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『マッドサイエンティストの手帳』314

●マッドサイエンティスト日記(2004年10月前半)


主な事件
 ・第5回小松左京賞授賞式(1日)
 ・播州龍野の日々(4日〜)
 ・トプシー・チャップマン at マホガニーホール(11日)

2004年

10月1日(金)
 久しぶりに上京。
 東京駅の丸の内側に新しい商業施設が出来ている。丸善が入っているので見学、SF関係とジャズ関係をチェックするが、「対角線」の位置にある八重洲ブックセンターとは互角か。今は充実しているが、きちんと補給されるのかどうかがポイントだろうな。衝動買いは控える。
 夕刻から、キャピタル東急で角川春樹事務所8周年祝賀会&第5回小松左京賞授賞式に出席。
 ボンクラ息子その1と合流、あとはウナギ屋か寿司屋かと迷うが、面倒になって西大島のホルモン屋でモツ煮込みやチヂミなど並べてビール。あとはボンクラ息子の部屋に転がり込んで早寝である。

10月2日(土)
 わ、やっぱり4時過ぎに目が覚めてしまった。
 早朝が暗いのには困ったものだ。4時過ぎには明るくなってほしい……と思うのは、おれが夏至の生まれだからであろうか。
 5時過ぎに少し明るくなってきたので、部屋を抜け出し、ボンクラ息子その1の自転車を借りて近所を散策。
 猿江恩賜公園……昔の木場の雰囲気も残してある。広くて、ジョギングコースもあり、朝から散歩している人が結構いる。
 off off
 大島から亀戸あたりまで路地裏をウロウロ。またひとつ、うらぶれた「銀座」を発見。
 亀戸近く「たつみ屋」という大衆食堂で朝食。
 なかなかの店である。早朝からビール並べて激論している高齢者グループもいて、仲間入りしたい雰囲気である。どこにいても、こういう店を探し出すわが嗅覚はなかなかであるなあ。
 ボンクラ息子その1、多摩のどこかでバーベキューをやるとかで、炭やコンロを積んだフィアット・ウーノで東京駅まで送ってくれた。日本晴れであったが、名古屋へんから天気急変、大阪どしゃぶり。多摩はだいじょうぶかいな。

10月3日(日)
 涼しくなった……室温26℃は、おれには低すぎる温度である。
 終日穴蔵。
 夕刻、日曜にもかかわらず事務所に「休日出勤」であったらしいかんべむさし氏、来穴蔵。
 またしばらくおれが不在になるので、アホげな話のし貯めである。

10月4日(月)
 早朝の電車で播州龍野へ移動。
 実家にいた兄と30分ほど雑談の後、見張り役交替。
 こちらも涼しく……というより、肌寒いほど。
 幸い快晴であったので、書斎・寝床・リスニングルームなど、大掃除。扇風機を片づけ、布団を干し、カーペットに掃除機をかける。まだコタツとストーブは出さないものの、秋冬用に模様替えである。
 ご近所からややこしい話。
 モグラの活動が活発化していて、休耕中の田や畑の境界……畦道が穴だらけ、陥没に近い場所まであるという。浸水被害防止のためには境界をコンクリートで固めるかブロックを並べるか、来春までに何らかの対策が必要という。
 そういわれれば庭の植木のそばにも幾つか穴がある。
 コンクリートの場合、本格的な寒さの前に工事する必要があるらしい。
 やっかいなことである。
 サラリーマンをやめたら田舎暮らしなんて人の気が知れない。実態を知らないからだろうな。周囲の大部分が住宅地になっているわが実家付近でも問題が色々。ま、クマが出てくるよりはましだけどね。

10月5日(火)
 播州龍野の日常。
 夕刻、テレビを見ていた老母、「井上二郎さんがメガネをかけはじめた」という。
 井上二郎というのは、NHK神戸局が平日の18時から放映している「ニュースKOBE発」を担当している若手アナウンサーである。
 このアナウンサー、声が抜群にいいのである。……耳が遠い老母が、この人の声はよく聞こえるという。そのつもりで注目していたら、確かによく通る声で、実に心地よく響く。これは天賦のものだろう。
 「顔はたいしたことないけど……」といってたのが、だんだん好感が増幅、いまやすっかり老母の贔屓アナである。
 メガネをかけても印象はそう変わらない。
 このアナウンサー、将来はNHKのエースになるのではないか。

10月6日(水)
 播州龍野の日常。
 3時頃に目が覚める。肌寒いくらいである。憂鬱になるなあ。
 仕事の資料がこちにら届く。
 少しは仕事もするのであった。
 午後、龍野市立図書館へ行って調べもの。キップ・ソーンの美本(ほとんど読まれた形跡がない)があって驚く。田舎だからとあなどれんぞ。
 ついでに老母用に向田邦子の評伝と志水辰夫の短編集数冊を借りてくる。老母が最近いちばん気に入っているのがシミタツ節である。酔態はまったく知らないわけで、ま、いい読者なのである。

