『マッドサイエンティストの手帳』598

●マッドサイエンティスト日記(2015年2月前半)


主な事件
 ・YOUCHAN個展@アラビク(1日)
 ・播州龍野いたりきたり
 ・滝川雅弘カルテット@845(6日)
 ・N/Y(15日)


2月1日(日) 穴蔵/ウロウロ
 3時前に目が覚めた。
 きちんと机に向かう。
 午前5時からテレビでNHKニュースを見ていたら、5時11分にとつぜん「さきほど後藤健二氏殺害の動画がネットに投稿された」と報じはじめた。
 どんな動画か説明があいまいなのでネットで確認する(中略)これは間違いあるまい。
 仕事継続の気力が萎える。
 午後、運動不足だし、気分転換のため、散歩に出る。
 南東方向コース。
 中崎町界隈をウロウロ。
 「YOUCHAN個展〜大阪冬の陣」をやってるのを思い出して書肆アラビクに寄る。
  *  *
 2月16日まで。作家在廊は2/14,15。
 前回からもう2年になるのか。
 その間に画集「TURQUOISE」刊行、色々な表紙の作成など、活躍してはるのだ。
 タカセ市場に寄り、「神の河」買って帰館。
 夜は、若布の小鉢、きんぴら、野菜煮浸し、肉じゃがなどでビール、湯割り。
 仕上げに鯖寿司。
  *
 「神の河」に、昨日、某新鋭SF作家からいただいた故郷の名産品「柚子酢」を少しばかり入れる。
 白っぽくなり、柚子の香が立ち上る。うまーーーーっ。
 徳島の柚子酢に栄光あれ。

2月2日(月) 穴蔵
 午前3時前に目が覚める。
 どうも早起き傾向が進んでいるような。
 ちょっと夜遊びする方がいいのだろうか。
 終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。

2月3日(火) 穴蔵/ウロウロ
 わ、目覚めれば午前2時。
 朝までまじめに仕事をするのであった。
 午前6時にビール1缶。
 3時間ほど睡眠。
 午後外出。
 梅田で先週(先月末)から先送りしていた月次の処理事項を片づけ、地下鉄で西長堀の中央図書館へ。
 書庫資料を出してもらう間、CDやDVDの棚を覗いていたら、DVD『特撰!!米朝落語全集』が2枚ある。
 ええっ!と思って調べてみたら、全30巻、全部あるのだった(ほとんど貸出中か予約あり)。何ちゅうことするねんな。
 書籍に限らず、やはり一定期間、貸出禁止にすべきではないか。
 運動不足なので、帰路は散歩することにする。
 阿波座〜靫公園西端を通過、かんべ事務所が近いが、本日はパスさせていただく。
 この周辺、小松左京師匠の生家、谷甲州氏の生家?母校(中学)などSF史跡が多い。
 仕事でなじみの化繊検査協会は「カケンテストセンター」と名前を変えたのか。
 ちょっと東の「篁」に寄って自転車マークのチリワインを購入する。
 江戸堀の路地にうまそうなうどん屋を発見するが本日はパス。
 肥後橋から地下鉄で帰館。
 7,767歩になった。
 夜はスペアリブ、サラダ、普通のパスタなど。
  *
 チリワインを少しばかり。
 21時頃になると急に眠くなる。
 明日から事情があって播州龍野行き。
 睡眠パターンを正常化することにしよう。

2月4日(水) 大阪→播州龍野
 わ、午前1時に目が覚めてしまった。
 明け方まで本を読んですごす。
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 相棒の某くん出張のためタイムマシン格納庫に詰める。
 あれやこれやで、たちまち夕刻となる。
 揖保川沿いに30分ほど散歩。
 立春である。
  *
 暖かく、早春の気配漂う。
 ということで、夜は一人酒盛。
 大阪から持ってきた食材(牡蠣など)を鍋にぶち込んで、ビール、龍力熱燗。よろしいなあ。
 早寝するのである。

