HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』206

●マッドサイエンティスト日記(2001年7月後半)


主な事件
 ・記録的猛暑の日々……
 ・ロボフェスタ関西2001開幕(20日)
 ・ついにクーラーを買う(27日)

2001年

7月16日(月)
 久しぶりに雨である。梅雨明け宣言が出たからか。湿度高く、まさに梅雨である。
 午前4時の室温摂氏32度である。湿度の影響も大きいが、どうもわが体質、32度に境界があるらしい。31度だと扇風機をまわして眠れるのである。
 午前中、ひと月ぶりに傘を差して傘を差して出かける。某コラムの未来予想に「傘が不要になる」と書いたばかりなのに、早くも外れた。実際このひと月、傘は使ってない。1本あった折り畳み傘は使わないまま韓国に置き忘れてきたからなあ。
 わしの場合、地下鉄まで徒歩2分、ここを濡れずに行けたら、あとは世界中どこでも傘なしで行けるのである。
 蒸し暑く、仕事にならない。

7月17日(火)
 曇天、蒸し暑く、室温早朝から32度。
 防寒服のルン吉くんには悪いが、わしゃ我慢会はやめてクーラー使うぞと宣言したものの、推定15年前のクーラー、あきらかに不調である。音が大きく、1時間ほどで温風になる。
 前の住人の置きみやげである。リサイクルなんとかの前に買い替えておくべきだったか。
 夏の北極熊状態で過ごす。
 午後、所用あって天五へ自転車で走る。途中、中崎町商店街の青空書房近くに「豆腐屋」を発見。この通りを走るのは明け方が多いので気づかなかったのである。この店がまえだとうまいのではないかと、木綿を一丁買って帰宅。……結果は、普通であった。悪くはないが期待はずれ。わざわざ買いに行くほどじゃないぜ、ご近所の北野勇作さん。
 ヤッコでビールを飲みながら某賞のニュースが気になるのでテレビを見るが、午後9時には放送なし。

7月18日(水)
 午前4時、朝刊。昨夜の選考結果は、直木賞が藤田宣永氏、芥川賞が玄侑宗久氏。うーん、残念。今回、知人というか、受賞して欲しい候補者ふたり。宇宙作家クラブの山之口洋さんと、文学界新人賞の長嶋有さん。ともに第一回目のノミネート。サンケイによれば長嶋さんの「サイドカーに犬」は最後の2作まで残ったらしい。しかし、ともにこれから期待される人である。
 暑くてアタマが働かない。

7月19日(木)
 暑くてアタマが働かない。
 集合住宅の管理人がこの3日「夏休み」で、管理組合理事という立場上、交替で植裁に水撒きをせねばならぬ。朝、見下ろせば専属料理人がやけっぱちで水撒きしている。……昔、垂水に出現した「水撒き女」はどうしているのだろう。

7月20日(金)
 炎天下、一応スーツにネクタイ姿で、自転車で西梅田から国際会議場へ。
 本日開幕の「ロボフェスタ関西2001」のオープニングセレモニーである。
 チーフプロデューサーの眉村卓さんに挨拶。舞台ではないのですかと訊くと、プロデューサーは裏方だから、実質は会場警備だという。ほんまかいな。
 11時30分からのセレモニー、偉い方々が並び、大臣の「代読」を含む官僚挨拶が続く。夏休み初日で子供づれが多く、子供は正直でたちまち騒ぎ出す。退屈だよなあ。
 浅田稔教授の「開会宣言」になってアシモが登場。舞台中央で右手を挙げて浅田教授とともに「開会宣言」……これでやっとロボフェスタらしくなった。この辺、SF大会の方が数段洗練されていると思う。
 会場で大迫公成氏、それに昨秋「ロボット塾」の取材に来た瀬名秀明氏も来ている。律儀であるなあ。
 午後、浅田教授の基調講演「ロボカップ 大いなる挑戦」とロボカップのデモ。浅田教授の講演は約30分の中にロボット開発の現状からロボカップの紹介とその意義、未来展望まで、ビデオ画像まで駆使して、もう基調講演のお手本みたいに見事なものである。
 瀬名氏「いつもながらほれぼれする」……同感であるなあ。
 と、瀬名さんの『ロボット21世紀』(文春新書)が出たばかりで、ロビーで販売中。眉村さんが「サイン本があるといいから」と客席の瀬名さんのところまで10冊ほどを運んできた。眉村さん、本当に裏方に徹している。勿体のうございますと、みんなでスタッフルームへ移動。ここで瀬名さんの臨時サイン会となった。スタッフにもファン多し。
 夕方、浅田さんの出番終了、本日はまさに「浅田稔デー」であった。舞台のソデで挨拶。
 off off
 瀬名さんからプラネタリウムの話題が出て、それでは詳しい人を紹介しましょうと、3人で徒歩5分の市立科学館へ。学芸員の渡辺義弥氏、ちょうどプラネタリウムの解説が終わった後で、突発的訪問にもかかわらず、文化財に指定された初代のツァイスUのプラネタリウムなどに案内していただいた。
 「友の会」の部屋で雑談。電気科学館時代のチラシや手塚治虫さん直筆のブラネタリウムの絵など、珍しいものまで色々。織田作之助にプラネタリウムに関する文章(日活での川島雄三『わが町』の原作になった)があるとは知らなかった。博物館の「楽屋」は面白いなあ。こんな場所を職場とする人がうらやましくもあり、しかし、もしわしが勤務したら遊んでばかりで、本来の啓蒙活動などやらんだろうなあ。

