『マッドサイエンティストの手帳』667

●マッドサイエンティスト日記(2017年11月後半)


主な事件
 ・某院検診(20日)
 ・忘年会的SF検討会(24日)
 ・忘年会的某飲み会(25日)
 ・播州龍野いたりきたり


11月16日(木) 穴蔵/ウロウロ
 晴。雲の動き急なり。穴蔵にて少しは仕事もするのであった、いと少なしを。
 昼、地下鉄で淀屋橋。市内で高麗橋3丁目にしかないATMへ行って播州龍野関係の処理。
 久しぶりに御堂筋を歩く。
 銀杏はまだ落葉前であった。
  *
 ただし、近くで見るとLEDびっしりの電線巻きつけられていて、可哀想である。
 イルミネーションなんとかなんてのはやめて、冬は銀杏を休ませてやれよ。
 本町にて、残り少ないボンサラ時代からのなじみの店で昼飯。水分補給(口実)も少しばかり。
 13時過ぎるとガラガラ。
 と、同じくなじみの某さんが来た。退職して5、6年。北摂住まいで、今は野菜作りが趣味という。
 ネギ、白菜、大根などを持参。大根は葉が青々。
 大根の葉は刻んでチリメンと炒めると旨いんだよね、などという話になる。
 女将が気をきかせて、大根の葉をバサッと切ってみやげにくれた。
 夜は専属料理人がこれを茹で刻み、チリメンと揚げ、ゴマ油で炒め、なんとかで味付け。
 風邪気味でしんどいといいつつ、こういうことはマメである。
  *
 (このレシピは森川弘子『年収150万円一家 毎日のこんだて』にも出てくる)
 あと、ポテトのなんとか、豚の煮込み、サラダなど並べてもらってビール、黒糖焼酎の湯割り。
 早寝するのである。

11月17日(金) 穴蔵
 定刻午前4時に目覚める。冷え込むという予報だが、午前6時、外8℃/室内18℃で、体感温度はそれほどでもなし。
 終日穴蔵。
 ゴミ出しとか買い物など、外出は下男仕事のみ。
 師匠の墓参を兼ねて紅葉を見に行こうかと思っていたら、箕面の滝道、瀧安寺より上流は、台風による倒木と土砂崩れで通行禁止という。大瀧へは行けないらしい。
 瀧安寺までは行けるようだが……今年は不義理させていただきます。
 近所の散歩コースに紅葉は意外にすくない。
 買い物ついでに、近所の公園の残り少ない落葉樹の葉を眺める。
  *
 野々村竜太郎の生家近くも枯れ落ち葉の季節を迎えるのであった。
 R太郎くん、「もうひと花」なんて、ゆめ考えるんじゃないよ。人に迷惑かけずに生きればいいんだから。

11月18日(土) 穴蔵
 終日穴蔵。
 着替えることもなし。ベッドで本を読んで過ごす。3度の食事はするけど。
 こういう日も年に何日かはあり、その1日。
 「本を読んで過ごす」が「原稿を書いて過ごす」だといいんだけどね。

11月19日(日) 穴蔵
 事情あって本日も「おとなしい1日」を送ることにする。
 4時起床。
 7時朝食。
 NHKの朝のテレビニュースを見ていたら、7時20分頃、新種の米の栽培を紹介する場面で、
 「(農業への参入の)敷居が低くなります」
 というアナウンスがあり、びっくり。聞き間違いではない。テロップまで出た。
 おれも言葉の間違いは多くて、小言いえる立場ではないが、これはおかしい。
 「敷居が低い」という表現のもおかしいが、「敷居が高い」はハードルが高いの意味ではないだろう。
 調べてみると、NHK放送文化研究所は「正しい」解説してるじゃないの。しかも「本来の意味で使うようにと放送の現場の人たちには伝えています」とまで書いてある。
 朝のNHKニュースはおれが見る数少ないテレビ番組のひとつなのによ。ややこしい放送局だ。
 ということで、テレビは見ず、穴蔵にて本を読んで過ごす。
 12時に低塩分の昼食。
 午後も穴蔵にて読書。
 あまり動かないのも体によくない気がして、15時過ぎにジュンクドー往復。
 ゲーセンでダンレボおじさんが踊ってはった。
  *
 ざんないなあ。
 30分ほどで帰館。
 たちまち夕刻。
 19時から粗食のつもりだったら結構豪華なメニュー(翁豆腐の湯豆腐、牡蠣フライ、サラダなど)が並び、ビール、白ワイン少しばかり。
 21時、ベッドに潜り込んで、本を読みつつ早寝。
 本日は2,372歩。明日はこの3倍ほど歩く……つもり。