2月5日(木) 播州龍野→大阪
 午後9時に寝て午前4時に目がさめる。
 睡眠時間、正常になったような。
 ストーブをつけたままだから暖かいが、6時に1階の居間に降りたら室温6℃。
 まあ、ましな方であろう。
 朝食その他の儀式のあと、タイムマシン格納庫にて見張り番。
 雑事あれこれ。
 肝心の用件が来週に延期となる。
 今週中は播州龍野の予定を変更、午後の電車でいったん帰阪することに。
 姫新線で姫路へ。
 ちょっと遅めの昼食。
 新生軒、赤心は休みである。
 駅ビル地下の「石挽蕎麦御座候」にて重ねせいろをいただく。
  *
 午後、急激に寒くなったので、右側に見えるようなのもいただく。
 やはりここは近畿圏随一であろう。
 新快速で夕刻に帰阪。

2月6日(金) 滝川雅弘4@845/ああデフランコ
 終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。
 夕刻に這い出て、地下鉄で難波へ。
 久しぶりに「845」で滝川雅弘カルテットのライブを聴く。
  *
 滝川雅弘(cl) 笹井真紀子(p) 光岡尚紀(b) 東敏之(ds)
 滝川さんのMCで昨年末にバディ・デフランコが死去したことを知る。
 (新聞をほとんど読まないという事情はあるものの)まったく知らなかった。
 滝川さんも、ご遺族から北村英治さんに知らせがあり、北村さん経由で知ったという。大ニュース(※)なのだがなあ。
 2ステージ目には「For Eiji」などデフランコの曲を数曲。
 これで、デフランコを継承するプレイヤー(広義にはクラでバップを演るというか、狭義にはパーカーをクラで吹くというか)は世界中でも滝川雅弘ひとりになってしまうのではないか。
 寂しいことである。
※訃報
 バディ・デフランコ氏(米ジャズクラリネット奏者)
 24日、米フロリダ州パナマシティーの病院で死去、91歳。AP通信などが家族の話として報じた。近年は健康状態が悪化していた。
 (2014.12.27)

2月7日(土) 穴蔵
 デフランコに続いて、今度は中山康樹氏の訃報。
 1月28日、悪性リンパ腫で死去、62歳……早すぎるぜ。
 マイスル関係の著作にはずいぶん教えられたし、中山さんの本を読むと(ふだんはそんなに聴くわけではないのに)不思議にマイルスが聴きたくなる、文章にそんな力があった。なんといってもすばらしいのが『スイングジャ-ナル青春録』だ。特に大阪篇には知っている人や店が続出、しかし、中山さんとは(たぶん同じ店やコンサート会場にいたことが何度かあるはずだが)面識のないままであった。
 終日穴蔵。
 デフランコのVerve盤、マイルスのマラソン・セッションなどを流しつつ、ボケーーーッと過ごす。
 夜のニュース。
 渋谷のマンションに、探偵事務所の男が拳銃を構えて「立てこもり」、屋上から特殊部隊が降下・突入する大騒ぎ。
 ハードボイルドというより、ミッキー・スピレーンの世界みたいで面白いが、どうやら「自宅」のベランダで騒いでいるだけのようで、こんな場合「立てこもり」というのかなあ。
 ゴルフバックやプリンターなど、自分の持ち物を投げ捨てているだけのようだし、拳銃は一目でおもちゃとわかるし。
 これで特殊部隊が出動するのなら、わが集合住宅のこの事件はどうなのよ。
 紀の川市の小学生殺人に比べると、「面白い」事件であるのは確かだけど。

2月8日(日) 穴蔵
 朝から小雨。
 寒いのであった。
 終日穴蔵。少しは仕事もするのであった。
 短い原稿だが、5枚ほどに10時間以上。まあ、昔からそんなものか。
 たちまち夕刻となる。
 専属料理人に色々並べてもらって晩酌。
  *
 豚・たまねぎ・ほうれん草の炒めたん、サラダ、茄子とインゲンのたいたんの妖女など。
 神の河湯割に柚子酢を少したらしたん。
 たまにはこういう地味なメニューがいい。

