『マッドサイエンティストの手帳』756

●マッドサイエンティスト日記(2021年6月前半)


主な事件
 ・穴蔵の日々
 ・ワクチン接種@(14日)


6月1日(火) 穴蔵/ウロウロ
 目覚めれば6月であった。
 午前。久しぶりに自転車に乗る。
 北区役所まで。(結果としては)不要不急の外出だが、予約していたので致し方なし。マイナンバーカードの受け取りである。
 ずいぶん前に、健康保険証を兼ねるというので、それなら便利と申し込んでいたら、ズルズル遅れて、今頃である。
 しかも健保は秋以降。説明書を読んでも、何が便利なのやら、さっぱりわからない。ワクチン接種には何の役にも立たない。
 運転免許を返納したら、身分証明に使えると思ったが、これは危険だ。番号が記載された裏面に、ルーペでやっと読める小文字で「個人番号をコピーすることは法律で禁止されています」みたいなことが書かれているが、誰が守るやら(後で、試しにコピーしてみたら番号はばっちりコピーされる)。
 やめときゃよかった。
 確定申告以外、使うことはあるまい。
 天気がいいので、天五〜天六〜毛馬橋〜毛馬堤〜毛馬閘門と走って、長柄河畔の木陰で30分ほど休憩。
  *
 淀川大堰の下流あたりを眺める。
 ここ数か月の閉塞感は、1に大規模修繕で集合住宅を囲う足場とネット、2にお上の外出禁止令だが、最大の原因は、3淀川堤への道が閉ざされていることであろう。
 左岸線工事で、長柄橋〜十三大橋間の堤が歩けなくなって久しい。
 毛馬まできてやっと淀川と対面できる。この解放感は大きい。
 昼前に帰館。
 午後はまた穴蔵にひきこもり鬱々と過ごす。

6月2日(水) 穴蔵/ウロウロ
 薄曇りの日。黄砂ではないらしい。
 所用あって、昼過ぎ、久しぶりに地下鉄に乗り、心斎橋の某事務所へ……などと伏せることもないか、シオタデザインオフィスへ行き、塩田さんとしばらく雑談。
 色々お願いしてきたことの成果は月末あたりに披露できるか。
 帰路、久しぶりに四ツ橋筋を歩く。
 ちょっと懐かしいビルがあるなと思ったら、長瀬産業であった。
  *
 御堂筋の高度規制なくなり、景観ガタガタになった今、これは大阪で最も優雅なビルのひとつだろう。
 長瀬さんとの仕事でのつき合いは2年ほどだったが、仕事を離れてもつき合いの続いた方がいて、用事もないのにこのビルに寄ったり、ニューサンに飲みに行ったりした。おれとしては珍しいことだ。亡くなられて20年近い。
 ちょっと寂しい気分になる。
 帰館して、また穴蔵にこもる。

6月3日(木) 穴蔵
 終日穴蔵。
 雲仙普賢岳の大火砕流から30年というニュース。
 1991年6月の大事件だったが、この時期、テレビのワイドショーは大林雅美事件(この時はまだ上原まさみと報じていた)で大騒ぎしていた。
 この日(6月3日)も火砕流そっちのけで、「愛人疑惑」の某社長が雲隠れしたと大騒ぎ。現実には赤坂の料亭で芸能レポーターを交えて「対策会議」をやっていたのである。そして6月5日には企業幹部が「愛人疑惑否定の記者会見」という前代未聞の会見をやって、火に油を注ぐことになる。
 この事件はわが生涯でも2番目に大きな事件だったから、大量の資料を残している。作品にしようか迷っていたが難しく、この事件の顛末はハードSF研公報に連載した(よく掲載していただいたものである)。
 最後の方の一節のみ引用しておく。
『……この事件の最中、私は基本的に野次馬であったが、周囲の人たちは過剰に気遣いしてくれる、これが返って苦痛であった。取引先の各氏が、妙によそよそしかったり、「大変ですね」といってくれる人もいた。社員のほとんどがそうだったようだ。
 しかし、次のような事例を、浮かれ騒いでいた「側近」どもはどう思うだろうか。
 1991年6月3日、島原・雲仙普賢岳で大火砕流が発生、死者43人という災害をもたらした。
 わが社の愛知県にある工場には島原出身の従業員が多く、被災した家族もいるらしい。家族が気がかりだが、従業員がすぐ帰省するのは難しい。そこで労務担当の社員が見舞いに現地へ飛んだ。
 数家族がいる避難所を訪ねた時、避難所のテレビが大林雅美事件を報じていて、その社員は身の置き場がなかったという。
 この事件の最大の被害者はこの社員であろう。』
 あれから30年か。

