HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』255

●マッドサイエンティスト日記(2002年10月後半)


主な事件
 ・ピンカラの店<LuLu wiite's>へ行く(16日)
 ・大阪シナリオ学校のショートショート・コンテスト(19日)
 ・試写室コンサート(20日)
 ・ルン吉くん、元気であった!(25日)
 ・田中啓文氏のテナーを聴く(27日)
 ・東大阪の人工衛星(29日)

2002年

10月16日(水)
 早朝からニュースを見るが、昨日帰国の拉致被害者のことばかりで、しかも新ネタはないから、早くも食傷。
 午後、「ネクタイをしめての仕事」でノートパソコンを担いで出かける。モバイルではないから、やっぱり重い。
 夕方、本町から心斎橋まで歩く。
 マホガーホール・ストンパーズのリーダー、「ピンカラ」こと高居俊裕さんがオープンしたジャズ居酒屋「LuLu white's」へ。
 東心斎橋1丁目、南警察署近く、L型カウンターの居酒屋で、トラディショナル中心にジャズが流れている。
 早めの時間帯に、ODJCのホームページ開設の打ち合わせ。パソコンを持っていったのだが、店のカウンター隅にはADSL接続のノートパソコンが置いてあった。
 1時間ほど全体の構成の打ち合わせ。年内開設できればいいか。……ビールを飲みだした頃に、自転車で滝川雅弘さんが到着、あとはジャズの話ばかりで午後9時半頃まで。
 off
 ピンカラ、料理もトランペット並みにうまい。なぜうまいのか、理由も聞いたのだが、涙なしには語れないので省略。
 気楽にジャズと酒が楽しめる店なので、ぜひよろしく。
 <LuLu white's>
  東心斎橋1-6-30 日宝清水町ビル1階
  06-6282-5055

10月17日(木)
 終日穴蔵。
 ネクタイをしない日であるが、妙に電話の多い日である。

10月18日(金)
 終日穴蔵。
 ネクタイをしない日であるが、妙に電話の多い日である。
 実家の電話が不調でつながらないという電話が身内からかかってきたり、ややこしいことである。
 近くのタイムマシン格納庫にいる某パートナーにFAXを入れて、メッセージを実家の母まで届けてもらう。と、向こうからは正常にかかってくる。
 何度かややこしいやりとりの後、どうやら併設しているFAXの故障で、着信が自動受信になってしまうことが判明。
 10年以上前から使っているFAXだから修理不能であろう。……老母は耳が遠く、FAX付属の受話器では聞こえない。音量拡大できる福祉電話を使っている。が、FAXとの併設は、機種によって手動切替ができないのもあって、難しいのである。老母はきちんとFAXを使いこなしてきたのだが、うまく適合する機種があるかどうか。
 夕刻、珍しく「応接室」に来客1件。こちらはSFがらみ。
 電話では、ジャズ関係のことが2件。
 ……関係ないことだが、予想もしなかったところから「朝日」が嫌いなんですかという質問を受けた。
 このページを見てるのは、SFとジャズ好きの人くらいと思っていたら、意外な読者がいてびっくりする。
 9月18日の書き込みのことらしい。決して嫌っているわけではないし、親しい方も多いので、ちと戸惑うなあ。理由を注記した。おれが嫌いなのは五十嵐敬喜という外道である。(2002.10.21)

10月19日(土)
 夕刻まで穴蔵。
 夕刻、天満のエルおおさかへ。
 大阪シナリオ学校の開講式。これに合わせて募集していた「ショートショート大賞」の表彰式も。
 放送演劇科の方は講師を代表して高見孔二さんが出席。
 記念のショートショート・コンテスト、166篇から、入賞作2篇。ともに着想秀逸で迷ったが、アイデアの優れた方を1席、表現のうまさで2席と、順位をつけざるを得なかった。
 せっかくだから選評をここに載せておこうか。創作に興味ある方はちらっと見て下さい。
 受賞者にひと言ずつ挨拶をお願いした。
 で、「風嫌い」の田畑暁生さんの挨拶。
「パスカル短編文学新人賞では堀センセイから毎回コメントいただきありがとうございました」
 なぬ!
 聞けば、1、2回は最後まで残らなかったが、第3回で最終候補に残った作品、「一本のロープ」の作者・田畑暁生さんなのであった。この作品はよく覚えている。一本のロープが地球全体をつないでいる話で、これは筒井さんが映画「泳ぐひと」を連想させると評された異色作。
 そういえば、シンクロニシティとでもいうのか、同時刻、東京では筒井さん主催「筒井版・悪魔の辞典」の出版を記念して、ネットで協力したメンバー中心のパーティが開催されている。……わしゃ、こちらの行事があって行けなかったのだが。
 