2月9日(月) 大阪→播州龍野
 この冬いちばんの冷え込みという。
 さすがに未明に出かけるのはつらく、通勤ラッシュの終わった頃の電車で播州龍野へ移動する。
 米原方面の雪で新快速は遅延。ちょうど15分の遅れだから、おれにとってはダイヤどおりなんだけど、お詫びのアナウンスがうるさくてたまらない。
 ということで昼前に播州龍野着。
 タイムマシン格納庫にて見張り番。
 裏は姫新線の鉄路で、キハ122系が通り過ぎていく。
  *
 空には冬の雲。センチメンタルになるぜ。
 たちまち夕刻となり、食品スーパー経由で実家に帰る。
 外は1℃、居間は4℃。
 石油ストーブ全開にして一人酒盛。
 出来合いのちゃんこ鍋380円にミニ豆腐を追加、ビール、龍力熱燗、うどんぶち込んで仕上げ。
 まず(漢字では「不味」)。
 早寝するのである。

2月10日(火) 播州龍野→大阪
 播州龍野にて午前6時に起きる。
 室温は(終夜ストーブつけたままで)18℃、外は-1℃。庭の手水鉢には氷が張っている。
 100畳にひとり、台所や居間やトイレに行くにも厚着せねばならず、たいへんである。
 9時前から本日もタイムマシン格納庫にて見張り番。
 事務所にエアコンあるものの、じっとしていると足先から冷えてくる。
 雑事あれやこれや処理、諸般の事情で午後に帰阪することにする。
 姫新線で姫路へ。
 わ、風花が舞う。
 遅めのランチ。本日は、小溝筋の居酒屋「かっぱ」で日替わり定食。
  *
 620円! 刺身、だしまき、小鉢が4つ。いずれも美味。酒蔵の仕込み水でつくった豆腐が絶品である。
 ここは「灘菊」のアンテナショップで、料理にも麹か生かされている。味噌汁もたまらんうまさ。
 灘菊は龍力とならぶ播州の銘酒。手柄山の下にある。龍力に「米のささやき」があるように、灘菊には大吟醸「きくのささやき」がある。
 ともかく寒いし、この小鉢群、とうぜんながら灘菊熱燗もいただく。うまーーーっ。
 播州の銘酒・灘菊に栄光あれ。
 夕刻の新快速で帰阪。
 大阪駅を降りると、まるで春風が吹いているような……

2月11日(水) 穴蔵
 穴蔵にてボケーーーーッと過ごす。
 世間も休日だからいいか。
 夕刻に近い午後、梅田一回り。
 寒波は去ったようだが、鼻がムズムズしはじめた。
 帰宅して調べるとPM2.5が40μg/m3を超えているではないか。
 (此花区役所のデータ、17時。北区に観測地点がないので、ここを参考にしている)
 北京の連中、たいした生命力だなあ。10年ほどしたらバタバタ死ぬんだろうけど。

2月12日(木) 穴蔵
 終日穴蔵。
 不調である。
 寝そべって本を読んでたら夕刻になる。
 夕刻のニュース。
 ナッツ・リターンの趙顕娥に懲役1年の実刑判決。韓国、盛り上がってるだろうな。
 控訴審(というのかな、かの国では)で執行猶予になるんだろうけど。
 韓国の裁判所の大衆迎合が気になるところ。
 夜、専属料理人に数皿並べてもらって晩酌。
 と、テレビニュースのあと、とつぜん吉田類なるもの(先日批判的意見を述べた)が出てきた。
 民放かと思ったら、NHKの「クローズアップ現代」が居酒屋を特集している。居酒屋がブームで、行列のできる居酒屋(居酒屋は行列するものか?!)が紹介されたり、大学のセンセイが出てきて浅薄な社会学的考察を披露したり、国谷裕子ほどの聡明な人が居酒屋は「料亭みたいに敷居が高くないですからね」などと間違った発言したり、NHK、どこかおかしくなってるぜ。