7月21日(土)
 暑くてアタマが働かない。
 夕方から専属料理人と梅田まで歩いて出て、新喜楽ヒルトン店で「かも鍋」を食べる。わしゃ暑いときは(いや、暑いときに限らず)毎日でもナベがいいのだが、家庭では不評である。
 ちょっと元気が出て、19時30分頃から、閉店間近の阪神デパート食品売場を歩く。荷物持ちである。値引き投げ売り、食べたいものばかりだが、今買っても残すのは必定、結局ワイン2本を持たされて、歩いて帰宅。途中、紀伊国屋で「新潮」8月号「表現の自由」の特集号を買って帰る。筒井氏の断章が際だっていて、あとは気楽な駄文ばかり。

7月22日(日)
 暑くてアタマが働かない。
 東向きの部屋、朝7時過ぎ、直射光が射してきたので、ベランダで布団を干す。昨夜の汗でジトジト、さすがに気持ちが悪い。ついでに部屋も少し掃除する。
 たちまち猛烈な暑さで、クーラーつけるが、30分経つとほとんど効かない。ちょっと気分が悪くなり、「実家」のリビングに戻ってしばらく涼む。
 午後はなんとか扇風機だけで過ごせる気温になるが32度である。
 夜まで雑読。

7月23日(月)
 市内をウロウロする用事あり、炎天下を自転車で走る。
 昼頃に国際会議場に寄り、初日に混み合っていて見られなかったロボット展示を一通り見学。
 近所のかんべ事務所にも寄って雑談1時間。
 ……夕方帰宅するとリビングが騒々しい。焼き肉屋でアルバイトしているボンクラ息子その2、「溜め込むばかり」で遊びにも行かず、「始末の極意」を実践する早川型のえらいヤツだと思っていたら、プレステ2を買ったのだという。また当分大型画面を独占されてしまう。先日ビデオに撮った「ライトスタッフ」を観ようかと思っていたのに。嗚呼……。

7月24日(火)
 暑くてアタマが働かない。
 暑いのなんの。朝6時で室温33度である。ニュースでは大阪は7時に29.8度というのだが……
 たまりかねて、午後、日本橋へ。クーラーを買いに行くが、馴染みの担当者は休みである。工事のことを考えると、この場合、馴染みの店の方が無理が利きそうで、延期。
 夕方、某紙のインタビュー。
 「自宅」でしゃべるが、やはりパソコンに向かっている写真がほしいということで、他人を入れない前提の「穴蔵」に案内。記者もカメラマンも、さすがにその暑さに驚いたようである。
 が、このK記者、なかなかの根性で、ここの方が話がしやすい(専属料理人がおらんからね)と、床に腰を下ろしてインタビュー続行、カメラマン退去後は、シャツ一枚になって、結局2時間近く。
 せっかくだからビールをひと口と、いっしょに「実家」リビングに戻って、ビール飲み出したら、うまいのなんの。結局21時頃までビールを飲む。急ぐ記事じゃないんだからもう社に戻らず「直帰がベストでっせ」というオジンギャグまで……。

7月25日(水)
 暑くてアタマが働かない。
 が、アタマを使う必要のない用事もあって、カンカン照りの下を市内ウロウロ。
 日本橋に行く時間がない……
 夜、専属料理人が見よう見まねで豚の煮込みやチャンプルなど沖縄風の料理を作ったので、ビール1杯のあと焼酎湯割り。夏には案外これがいいなあ。

7月26日(木)
 暑くてアタマが働かない。
 開店時間を待って、日本橋の某無線へ。
 今の旧式クーラーと部屋やベランダの状態をデジカメ画像で説明、さすがベテラン販売員、この構造と方角では、雨の日しか風は入りまへんと診断。推薦機種即決、5分もかからず。明日工事してくれることになった。トータル金額、大型量販店の目玉商品より安い。さすが藤原無線の豆田さんである。