 受賞作「最後の風」を書いた吉岡真由さんは、創作はまったく初めてで、「スローガラス」なんて聞いたこともなかったというから、これはこれで驚き。
 (※後日聞いたところでは、ショートショートを書いたのが初めてで、長めの小説は書かれていたそうである。どうりでポイントは押さえてあるし、短編向きのアイデアと思ったのも見当はずれではなかったわけだ。)
 田畑さんについては田畑暁生さんのHPでわかります。経歴を見てびっくりされるはず。「一本のロープ」も掲載されております。
 土曜なので、ラスカルズをちょっと聴いてから帰るか迷うが、体調いまひとつなので東梅田を通過してまっすぐ帰宅。と、誰もいない。夕食をどうしたものかと迷っていたら、専属料理人がボンクラ息子その1と一杯機嫌で帰宅。夕方から「おれがおごってやるから」と梅田の寿司屋へ行っていたのだという。さっき通過した近所ではないか!
 ひとり粗食。東京の筒井パーティへ行ってたらよかった……。

10月20日(日)
 雨である。
 午後、心斎橋から西へ。北堀江界隈、なんか今風の店がちらほら。雨の日曜午後で静かなもの。
 松竹ビルの最上階にある試写室へ。
 滝川サポーターのひとりbigriver大川さんが企画する試写室コンサート「Big Jazz River」……もう5回目という。
 17時から。
 唐口一之(tp),滝川雅弘(cl),岩佐康彦(p),西山満(b)北岡進(ds)
 
 38席のゆったりしたシートで音響もよく、これはなかなかの値打ちである。
 「ブルーモンク」や「言い出しかねて(名訳だが誤訳)」や「星影のステラ」などスタンダート中心だから、これは心地よく聴ける。西っしゃんのベースもこういう構成だと押しつけがない。……もっとも、2ステージ目は、西っしゃんのMCが多すぎて興ざめ。「怒りのモンク」ではなく「限りなく小言に近いボヤキ」だから困ったもの。まあ歳だからなあ。
 が、ともかく、松竹系で上映中の「エンジェル・アイズ」で流れる「ネイチャー・ボーイ」を滝川クラ・フィーチャーで。これは素晴らしかった。唐口さんのペットも。
 最後はオマケで宮脇知子(vo)の「セントルイス・ブルース」も。発音がちょっと……と、これは上山高史さんのヴォーカルに較べるのは酷か。
 このコンサート、次の滝川さんの出番は12月1日。ご注目を。

10月21日(月)
 終日穴蔵。
 午後、「応接室」に某大手エンジニアリング会社の取締役・M氏がご来臨。……といっても仕事の話ではなく、同級生であって、徒歩10分ちょっとの会社から歩いてきただけのことである。
 来月に予定しているミニ同窓会の打ち合わせ。
 忙しいのやらヒマなのやら混在状態なので、遅刻もドタキャンもかまわない「石毛花見方式」にしようかと検討。要するに場所だけ確保して酒と料理は各自持ち込み。……一挙にこの方式は、おっさんばかりでは難しいので、折衷案に落ち着く。
 雑用、増えるなあ。

10月22日(火)
 終日穴蔵。
 雑用ばかりである。
 郵便局から年賀状の申込み用紙が届く。もうそんな季節である。

10月23日(水)
 ネクタイ着用しての仕事。
 ついでに某銀行の貸金庫に保管しているタイムマシンの設計図を確認に寄る。……ここの貸金庫、自動倉庫型になってから、図面を広げるスペースがなくなって不便である。電話ボックスほどのコーナーに搬送されてくるシステムで、ありがたみがないことである。以前の、ガランとした地下の金庫室にひとりで入る緊張感が懐かしい。

