HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』72

●マッドサイエンティスト日記(1998年8月後半)

主な事件
 ライブ3回!
 ・谷口英治グラマシーファイブ・リバイバルズ
 ・サウスサイドバンド
 ・中村葉子CD発売記念コンサート

1998年

8月16日(日)
 サンケイホールで米朝一門会が開かれている。桂歌之助師匠の出番の日だが、暑くて出かける気分にならない。終日部屋に篭もる。……と、なにやら長いFAXが入ってくる。不気味な日である。連休最終日というのは憂鬱なことが多い。

8月17日(月)
 ボンクラサラリーマン生活。世間はまだ休みのところも結構あるようだ。

8月18日(火)
 本町中心に天満(法務局)から特許事務所(京町堀)など東西に移動する用件が多く、自転車で出勤。土日なら快適だが、平日は人通りが多くて走りにくい。夕方、アトソン大阪分室へも寄る。アトソンのカークことI氏は不在。かわりにI常務が在室。カークくんがダイエット中につき、ビールが切れているという。わざわざ近所のコンビニから缶ビールを買ってきてもらい恐縮。しかし、熱気の中を自転車でうろうろしていたから、たちまち数本。
 クリントンが「不適切な関係」を認めたと夕刊がいっせいに報道。全部同じ表記である。オリジナルの発言はどうだったのか。
 夜9時にテレビで確認するが、全然聞き取れない。わが家の「女中」は「……is't proper」といったのだろうというが。テレビも「不適切な関係」という日本語しかいわない。一種の報道協定だろうか。
 気になってインターネットでニューヨークタイムズの記事を確認。
 「I did have a relationship with Ms.Lewinsky that was not appropriate.In fact it was wrong.」といったらしい。「不適切な関係」という訳語で統一されるのは適切とは思えないがなあ。
 試訳「関係はあったがモノにしたわけじゃない、実際のところ、まずかったよなあ」

8月19日(水)
 ボンクラサラリーマン生活。

8月20日(木)
 早朝のひかりで上京、横浜付近ウロウロのあと、午後、新横浜で横田順彌氏と会う。すれ違いのことが多かったので久しぶりである。2時間ほど雑談。元気がないと聞いていたのだが、表情は明るく、ほとんどバカ話に終始。SFの構想などが主。明治のノンフィクションが多いが、小説を書いてほしいなあ。状況は厳しいようだけど。
      off

 日本橋界隈ウロウロ、結局午後8時頃までかかる。
 夕方、中野晴行氏と会う予定だったのが、時間がずれ込んだので、谷口英治出演の浅草HUBで会うことにする。
 中野晴行さんとはジヤズや落語など趣味が妙に重なると思っていたら、なんと、ぼくの中学高校じだいの親友・黒田くんの甥っ子であることが先日判明、まったく不思議な因縁なのである。このことを書き出すと長いので、回を改める。
 手塚治虫について色々聞きながら、谷口英治グラマシーファイブ・リバイバルを2ステージ。「A列車」のアレンジが素晴らしい。「ホップステッブジャンプ」アーティショーの曲、1コーラスに3回リズムセクションが黙るという珍曲快演。
 やはりクラリネット奏者である谷口夫人・千恵子さんが見えていて挨拶。記念写真を撮ってもらう。

  off off
写真は左が中野氏。右の写真、谷口夫妻の間にぼくが入っているが、おふたりの仲を裂く意図は毛頭ない。3人で写真を撮ると真ん中の人物がいちばん先に死ぬという迷信を仲野さんが言い出したため、谷口さんに死なれては困るし、年齢らかいっていちばん先はぼくだからと、こういう配列になった。

8月21日(金)
 朝のニュースでアメリカのテロ報復攻撃開始を伝える。スキャンダル隠しに戦争というのはクリントンの常套手段のようである。
 午前中、日本橋付近ウロウロ。静岡の予定が変更になったため、午後すぐに帰阪。車中、芦辺拓、有栖川有栖、二階堂黎人の各氏編集による「鮎川哲也読本」を読む。芦辺拓氏のトリック分類が凄い。それに「死者を笞打て」が懐かしい。