6月4日(金) 穴蔵
 大雨の予報だったが、それほどでもなく、終日本降り。
 穴蔵にひきこもるが……本日は大規模修繕の関係で排水規制の日。
 朝9時から断水、トイレも使用できず。
 必要に応じて「自宅」へ行かねばならぬ。
 雨が本降りで、出歩く気分にもならず。
 幸い、14時過ぎに規制は解除された。ほっ。
(ただし、明日からはもっとひどいことになる予定)
 落ち着かぬ1日が過ぎて、夜は、カツオタタキのサラダ、豚とオニオンのなんたらでビール、酎ハイ。
  *
 お楽しみはこれだけだ。

6月5日(土) 穴蔵
 本日から大規模修繕工事の山場を迎える。
 今回の修繕工事には竪管(排水管)交換があって、これがいちばん大変なのである。
 トイレ奥の壁を破って竪管入れ替え。縦一列の各階同時に4日間かかる。
 昼間、排水は規制されて、トイレは使用できず、できるだけ在室しておらねばならぬ。
 9時から始まって……(中略)……おや、14時頃に終わった。
 17時まで覚悟していたのに、意外に早いではないか。
 北側から始まって、もう終わりに近い区画。だんだん作業に慣れてきたのだとか。
 しかし、(明日は休みで、月曜から)まだ3日ある。
 しかたあるまい。
 あとは痴呆状態で過ごす。

6月6日(日) 穴蔵
 静かな日曜である。大規模修繕の工事音なし。ほっ。
 ほとんど寝そべって過ごすが、3日間出歩いてないと、筋肉の衰えが身に染みる。
 室内をトイレまで歩くだけでも面倒な。
 これではいかんので、午後、お代官様の言いつけに反して、人通りのない道を散歩する。
 近所の某IT企業のビルが解体されるという「お知らせ」が入っていた。来月から1年がかりで解体される。
  *
 うちよりずっと新しい。1986年竣工だから35年で解体。跡地の計画は未定というから、某社はどこかへ移転するのだろう。
 早いといえば、茶屋町にあった東急ホテルがそうだった(今のジュンドーが入ってるチャスカ茶屋町――安藤建築ね)。うちに越してきた翌年(1979)に竣工して2006年に解体だったからなあ。
 野々村竜太郎の生家もそのうち解体されるわけだし。
 竪管入れ替えて、あと40年もたせようというウチなんて、追い立てられている気分になるなあ。