10月24日(木)
 終日穴蔵。
 モスクワでチェチェンのゲリラが劇場占拠のニュース。アメリカの連続射殺といい、東西ともに血なまぐさいなあ。

10月25日(金)
 アメリカの連続狙撃犯、身柄拘束という。モスクワはそのまま。
 好天が本日までで、明日から天気は下り坂の予報。
 朝から穴蔵の掃除。冬に備えて色々と模様替えもする。
 冬用の備品購入の必要も生じて、午後自転車で市内ウロウロ。
 ついでに、かんべ事務所に寄り、またも北朝鮮関係その他レクチャーを受ける。
 帰路、住民票をとる必要あって、梅田地下の市のサービスカウンターに寄る。
 で、ここを出たところに、なんと目の前をルン吉くんが歩いてくるではないか。
 ええっと、8月11日・猛暑の日に見かけて以来、2月ぶりだ。相変わらずも防寒服、今がいちばん快適な時だろう。……そして間もなく、同じ赤い防寒服で3度目の冬に挑むことになる。
 off
 それにしても、地下街で会うのは初めてだ。地下街には入らないと思っていたのだ。この冬の昼間は暖かい地下街で過ごすことになるのだろうか。北野勇作情報では、夜は扇町公園に寝てはるらしいのだが。
 こちらの心配を知る由もなく、ルン吉くん、ダイヤモンド地下街を北新地駅の方へ悠々と歩き去る。
 まあ、元気でよかった。

10月26日(土)
 朝刊によれば、昨夜、「横田めぐみさんの娘」がテレビの「独占インタビュー」でお涙頂戴の田舎芝居をやったらしい。たまにはテレビの番組欄にも注意しなきゃいかんなあ。昨夜はデフランコのCDを聴きながら湯割り飲んでたからなあ。その方が良かったか。小金ちゃん王朝、可哀想な少女に「瞼の祖母」の演技を強制しなければならぬまでの崖っぷち。崩壊までもう少しだ。延命させちゃいかんぞ。
 小金ちゃん王朝より先に、大阪の天気が崩れそうなので、午前中、昨日やり残しの雑用片づけるために自転車で外出。
 帰路、中之島図書館に寄る。
 と、人出が多い。となりの、改装された中之島公会堂の見学会と判明。せっかくだから、順路に沿って館内一巡。
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 大ホールは、雰囲気は昔のままで、シートをやや大きくして、数を減らし、1100席ほど。……と、これはモスクワで占拠されている劇場と同規模ということか。ここに700人の人質となると、ほぼ満員、息苦しいことであろうと想像できる。
 午後帰宅。と、日本時間の昼前、モスクワでは特殊部隊が突入、制圧したらしい。

10月27日(日)
 終日穴蔵。
 またも集合住宅関係の用事色々。嗚呼……。
 夕刻、心斎橋、アメリカ村の「BIG CAT」へ。
 田中啓文が参加しているユナイテッド・ジャズ・オーケストラが出るコンサート。CASBAというスタジオの主催で、ここに出入りしている12バントが午後2時頃から次々出てきて、田中啓文氏の出番はトリで20時頃という。……前に「田中はんは最近腕を上げなさって芸惜しみされるらしい」といったものだから、案内いただいたのである。
 もぎりの態度悪い。入ったとたん若い女が「ドリンク500円です」と切り口上。喉が渇いていたから何か飲みたかったところではあるが、押し売りでもなく申し訳ありませんがでもなく、キセルをとがめるような口調。カチンとくるのはおれが歳をとった証拠である。「もぎりよ今夜もありがとう」とはいえんぞな。
 ロビーでビールを飲んでいたら、テナー持った田中啓文さん、それに北野勇作さんも来る。
 off off
 全体に押していて、出番は8時半頃になるという。ナニワのバンドだけに押しますね、「おしてるナニワのジャズバンド」と、こんな枕詞のシャレは今や通用しないなあ。
 ロック(らしき)バンドなど聴いてから、いよいよユナイテッド・ジャズ・オーケストラ。なんでも唯一のジャズバンドらしい。「チキン」「ラテン・ダンス」「アフリカブラス」など、ホトンド(全部?)前といっしょのナンバー。まあ、どちらかといえばソロで聴かせるバンドだからいいか。ブラスは皆うまい。田中啓文のソロ、前より過激で、オガーッ、オガーッと「山火事で焼け死ぬウワバミの断末魔」。客席で子供が泣き出した。
 最後の曲にゲストが参加するという。田中啓文のMCによれば「まったく打ち合わせもなしで『ギターの人』を呼び上げます。ええっと、名前も知りません。『ギターの人』ということしかわかりません。どうなりますか……では『ギターの人』です!」
 で、出てきた「ギターの人」、上半身裸でパンク系?というのか。なんだか気色悪い風体で、どちらかというとむさ苦しいユナイテッドとの組み合わせは珍中の珍。ジャカジャカジャカとかき鳴らすギターがうまいのかどうか、わしには判定不能である。最後がズシャンと決まらず、ギターだけがシャカシャカシャカと続いて、そのままテーマに繋がったが、なんかしまらない終わり方であったが、いやまあ、ともかく面白かった。
 会場明るくなると、後ろに藤原ヨウコウ氏。京都からはるばると、それも午後2時から来ていたという。「森田の息子」並みのけなげさである。