8月22日(土)
 防水工事の検査のためにマンション屋上にあがる以外、終日机。

8月23日(日)
 雑用のやり残しを思い出して午前中本町の会社。
 帰宅後、行方不明だったソリトン購読者リストを書斎で「発掘」……気がかりだった不明の20数セットを中央郵便局から発送。やっと肩の荷が降りる。

8月24日(月)
 ボンクラサラリーマン生活。

8月25日(火)
 夜、サントリー5へ。最終火曜日だサウスサイドバンド出演の日。
 後の2ステージを聴く。リーダーでクラリネットの吉川裕之さん、この日は珍しくテナーサックスも用意している。この前はバスクラを吹いていた。最近はマルチプレイヤーである。
 「先日、谷口英治を聴いてきた」と伝えたら、凄いノリである。「ハイソサイティ・マーチ」なんと倍テンポでクラパートを吹く。「小さな花」もいい。……「谷口英治の名前を聞いたら、張り切らざるをえないよ」と吉川。ステージの合間に記念撮影。お互い学生最後の年あたりからの知り合いだから、もう30年になる。額が広くなったものである。

  off off

 上の写真にちなんで「シャイン」をリクエストしたら、最後に軽快に演奏してくれた。

8月26日(水)
 和歌山の砒素入りカレー事件。カレーの前に2名の男性が「民家」で砒素を飲まされていたらしい事件、急展開で、保険金詐欺の様相。この「民家」の「住人」で「第三者」というのが、今まで報道された「走査線上の男女」で「渦中の住人」なら、今後は「疑惑の夫妻」になるのだろう。人権派はまだ加勢に行かないのかなあ。早く「容疑者」までもっていってくれないと、一般名詞多用の記事ばかりで、読みにくくてしかたがない。
 和歌山へ出張した人物に聞くと、駅前で月光仮面が演説しているらしい。
 夜、ミナミ、トリイホールへ。
 中村葉子ピアノトリオのコンサート。CD「GAILISH」発売記念。某タクマの重役・若村さんはじめ、6名で行く。トリイホールちょうどいっぱいになる。最低のライブハウス「ロイヤルホース」でのコンサートは1曲も聴けなかったので、本日はじめて聴いたことになる。
 中村葉子さんは美人ピアニストであるが、米朝師匠のお茶子を務めた影響か、しゃべりが大阪弁を交えてギャグが多く、それはそれでいいのだが、ピアノの雰囲気とは別物のような気もする。ピアノは繊細にして華麗。トリイホールはどちらかといえば「落語」向きのホールだが、スタンウェイの響きがとてもいい。

      off

 終了後、近くの焼き肉屋へタクマ様ご一行といっしょにゾロゾロ移動。キムチ山盛りの冷麺で真露を飲む。繊細なピアノのあとにこれ、実に大阪的実利主義である。酔い、急激に回るなりのこと。

8月27日(木)
 夕方までボンクラサラリーマン。が、暑さと昨日の真露飲み過ぎのせいか、汗がダラダラ体ジトジト頭モーロー状態に陥り、午後4時過ぎに来たく、そのまま横になる。

8月28日(金)
 なんとか体力戻る。つづけてライブ3回という贅沢のたたりであろうか。

8月29日(土)
 第37回日本SF大会「カプリコン1」第1日

8月30日(日)
 第37回日本SF大会「カプリコン1」第2日

8月31日(月)
 SF大会疲れで虚脱状態、ボンクラサラリーマンのまま今年の夏は終わる。


『マッドサイエンティストの手帳』メニューヘ [次回へ] [前回へ]

HomePage  自己紹介
作品リスト・クロニカル  書庫の片隅
SF同人誌「SOLITON」