6月7日(月) 穴蔵
 月曜である。
 ワクチン接種の予約、別に急がないのだが、報道を見ていたら、だんだんややこしくなりそうな気配。
※大阪市(北区)の場合、以下の5ヶ所から選べる(らしい)。
 市から届いたハガキによる、
・集団接種(北区には2ヶ所会場がある)
・個別接種(かかりつけ医などで、該当するのがひとつある。電話してみたら「予定立ってない」)
 報道で知る、
・政府(自衛隊)の大規模接種(国際会議場)
・大阪府の大規模接種(マイドーム)
・大阪市の大規模接種(インテックス大阪)
 ややこしいのは二重三重の予約が可能で、そのせいかどうか、キャンセルや来ないのか結構多く、無駄になるワクチンもあるらしい。
 一方、インテックスは空きが多かったのが、電話予約も可としたら、たちまち埋まったとか。
 老人は「働き盛り」に譲るべきと考えてたが、今後の順序も不明で、混乱はさらにエスカレートしそうな。
 混乱の最大の原因は、ネットやらず予約手順がよく理解できない老人のような気がしてくる。
 迷惑にならぬよう、早めに片づけておくことにする。
 1週間遅れになったが、午前9時に「ハガキ」の案内にしたがってネット接続したら、2分ほどの待機でつながり、扇町での集団接種がスムースに予約できた。
 朝9時15分に作業員諸君が入ってきて、先週の修繕工事の続行。
 ハンドブレーカー?の凄まじい響き。屋内でやるから、これはたまらん。幸い10分ほどで終わった。
 あとはゴソゴソゴトゴトと作業の気配。
 落ち着かぬことである。
 本日の工事は昼過ぎで終わる。ほっ。
 出歩く気力もなく、終日穴蔵。
 まだ2日つづく。

6月8日(火) 穴蔵
 火曜日である。たぶん晴れている。
 本日も9時過ぎから、工事の立ち合いのため在室しておらねばの娘。コンコンガタガタの大工仕事のようである。
 1時間半ほどで静かになった。
 昼、市府民税の請求が届いた。げっ。おれにすれば目が飛び出るぜ。冷静に考えれば、昨年、コロナでほとんど動かなかったから、経費がほとんどかかっていない。必要なことを先送りした。そのため課税所得がわずかに上がった結果である。
 馬鹿正直に申告した結果がこれである。
 しかたあるまい。
 午後2時頃に大工仕事終了。あと1日である。
 久しぶりに外出する。
 近くのATMまで歩き、現金引き出し、隣のコンビニで市府民税の支払い。
 お代官様のための年貢支払い(ネットではできない)のために、お代官様の言いつけに背いて外出する。これひとつの不思議。
 1,500歩ほど歩くだけでひどく疲れる。
 毎日歩かないといかんなあ。
 たちまち夕刻。
 専属料理人の並べた数皿でビール。
  *
 初夏パスタ(いくらがメイン)で中本酒店推奨格安馬鹿旨ワイン。
 お楽しみはこれだけだ。

6月9日(水) 穴蔵
 水曜である。夏日……のようである。
 穴蔵にこもっていると、特別暑くはなし。
 修繕工事の山場で、竪管交換工事の最終日。壁の復旧、壁紙貼りだが、トイレが半日使用できず。
 ベランダ側ではアルミ柵の取付工事。
 落ち着かないことである。
 昼過ぎに終了。
 これで「室内工事」と「排水規制」をともなう工事は終わった。
 足場撤去まで、まだひと月ほどあるが、静かに日が戻りそうな。
 ぐったりして、出歩く気分にならず。0歩。

6月10日(木) 穴蔵
 晴である。
 室内工事のために在室している必要がなくなったので、播州龍野に日帰りでささっと行くかと迷っていたところ、6時半にニュース。
 地下鉄御堂筋線が「梅田駅で点検のため全線運転見合わせ」という。
 何を点検しているのか。
 7時半「なんば駅〜新大阪駅間で運転を見合わせ中」となる。
 大阪駅までは歩けるから、移動できないではないが、ラッシュでひどいことになっているだろう。
 梅田〜なんば間はなんとでもなる。JR新大阪〜大阪がひどいことになりそうな。
 見物に行きたいが、密集状態を見るのは危険か。
 昼前に動き出したらしい。梅田駅でホーム先端のゴムと車両が接触したため「点検」したらしいが、全部見直しになるのだろうか。
 10数年前(20年くらい前か)、梅田のホームにレーザー照射装置?を置いて車両とホームの隙間を計測しているのを何度か見たが、その「誤差」が今頃出てきたということか。
 結局本日も終日穴蔵。