10月28日(月)
 早朝の電車で播州龍野の実家に移動。
 本日、老母の八十*歳の誕生日でもある。雑件片づけ。恐ろしく風が強く、寒い。
 2個のキンタマが1個に「波動関数収縮」する季節の到来間近である。タイムマシン格納庫にも寄って、夕刻帰阪。
 夜、北野勇作さんとモリカワが穴蔵の「応接室」に来る。資料の受け渡し。「ホンマに応接室と書いてあるんですなあ」と妙に感心されるが、そりゃ「穴蔵」と表札を出すわけにもいかないし……。
 昨日が「木枯らし1号」、今日も寒いので、焼酎湯割りを飲みつつ雑談1時間ほど。

10月29日(火)
 午後、意外なスジからのお誘いがあって、東大阪へ。
 産経・夕刊のたぶん関西版のみと思うが、「飛べ ナニワの人工衛星」という連載記事があり、その主人公ともいうべき青木豊彦社長率いる「アオキ」を初め、東大阪の会社見学と、「東大阪宇宙関連開発研究会」へのオブザーバー参加である。
 夕方から商工会議所で会議。東大阪の中小企業グループが集まって「人工衛星を一丁打ち上げたろか」という意気込みは面白く、色々なメディアで話題になっている。
 タイムマシン開発に関わっているおれとしても、ぜひ成功してほしいと応援したくなる。関西の製造業、これからは宇宙・ロボット・タイムマシンと、昔のSF三大テーマを実現していく時代であろうか。
 夜8時半頃まで。

10月30日(水)
 宇宙から一転、太鼓騒動である。
 終日静かに穴蔵のつもりが、午後、またも集合住宅関係のもめ事。
 なんでも「太鼓叩いてドンドコドン」というゲームを買った部屋があり、終日、重低音連続リズム(それもへたくそ)が響いて耳障りという苦情が、上下左右斜めの8戸中7戸から出ているという。1戸はふだん不在だから、この「苦情率」尋常ではない。あーあ、困ったものだ。
 どんなゲーム機か見せないという。
 ネットで調べてみると、どうやら「太鼓の達人」というプレステ2のゲームらしい。小太鼓みたいなものを叩くらしいから、音量を絞れとかいうことではないらしい。
 2軒には受験生がいることだし、本音は取り上げて叩き壊したいところだが。
 アホが増えるなあ。
 最終調整案は出ぬまま。神経消耗することである。
 寒くなるし、日本シリーズは巨人が4連勝しそうな雰囲気だし。厄日である。
 焼酎ガブ飲み、21時頃にふて寝である。

10月31日(木)
 終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。
 タイムマシン関係、今度はシリア方面。噂では、ここはウズベクどころではない、恐っろしいところらしいが、どうなるやら。ま、小金ちゃん王国よりましだろうけど。
 夜は焼酎湯割りを飲みつつ、珍しくも入手したモンティ・サンシャイン、ピート・ファウンテン、笹川典生、ジャック・マクロウリンなどのクラを聴く。
 今聴くと、クリスバーバー・ジャズバンドの「アイスクリーム」はそれほどのものではなかったのだなあ。高校時代以来40年ぶりだからな。
 たそがれの国、10月はかくして終わる。


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