11月20日(月) 某院/穴蔵
 朝、西梅田の某院へ行く。
 年に1度の検診。先日のホルター装着の結果も聞く。
 ここ数日「おとなしい」生活をしていたのは本日のためである。
 結果は良好というか、異状なく、年相応の状態である。また1年後にということで、予約もする。
 普通に生活しておれば、あと1年は生きられるということであろう。
 さあ、祝杯で昼ビールといくか……と思ったが、まだ10時前。
 寒いので、グラフロ抜けて、まっすぐ帰館。
 穴蔵にこもる。

11月21日(火) 穴蔵/ウロウロ
 午前、専属料理人とヨドバシへ行く。
 携帯電話に関してややこしいことあり(要は数年前、おれの入院中に必要上スマホ導入したため、名義が専属料理人のまま)、機種変更その他で同道せねばならぬ。
 名義譲渡すれば番号継承できるとわかり、その手続きである。1時間ちょっとかかった。
 昼、地下街を歩いて北新地のむつごろうへ行き、日替わり定食。
  *
 メインはレンコン饅頭とヨコワ山かけ。これは結構な味である。この店は、専属料理人が地域のなんとか委員の時に来て気に入り、ランチの馴染み店。「ここの味を盗みたい」らしい。
 ちなみに、おれはふだん「立ち食いうどん」である。嗚呼。
 ま、しかし、ともかく、むつごろうに栄光あれ。

11月22日(水) 穴蔵/スマホ機種変更
 午前、ひとりでヨドバシへ行く。
 あるサービス終了ということで、スマホの機種を変更しなければならぬ。
 昨日に済ますはずが、名義譲渡があったため、本日となる。
 スマホ(携帯)使用はメールがほとんど。なくてもそう不便ではないのだが、5年前に実家の固定電話を停止したから、播州龍野関係の電話はすべておれの携帯にかかってくる。あと数年はいたし方あるまい。
 一応「優遇措置」はあるものの、また2年間、割高期間がつづくことになる。
 もたもた。受け取るまで2時間近くかかった。
 まっすぐ帰館。
 同じアンドロイドだが、諸々の設定はやはり面倒である。あれやこれや。
 たちまち夕刻となる。
 雨になった。
  *
 専属料理人が並べた数皿でビール、湯割り。
 ピアノトリオが似合う北梅田の夜景を眺めつつ、トミフラ師匠、ハンク師匠、バロン師匠を流す。
 西(右)側、旧三井アーバンホテル跡にタワーマンションが迫り上がってきて、グラフロとスカイビルを掩蔽してきた。
 数年後にはその手前(東洋ホテル跡)に50階のタワーマンションが出現の予定。
 裏町ムードになるのかなあ。

11月23日(木) 穴蔵
 勤労感謝の日である。
 ふだんそれほど「勤労」しているわけでもないが、タドコロとかQとかアラセに較べると桁違いに労働しているのだから、本日は何もしないことにする。
 これはこれでしんどいことだが。

11月24日(金) 忘年会的SF検討会
 午前、必要あって駅前ビルの中央郵便局へ行く。
 ついでに西梅田うろうろ。
 北側の新駅工事現場に来ると、東ランプから西ランプ(踏切)への道が北へ迂回するかたちに変更されている。
 恒久的な変更か、工事期間だけなのかは不明。
  *
 たぶん新駅関係の地下工事なのであろう。
 掘り出した土の山がだいぶ高くなってきた。
 できればこのまま天保山より低い山として残してほしいものである。
 夕刻、中津(大分の中津ではなく大阪市北区)の「とりあん」で唐揚げを買ってくる。
 かんべむさし氏来穴蔵。
 久しぶりに定員2名内容非公開ちょっと早めの忘年会的SF検討会を開催する。
 取的の暴行事件から近現代の企業の統廃合史まで、だらだらと3時間半。
 むさし氏持参の「球磨拳」の口当たりがよく、ちと飲み過ぎである。
 あ、大分の唐揚げと球磨焼酎の組み合わせは去年と同じパターンだ。
 無意識のうちらマンネリ化してるのかなあ。