7月27日(金)
 昼前にクーラー取付工事が終わった。
 ずいぶん小型化して、室内機の上下に壁紙のない「旧地層」が露出して不気味である。
 たしかにクーラー良く効く。
 が、仕事がはかどる訳でもないなあ。
 夕方まで、最近の睡眠不足がやや解消された(全部解消されたわけではないんだね、ははは)。
 元気が出てきて、21時頃から梅田へ。サントリー5。キャンディ浅田の出演日。2ステージ目途中から最終まで。
 off
 ジャズ批評108号のスタンダード特集が面白かったので、久しぶりにスタンダードをヴォーカルで聴きたくなったのである。キャンディは一曲ずつ、その唄の内容を解説するのがいい。ミュージカルや映画音楽がベースになっている場合が多いから、歌詞は大事である。本当は、これ、ヴァースでやるのが理想なんだろうけどね。これは英語力が問われるところで、上山高史さんという「大型新人」はこれが抜群にうまい。……などと色々考えることである。

7月28日(土)
 朝4時、おや、久しぶりにルン吉くんが定位置に寝ている。防寒服スタイルは変わらず、ここ数日の猛暑を乗り切ったらしい。たいしたものだ。ということは、すり切れない限り、あのスタイルは1年通して、2月の夜中も天神さんの真昼も大丈夫ということか。すごい。
 ただ、ぼくだけがクーラーを買ってしまったのが、ちょっとうしろめたい。ごめんね。
 いや、静かで涼しくて、よく昼寝できるぜ。しかし最近の睡眠不足がまだ全部解消されたわけではないんだよね。

7月29日(日)
 参議院選挙投票日である。
 専属料理人、選挙のたびに世話人(立会人であったり受付であったり)に駆りだされる。朝7時前から夜8時までの拘束というから、本日は勝手に飯を食え状態。まあ、これも気楽でいいけどね。
 朝8時に投票……といっても、入れる相手がいない。
 コーシン、何票とれるのかなあ……。末広まき子も気になる。畑恵も面白そうだ。……政策とは何の関係もない興味だけどね。

7月30日(月)
 選挙速報、面倒なので朝5時に見たら、だいたい下馬評どおりで、面白くもなし。愉快なのは青島落選くらいか。楽して儲ける時代は終わったのである。
 某方面から連絡。タイムマシンのフロントパネルの試作品ができたというので見に行く。樹脂成形品で軽量化を図っているのである。よさそうではないか。これで時速5秒ほど性能アップできそうである。

7月31日(月)
 朝5時に朝刊を取りに「実家」へ行ったら、専属料理人が珍しく起きている。3時半にボンクラ息子その1が帰宅して、台所をゴソゴソやりだしたので、そのまま起きてしまったのだという。
 せっかくだから、わしも朝食。……わしが早朝台所で物音をたてるのはいかんが、ボンクラ息子の場合は許容されるらしい。
 6時前に出て、始発で播州龍野の別荘へ。
 昨日のタイムマシンの部品搬入立ち会いである。
 10時〜昼までという時間指定なので、しばらく待機。……が、昼近くになっても着かない。
 ガレージ工場、スレート波板屋根でクーラーなし、窓を閉じていると室温44℃である。窓と表のシャッターを開けて、ファン全開にして、やっと36℃まで下がる。……しかし、シャッターを開けてしまうと「秘密工場」の雰囲気がなくなってしまうからいやなんだよね。
 午後1時過ぎにやっと到着。
 もう本日の組立作業は続ける元気がなく、実家に戻って、枝豆、トマト、そうめんなど並べ、ビールで水分補給。
 夕方、干物状態で帰宅。
 北野勇作さんから暑中見舞いが届いている。「チェスケー・ブティヨヴィツェという、バドワイザーの元ネタになったビールのある町」にいるというのだが、こりゃいったいどこだ? 調べてみると、チェコである。プラハの南方、モルダウ川に沿った町のようである。「モルダウの黒い流れ」なんて思い出すなあ。「SF大会までには帰るつもり」とある。ちょっと用事があってメールしたのに返事がないはずだ。
 夕刊に山田風太郎氏死去のニュース、28日に亡くなられたらしい。……わしにとっては司馬遼太郎逝去のニュースよりも大きいなあ。
 多くの知人友人は忍法帖からのファンだが、ぼくはまず初期の『天国荘奇譚』『陰茎人』『ハカリン』といった奇想小説が好きだ。今入手できるところでは廣済堂文庫から出ているのが多いが、どうしても再読したいのが、1968年と思う「逆櫓一刀流」(櫓はサカナ偏)という中編。どうしても探し出せない。たしかオール読物掲載、どこに収録されているのか、ご存じの方教えてください。
 シャワーを浴び、ビールを飲んでも、まだ体の余熱が冷めない感じ。
 最終火曜で、サウスサイド・ジャズバンドの出演日、出かけるつもりだったのが、寝そべったまま動けない。
 明日から8月と思うと気が重い。暑さには強かったはずだがなあ。


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