小松の親っさんにつづいて谷甲州さんも登場。
 
 イオでのインタビューにつづいて小松の仕事場らしき映像も。
 放送では、帯にも書いてない内容にちょっと触れてあって、ちと、いや大いに気になる。
 実は、昨夜、序章だけ読んで後の楽しみとしていたのだが、続きを読み出す。……面白くて、1000枚を越す大作を一気に読了。
 傑作である。
 そして谷甲州カラーが色濃く出ている。
 色々書きたいことがあるが、これはまた改めて。
 少しは仕事もしなければならぬのである。
 以後、ビールも飲まず、ずっと机に向かっているのである。

7月10日(月) 穴蔵/徹夜明け仕事
 久しぶりに徹夜で仕事する。
 窓を開けたまま扇風機だと、3時頃から、W杯決勝が中継されているらしく、テレビ音声らしいのがあちこちから聞こえてくる。
 朝7時前で仕事は終了。
 ビール飲んで寝たいところだが、ゴト日であって月次の諸事項やタイムマシン関係その他があって出かけなければならぬ。
 シャワー、朝食の後、9時から市内ウロウロ。
 こんなパターンは40代半ばまではよくあったなあ。
 もう無理だろうと思っていたが、案外平気。これが妙な自信につながってはいかんのだが。
 夕食時のニュース。
 W杯最終戦でジダンがマテラッツィに頭突きを食らわして退場という事件が大きく報道される。
 ジダンは名前は聞いたことがある、マテラッツィはまったく知らない選手なので、この事件をどう面白がっていいのかがわからない。
 野球に置き換えて、日本シリーズ最終戦しかもこのシーズンで引退という試合で、長嶋がこれをやったとしたら、こりゃ大事件。相手が何をいったのかしらんが、長嶋が「誤解」した可能性も大きい。しかし、時間が経てば、長嶋らしい武勇伝として許容されるのではないか。
 これを王がやったとしたら。これは文句なしに相手の選手が悪い。たいていの人はそう思うであろう。そして時間が経っても事件は後味の悪いままだろう。
 ひとえに長嶋と王のキャラクターに帰納するのである。
 ジダンがどんな選手だったのかまったく知らないので、おれにはこの事件の大きさが実感できず、解釈にも困るのである。
 民族的な誤解という結論にはなってほしくないなあ。
 いずれにせよ、世界中に試合の映像が流れている。「読唇術者」の出番であろう。

7月11日(火) 大阪→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動。
 終日下男仕事。
 早寝……のつもりが、ダラダラと水割り飲んでいたら遅くなってしまった。
 明日から大がかりな身辺整理モード入りである。

7月12日(水) 播州龍野の日常
 粛々と下男仕事を行う。
 合間に、久坂葉子研究会『神戸残照 久坂葉子』(勉誠出版)というぶあつい本を拾い読み。
 生誕75周年記念の出版という。小松御大と同年。死後半世紀以上経っているのに「研究会」があってこんな研究書が出るとはたいした作家だ。
 おれの場合、久坂作品にはほとんど興味はなく、あくまでもゴシップ的興味から。実姉へのインタビューが唯一の新情報か。加納一朗氏が寄稿しておられるのにびっくりする。
 それにしても久坂葉子と桂あやめ(加山雄三でもいいけど)が「6次の隔たり」どころか「3次」でつながってしまうなんて、誰も想像できないだろうなあ。15年前の事件が介在するのだけど。
 この事件もそろそろ総括しとかんとなあ……。