11月25日(土) 忘年会的某飲み会
 二日酔いではないものの、たぶん飲み過ぎのせいで頭働かず、終日ボケーーーーッとタドコロ状態で過ごす。
 たちまち夕刻。
 性懲りもなく飲みに出かける。
 梅田の、10人入れば満席の居酒屋で時々開かれる某飲み会。
 話題提供者をひとりお招きしてガヤガヤやる方式。おれは5月以来の参加である。
 本日のゲストは川西の小学校教諭……というよりも、天文関係の出身で、大阪周辺での観望会を主催されていて、その実態や今後の企画が話題となる。珍しいところでは大阪ステーションシティの屋上農園/都心でもこれくらい星が見えるという実証的観望など。
 福江純さんの門下ではないが、共通の知人多し。
 おれも12月には西はりま天文台へ行く予定。
 しかし……海外旅行はもうやめたから、南半球の星座を見ることなく一生を終えるのかと思うと、ちょっと複雑な気分になる。
 江坂遊が来ていて「御堂筋の北端あたりへ行ったら見えまっせ」「なんでや」「南阪急ですわ」
 二日酔いしそうになる。

11月26日(日) 穴蔵
 世間は休日なので穴蔵にてボケーーーーーッとQ状態で過ごす。
 大阪マラソンやってるらしいが、見に行く気にならず。
 播州龍野はオータムフェスで紅葉見頃らしいが、行く予定が週半ばにずれこんだ。
 運動不足なので、午後、近所の公園〜豊崎神社あたりを1時間ほど散歩。
  *
 野々村竜太郎の生家近くでも紅葉が眺められるのであった。
 大相撲九州場所がやっと終わった(まったく見てないけど)。
 さあ、いよいよ日馬富士殴打事件の「本場所」初日。楽しみなことである。
 土俵より場外乱闘の方が面白いに決まっている。
 もっとも、貴乃花は検察の処分が決まるまで何も語らぬ気がする。
 協会執行部も審議会も、利権目当ての欲ぼけみたいなのが多すぎるし、評議員(こんなの存在も知らなかった)なんてのがいて、熟年ヌードのオバハンがしゃしゃり出てきたり、無茶苦茶だものなあ。
 警察検察の調査を待ちたい。

11月27日(月) 穴蔵/中央図書館
 小春日和である。
 朝、西長堀の中央図書館へ行く。
 ある作品を読んでいて、どうしても気になる古い短篇を思い出したのである。
 古い短篇というのはこちらでちょっと触れている、1960年頃に読んだ有馬頼義の作品。タイトルが思い出せない。
 中年にさしかかった男、子供の時に、放置してあった冷蔵庫に閉じこめられて窒息死した友人がいる。その思い出が描かれるが、最後の場面で、冷蔵庫のドアをバタンと閉める。その時の手の感触から「封じ込めていた記憶」が瞬時に蘇る。いたずらで友人を閉じこめ、それを忘れて帰宅してしまったのは自分であったのだと……
 これを読んだ翌年に「失われた時を求めて」を読み(よく理解できないけど、長い小説を読むのが自慢になる時代だったのである)、あっ、ネタ元はこれかと気づいたのである。
 その後、ベルグソンの解説書も読んだ(これもよく理解できなかった)。
 つまり、ベルグソン→プルースト→有馬頼義の流れを逆に読んでいったわけである。
 そして漠然とだが、相対論にしろ量子力学にしろ、科学をSFにするのも同じ方法でやればいいのだと気づいたのである。
 おれにとっては大きな影響を受けた作品ということになる。
 当時、有馬頼義は松本清張と並ぶ流行作家であった。
 書庫資料から10冊ほど出してもらって調べたが、結局見つからなかった。
 府立図書館の方が揃っていそうである。後日にするか。