10月7日(木)
 播州龍野の日常。
 午後、思い立って墓掃除に行く。と、先月の彼岸にいた「墓守蛙」、まだ堀の字のなかにいる。
 off
 もうおれでも寒く感じる季節、冬眠し忘れているのではないか心配である……といったら、それを晩秋の季語で「穴惑い」というのだと老母が教えてくれた。ぼけてないなあと安心。もっともこれは蛙ではなく、おれの苦手な動物に使うことが多いらしいが。
 今年の新米が届く。
 さっそく老母が炊飯。……これがうまそうなので、夜、晩酌のあとで食べたら、寝苦しいのなんの、慣れないことをするものではないなあ。

10月8日(金)
 うへ、また台風がくるらしい。
 またも直撃かもしれない進路。……大阪に雑件が溜まっているのだが、帰阪予定を延ばすかどうか迷う。が、老母は、地震は嫌だが台風は平気だという。補聴器外して本を読んでおれば暴風の音など気にならないらしい。便利といえば便利。
 ということで、昼過ぎに出る。
 雨が本格的になってきた。
 午後、三宮で途中下車。
 高井信さんと会う。
 大阪シナリオ学校のエンターテインメント・ノベル講座が主催しているショートショート・コンテストの選考。候補作十篇について話し合う。
 ……がお互いのランク付けを出し合ってみると、ほとんど同じ。議論することもなく決まる。あとはせっかくだからと雑談2時間近く。高井さんと素面でしゃべるのは珍しいことである。あ、高井さんに限らないか。
 夕刻帰阪。
 雲行きますます怪しい。

10月9日(土)
 台風22号は上陸するとしても静岡以東らしい。神戸は降ったり止んだりの天気になりそうである。
 神戸ジャズストリートの日であるが、午前中は雨でパレードは中止であろう。
 雑件山積……遠方から来るおなじみの顔ぶれと夕方一杯飲りたいところだが、身動きがとれない。
 結局、終日穴蔵。

10月10日(日)
 典型的な台風一過の快晴である。
 神戸ジャズストリートの2日目に行くかどうか迷っているところに、仕事関係のメール。某国は日曜関係なしか。そういえばボンクラ・サラリーマン時代、雑用を片づけるには静かな日がいいからと日曜に出社していたら、そんな時に限って海外からFAXが入ることが多かった。たいていは小さな会社のオーナー社長からであったが。
 ということで、本日も終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。

10月11日(月)
 世間の3連休の最終日。
 午後、心斎橋のマホガニーホールへ。
 神戸ジャズストリートのために久しぶりにニューオリンズから来日したゴスペルとジャズのシンガー、トプシー・チャップマンさんをゲストに招いての「お別れ」というか「おみやげ」というか、そんな感じの内輪のコンサートである。
 神戸には行けなかったが、トプシー・チャップマン+ニューオリンズ・ラスカルズはここで聴けるので、まあ本日は純粋の休日である。
 それにしてもここに参集するメンバー、筋金入りのトラディショナル・ジャズ・ファンだけに、平均年齢が恐ろしく高い。10年後がどうなることやら……。
 off off
 ホールのオモテも中も写真のごとき雰囲気。おれなんぞ、まだ若造である。
 神戸で会えなかった藤本さん、名古屋の今高さん(3日連続である!)も来ていて、ホールの隅でビールを飲みながらの鑑賞。
 トプシーの唱法はマヘリア型の絶叫調ではなく、声を抑制したスタイルで品位がある。それに、たいへんチャーミングに見える。(若い頃のジャケット写真も見せて貰ったが、これは本当に可愛い)
 「古い十字架」につついて「バイアンドバイ」そして「ジョージア・オン・マイ・マインド」では福田さんのトロンボーンによるサポートが素晴らしい。
 off
 ビールタイム(休憩)を挟んで短めの3ステージ。
 ラスカルズの演奏では、珍しくも「メモリーズ・オブ・ユー」が木村さんのヴォーカル入りであったが、特筆すべきはこの時のクラリネット。グッドマンの雰囲気が皆無で、もうまったく純粋のニューオリンズ・スタイル。「クラリネット吹きが避けて通れぬ」代表曲で、ずいぶん色々な奏者で聴いてきたが、こんなのは初めて。コレクターにして博覧強記の今高さんがやっぱり感嘆していたから、これを聴けただけでも来たかいがあったというものである。
 最後のセットではゴスペルの川上さん(マスクワイア?)とのデュオ、ピアノの弾き語りも披露。
 最後はにぎやかに「聖者の行進」大合唱となった。
 off
 終了後、記念写真をお願いしたら、写真はメールで送ってくださいとアドレス入りの名刺をもらった。
 ……また、たぶん年内に来日の予定があるとか。
 恒例、住友さんの3・3・7拍子の手締めで終了である。

10月12日(火)
 早朝の電車で播州龍野へ移動。
 またしばらく「播州龍野の日常」の開始である。

10月13日(水)
 播州龍野の日常。

10月14日(木)
 播州龍野の日常。
 寒くなった。
 老母のために居間にコタツを設置、ソファに座って足先を温めるだけのためであるが。
 居間にいるぶんには暖かいが、仕事のために「書斎」にいると足先から冷えてきて思考力ゼロとなる。
 これからの龍野、この寒さ(まだ室温16℃だが寒い寒い)、わしゃどう過ごすべきか……

10月15日(金)
 播州龍野の日常……午前中のみ。
 夕刻帰阪。
 明日は上京である。

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