6月11日(金) 穴蔵
 晴……だが、黄砂がかかったような薄曇。
 ふつうの雲らしいが、何でも中国のせいに思えてくるのが不思議。
 終日穴蔵。
 このところ、出歩くのがすっかり面倒になってしまった。
 午後……しまった、BSで「真昼の死闘」を見るつもりが、メールの処理などやってて忘れてしまった。
 『マンハッタン無宿』と『白い肌の異常な夜』の間の重要作品。意外にも今まで見てなかったのである。
 ツタヤで探すことにするか。
 今さらレコーダーを買うこともあるまい。

6月12日(土) 穴蔵
 終日穴蔵。
 某サンプル本が届いたので校正を兼ねて熟読流し読み。
 なかなかいい原稿が揃っている。
 これが何かは(たぶん)近日発表。
 夕刻、専属料理人が「微熱」があるというので、食事は別々にすることにして、自分の食材の買い物に出る。
 タカセ市場へ行ったら、菊正宗「しぼりたて」というパックに「驚愕の6冠受賞」というラベルが貼ってある。
 そんなに高くない(むしろ安酒)ので試しに購入。
 夜は穴蔵でヤッコや焼き鳥を並べて独酌。いいものである。
  *
 ビールのあと、揖保乃糸を茹でて急冷した「6冠」を一献。
 まあまあ。

6月13日(日) 穴蔵/ウロウロ
 昼前に地下鉄で心斎橋往復、ちょっとした荷物の配達。
 ついでにデパ地下で買い物と思ったが、人出が多いのでパス、まっすぐ帰館。
 近所のコンビニで弁当を買って帰り、本日も念のため食事は別にする。
 BSで「狂った果実」を途中から見る(たぶん30年ぶりくらい)。
 こんなに退屈な映画だったとは。
 だいたい小さいヨットで男女が水着姿で一晩過ごして、糞や小便はどうすんのよ。
 北原三枝のみまだ生きてるのか……。あ、慎太郎も存命だ。

6月14日(月) 穴蔵/ウロウロ
 専属料理人の体温は普通に戻り、生活も日常のパターンに戻る。ほっ。
 午前中はマジメに机に向かうのであった。
 午後、晴れて日差しが強くなった。
 炎天下を歩いて扇町公園へ。ワクチン集団接種1回目である。予約時間の20分ほど前に行ったら番号札を渡され、5人ずつ呼ばれる方式。
 予定より5分ほど早めに声がかかり、受付〜問診〜接種と10分ほどでスムースに流れ、あと副反応がないか15分間待機、最後に2回目の予約。着いてから35分で終了した。
 待機中、スマホで近所で殺人があったことを知る。徒歩3分の場所である。
 さっそく野次馬として参戦。
「午前10時40分ころ、天神橋のビル5階にあるカラオケパブで、首や胸に複数の刺し傷のある若い女性の遺体が発見された」という。
 現場は区役所や関テレとは目と鼻の先。徒歩圏での人殺しは久しぶりであるなあ。
 天神橋筋に面した、環状線北側の横断歩道東側の雑居ビル5階。「ごまちゃん」という店で、被害者は25歳のオーナー女性という。
  *
 ビルの前に規制線が張られ、歩道も渡れない。西側にテレビがカメラを並べているが……通報から4時間、もう何も起こりそうにないな。
 3日ほど閉ざされたままだったらしい……と、これは近くにいた野次馬の話。
 大阪府警諸君の健闘を祈る。

6月15日(火) 穴蔵
 曇。終日穴蔵にあり。
 ワクチン接種痕、左上腕がちと痛むが、こんなものだろう。
 資料を読んで過ごす。
 昨日のカラオケパブオーナー嬢殺人、ストーカーにつきまとわれていたらしい。
 防犯カメラからわかるであろう。大阪府警諸君の健闘を祈る。


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