「チャチャヤング・ショートショートの会」の2冊
 チャチャヤングは70年代はじめのラジオ(毎日放送)深夜番組。週に1度、眉村さんがパーソナリティをつとめ、ショートショートを募集していた。その頃からの有力メンバーは今も活動されている。その会から発行された2冊。
  *  *
 雫石鉄也『ボトルキープ』 サブタイトルは「バー海神ストーリー」。地方の小都市にあるバー「海神」に出入りするさまざまな客のスケッチ。海神は寂れた商店街にあって、大手企業の工場が移転してから、客も減った。マスター鏑木はキープしてあるボトルが切れたら店を畳もうと思っている。しかし、期限切れ近くになると不思議に久しぶりの客が訪れる。仕事や家庭で色々な問題をかかえていたり、複雑な関係者の待ち合わせの場であったり。鏑木はそこに立ち入ることはせず、基本的にはカウンター越しに眺めている。その人生42篇。閉店する書店主が別れの挨拶に来る「SFマガジンが二冊」なんて、しんみりするなあ。雫石さんの年輪まで感じさせる。舞台のモデルは三田市という。おれは通過はしたが降りたことがない。ただ、福知山線が電化してから、大阪への通勤圏になり、このあたりに居を構えた友人が数人いる。大阪で飲んで帰るパターンが増えたのだろうな。
 本書はこちらで。
 『チャチャヤング・ショートショート・マガジン』はもう第5号である。
 冒頭に深田亨さんのショートショート14篇。コントに近いものも含めて5枚以下の作品。放送されたのもこの程度の長さのが多かったのではないかと思う。作風多彩。深田さんは名手といってもいいのではないか。
 短篇もそれぞれ面白い。雫石さんの静かな終末を描く「週末は終末」、新米美容師の仕事ぶりを丹念に(おそらくかなり取材されたのだと思う)描いた篁はるか「見習」、ドア越しに聞こえた子供の声が世界を二分する大熊宏俊「音」など。
 岡本俊弥「マカオ」は、シンギュラリティの起こり方(地方都市が企画したカジノで生じる)に不思議なリアリティがある。できればその後の世界もちらっと見せて欲しいところだ。
 和田宜久「リンちゃんの鉄塔」には注目した。感電に対して不思議な耐性をもつ幼年期の友達を描いている。実は、これを読んでいて、上の記事に書いた有馬頼義の短篇を思い出したのである。大人になって、コンセントでビリッと感電した瞬間に忌まわしい記憶が蘇るのかなと想像したのだが、別の話であった。しかし秀作と思う。
 全体に「異色作家短編集」のころの雰囲気がある。
 本書はこちらで読めます。

11月28日(火) 大阪→播州龍野
 小春日和である。
 朝の通勤ラッシュが終わった頃に出て、播州龍野へ移動する。
 タイムマシン関係の雑事あれこれ。
 昼、1時間ほど龍野公園を散策する。紅葉と黄葉。ただ、今年の紅葉はいまひとつである。
  *  *
 オータムフェスは終わり、人は少ない。老人ばっかり。
 たちまち暮れる。
 本日は播州龍野泊。
 大阪から持って来た食材でひとり鍋。ビール、龍力。
 あと、イトメンのチャンポンめんをぶち込んだら、これが意外にいけるのであった。
 楽しきかな独酌。

11月29日(水) 播州龍野→大阪
 播州龍野にて熟睡、午前6時に目覚めれば、キタがミサイル発射、日馬富士が引退表明のニュース。特に驚きもせず。
 雑事あれこれ。
 昼前にクルマを龍野東端のまるさん自動車へ車検に出す。
 この1年、800キロくらいしか走ってない。放棄するか迷うところだが、こちらでタイムマシン業をやってる限り、クルマなしでは困るし……あと2年とするか。
 相棒の某くんに本竜野まで運んでもらい、姫新線で姫路へ。
 昼は、いつもの灘菊が定休なので、小溝筋の立ち飲み屋で、ヒネポン、200円の粕汁で八重垣熱燗を一杯。
  *
 悪くはないが、酒麹の料理は灘菊には及ばないなあ。
 夕刻近くに帰阪。

11月30日(木) 穴蔵
 アタマ働かず、体動かすのも面倒で、穴蔵にてボケーーーーッとタドコロ状態に陥る。
 いかん。
 午後すこし動く。近くの郵便局とATMへ行きタイムマシン関係の月次の処理など。
 たちまち暮れる。
 専属料理人に数皿並べてもらってビール、安ワイン少しばかり。
 無為に過ごした11月が終わる。嗚呼。


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