2月13日(金) 穴蔵
 朝、近所の某医院にて定期検診。正常なり。
 あとは終日穴蔵。
 体調はいいのに、これといった仕事はできず、アタマが悪くなっているとしか思えない。嗚呼。
 アホになっていると自覚できるから、まだボケてはいないということか。
 午後、雪が降ったり急に晴れたり、ややこしい日である。
 たちまち夕刻。
 専属料理人に、ポークソテー、サラダ、ポテトの煮込んだんなど並べてもらったのでビール、安ワイン少しばかり。
  *
 柚子酢を使った鰯のマリネ風がなかなか。
 徳島の柚子酢に栄光あれ。
 あ、オキシタケヒコ『筐底のエルピス』(ガガガ文庫)にも栄光あれ。

2月14日(土) 穴蔵/ウロウロ
 確定申告の時期である。
 朝から集中して書類作成。
 e-Taxがお勧めらしいが、いまさら。表計算のフォームを作っているから、転記がいちばん効率的である。
 2時間半ほどで完了。還付金で、今年も9月にalaの森山威男ジャズナイトへ行けることになった。
 楽しみなことである。
 運動不足なので歩くことにする。
 昼前に出て、梅田へ。
 阪神周辺、建て替えと電車のホーム拡張などで、急にややこしいことになっている。
 スナックパークが来週で閉鎖、「にわか常連」が列をなしている。
 「松葉」も「ぶらり横町」も同様。弥七に行列するのに似た連中が、松葉にも七福神にも。
 ぶらり横町はある短編の舞台にした(2020年頃を想定)ことがあり、今のまま残してほしいとは思うが、潮時であろうな。客層が変わってしまったのだから。
 あとは東コース、天満方向へ。
 田舎家食堂にて普通の昼飯を食す。
 商店街をうろうろ。
  *
 北区の公園にて。
 春は名のみ、風の寒さは覚えるが、諸木の芽吹く気配が漂う。
 センチメンタルになるぜ。
 中崎町を抜けて帰館。
 あ、帰ってから気づいたが、今日は書肆アラビクにYouchan在廊の日であったか。
 作品は先日見せていただいたことだから。
 おっ、本日は10,667歩。
 ビールがうまい。

2月15日(日) N/Y
 世間は休日である。
 おれもつきあって、ボケーーーッと過ごすことにする。
 とはいえ、某資料を何冊か読む。
 終日穴蔵。
 Amazonから「N/Y」が届いた。
 夜、専属料理人にココット、パスタ、サラダなど並べてもらい、キャンティ飲みつつ一聴。
  *
 新垣隆(p)と吉田隆一(bs)のデュオ。
 「天才」(神山典士『ペテン師と天才』)と黒い大仏を吹く(田中啓文『聴いたら危険!ジャズ入門』)「鬼才」の激突。
 プロデュースしたのがジャズ評論家の村井康司氏。新垣氏がジャズファンと村井氏が知って、偶然も含めた不思議な流れでこのデュオが実現したという。
 新垣氏は、例の「事件」では現代音楽の作曲家と報じられたが、これを聴くと演奏家として(特にインプロビゼーションで)驚くべき技量の持ち主であることがわかる。一方、吉田隆一氏、おれはCD『霞』を聴き、昨年末にGATOS Meetingのライブを聴いただけだが、バリトン1本で重低音から高音域まで多彩な音色で吹きまくるのに驚嘆した。
 12曲。曲想多彩。共同での作曲(オリジナル)あり、スタンダードあり、どの曲も面白く、「野生の夢」(水見稜へのオマージュ/吉田曲)、「秋刀魚」(新垣曲)、「Stage Fright」(共同作曲)などにそれぞれの個性が出ている。そして何といっても「皆勤の徒」のリズムは異彩を放っている。最後の武満徹曲に至っては感涙もの。
 ジャズの範疇、スタイルとしてはフリージャズになるのかもしれないが、新垣隆のピアノにはジャズのノリとは違い、研ぎ澄まされた切っ先を突きつけられるような緊張感があり、これに対峙するバリトンも変幻自在。たいしたものだ。
 ちょっとわがままをいえば、アイラーの「ゴースト」も演ってほしかったけどね。
 これはジャズにとどまらずジャンルを超えた本年度最大の注目盤であろう。
 異色の演奏家をジャズが迎え入れたことを喜びたい。


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