7月13日(木) 播州龍野の日常/HP開設10周年
 本日はHP開設10周年である。10年前の7月13日(土)にJALI-NETがスタートしたのであった。
 この日、おれはどうしていたか。
 1996年7月13日の行動を再現すると……。
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 午前3時に起床、「マッドサイエンティストの手帳」第1回を書き、ASAHI-NETへメール送稿。午後に5人のHPを同時にオープンするので、最初の作業は事務局が行うのである。
 月曜日に東京で記者発表(おれは行けないけど)の予定で、なんといっても筒井康隆氏がHP開設するという話題が大きいのである。
 朝7時に送稿(他のページはすでに用意している)。
 会社は休みであるが、相棒の某くんと堺沖人工島にある「秘密工場」へ行ってタイムマシンの組立作業を行う。
 梅雨明けを思わせるカンカン照り。汗噴出。
 昼は羽衣の「市太郎」という店でビールとそうめん定食。
 夕刻帰館、ゴロ寝していたら高井信さんから電話。飲み会の日であったのだ。
 あわてて梅田へ駆けつける。
 北野勇作さん、草上仁さん、高井信さんととん兵衛という居酒屋でビール。
 あと4人でニューサントリー5へ行き、ニューオリンズ・ラスカルズを聴く。
 草上さんはラスカルズは初めてであり、「タイガーラグ」をリクエスト、そのうまさに驚いた様子である。
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 ……と、こう再現してみると、10年前も今も、やっとることはほとんど変わってないなあ。
 10年後の本日。
 プラスチック・ゴミを出す日である。
 あとはタイムマシン格納庫で近日某国へ送る予定のタイムマシン最終調整。
 (格納庫を堺沖人工島から播州龍野へ移したのは1998年春である)
 午後は、田草川弘『黒澤明vsハリウッド』(文藝春秋)を途中まで。労作。
 夜、第135回芥川賞・直木賞決定のニュース。
 そういえば川上弘美さんの芥川賞受賞も10年前のこの頃であった。
 ということで、特に10周年記念行事はなし。
 週末に久しぶりにラスカルズを聴きにニューサントリー5へ行くことにしよう。

7月14日(金) 播州龍野→大阪
 早寝したら午前3時前に目が覚める。
 『黒沢澤vsハリウッド』を読了。
 『トラ・トラ・トラ!』の監督降板の背景をアメリカ側の資料を精査して解明した力作。田草川弘氏の著作は初めて読んだ。1934年生まれで70歳を過ぎておられるのだが、その徹底した調査力と分析力に圧倒される。
 いちばん驚いたのは、役者として海軍出身の「素人」を起用するくだりで、山本五十六役に「ある雑誌で見た実業家」を起用しようと某大手化学会社の社長を訪ねる。この人物は言下に拒否するのだが……まさかねえ。
 零戦が「赤城」から飛び立つシーンは空母「ヨークタウン」で撮影されたが、これはアポロ8号の打ち上げが延期されたために可能になった、とか、太秦撮影所はヤクザ映画全盛で「ヤクザ」と「海軍」の喧嘩が多発、とか、面白いエピソードが詰まっている。
 じつは映画『トラ・トラ・トラ!』はまだ観ていない。
 DVDを借りてくることにしよう。
 午前中、大阪へ陸送するためにタイムマシンをクルマに積み込み。
 相棒の某くんが陸送するのに並行して、おれも電車で播州龍野から大阪に移動。
 無事、到着を確認。
 夕刻帰宅。
 昨日から炎暑猛暑の報道喧しく、大阪はとんでもないヒートアイランドと化しているのだろうと思っていたら、夕立があったらしく、路面が濡れていて、涼風がさわやかである。
 専属料理人は「暑い暑い」と、まるでおれのせいみたいに愚痴をいうが、かんべんしてほしいものだ。おれはこの程度の気温は平気というかむしろ快適。おれの周辺の熱気をそちらへ押しつけている訳じゃないよ。そんな熱力学第2法則に反するような超能力をおれが持っているはずないではないか。
 ビールたくさん飲んで早寝。

7月15日(土) 穴蔵/炎天/ラスカルズ
 終日穴蔵にこもる……わけにもいかず。
 午後、自転車で出かける。
 炎天のようだが、日影側を走れば快適である。
 本町周辺数社に書類の配達である。連休明けに届いているようにとの配慮だが、休日は郵便物の受付も不可のビルもあり、半分は無駄足である。
 帰路、「ジャズの専門店ミムラ」に寄って、チャック・ヘッジスとグッドマン3度目の来日のライブ版を入手。
 また夕方まで穴蔵。
 室温32℃……扇風機を回しておけば快適そのものである。
 夜、専属料理人と歩いてニューサントリー5へ。
 ファイブで聴くのは半年ぶりではないか。
 
 メンバー不変がいいと思っていたところに、本日は志賀さん(tp)福田さん(tb)川合さん(bj)が欠場でちょっと寂しい。
 トランペットは名古屋に単身赴任中の池本さんがトラで来ていて、日頃の鬱憤晴らしのごとく吹きまくり。
 2、3ステージを聴いて、深夜に帰館。
 かなり酔っぱらってしまった。

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