HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』57

●マッドサイエンティスト日記(1998年3月前半)

主な事件
 ・今月も谷口英治が聴けた
 ・校長先生のストリップ見物考
 ・「メディアと小説」というパネル

1998年
3月1日(日)
 世間は休日なれど、自転車で会社へ。御堂筋、またハーフマラソンとかで黄色いジャンパーのスタッフが多い。マラソンが多いなあ。わしゃ仕事、浪速はマラソン。オリンピック当落判定までこれかと思うとうんざりする。オリンピックだけは……その他の騒がしいこともだが……きてほしくないなあ。2008年には生きているかどうかは不明だが、もし大阪開催なら、どこかへ越そう。
 雑用昼まで。
 帰路、梅田のtutayaで「オルタカルチャー」を見つけて購入、1600円。小谷真理が山形浩生を提訴した事件の訴因となった出版物である。で、帰宅して扉を見たら、これ、全部インターネットで読めるのではないか。オルタカルチャー。さっそく接続、問題になった記事はもう削除してある。新聞記事を読んだ感想では被告に勝ち目なしであったが、ホームページを見るとすでに白旗。あとは条件闘争か。判例的興味がゼロとなったので、この話題はもうおしまい。

3月2日(月)〜5日(木)
 胃袋穴あき寸前の仕事が続く。
 書けない。
 ……役職上書きたくても「書けない」という意味と、そんなことが多くてSFが「書けない」のダブルミーニングである。

3月6日(金)
 ソリトンの有力メンバーのひとり、金刺裕之、ハンドル「kin」さんが来阪、夕方から本間祐氏、いからし氏と歓迎ミニオフ。
 kinさんは奇想と落ち着いた文体のバランスが面白い作者なのだが、ご本人は「文体」から連想される人格の見た。物静かな人である。同系列と思われる本間さんが1時間ほどで中座したため、あとは飲んべえのふたりに囲まれるかたちとなったkinさん、本来期待した議論にならなかったかもしれないがご容赦を。
 ホテル阪神地下の「新喜楽」かも鍋から、例によってサントリー5へ。……この際、写真公開。左が「いんらし」氏。なんだかローランド・カークに似ている、視力はいいが。左がkinさん。まじめそうでしょ。うしろでタバコを買っているのがいからし氏。
 off  off

 帰路、3人で記念のプリクラ。ぼくはプリクラは初体験である。コラムに書く必要があってぼくのリクエスト。冷酷な検事ふたりに連行される粗暴犯のおもむき。プリクラシールはここにアップできないが、上の写真から想像いただきたい。
 いからし氏、梅田のストリート・ミュージシャンに大枚1000円はずんで「セントトーマス」をリクエスト。なかなかの熱演であった。
 「爆音族?」というのかな、週末に現れる超重低音を響かせる改造車諸君とパトのイタチごっこを見学しつつ阪急梅田あたりで解散。

3月7日(土)
 二日酔いである。朝、お茶漬けを食べてまた寝る。昼前に復活。自転車で会社へ。
 が、スタミナ続かず、午後3時過ぎに終了、帰宅。

3月8日(日)
 快晴である。世間は行楽びよりなれど、自転車で会社へサイクリング。
 昨日のやり残し、10時〜昼過ぎまで。
 午後、帰宅。
 原稿書けないなあ。頭が完全に「社畜」だ。

3月9日(月)
 楽しきかな社畜生活。

3月10日(火)
 18:30大融寺へ。桂文我独演会。「らくだ」が面白い。文我さんの顔は「かわいい」。これが「熊五郎」をやると無理が生じるが、善人「クズ屋」がいい。どちらに視点を置くかで、この噺、ずいずんちがう。
 熊側……ざこば、雀三郎……亡くなった六代目  紙クズ屋……枝雀、文我、……米朝師匠もこちらだろうな
 終了後、アサヒネット落語部屋の仲間、「法螺を福海」「ままよ」氏とサントリー5へ。藤森省二(ピアノ)、池田公信(コルネット)のデュオ。色々落語の話をしつつトラッド・ジャズを聴く……こんな贅沢してていいのかしらん。最後にリクエストで「柳も泣いている」を聴く。感涙。

3月11日(水)
 社畜生活。

3月12日(木)
 早朝のひかりで上京。東京は雨。
 日本橋界隈でゴソゴソ。虎ノ門方面コソコソ。小網町アトソン堂々。
 夕方、石井紀男さんと神田のウナギ屋で会う。星新一さんの葬儀会場でちらっと顔を合わせただけで長らく話す機会がなかったのである。出版関係のこと色々。厳しい状況であることはいやでも実感できる。
 21時前、浅草HUBへ駆けつける。谷口英治クインテット最終ステージに間に合う。ラプソディ・イン・ブルーのイントロからムーングロウとつなぐ離れ業のようなアドリブあり。そのテクニックに驚嘆するが、これはリクエストが2曲重なったための応急策のようなハプニング。
 ライヴハウスにおけるリクエストというのは、まあ、リクエストした本人には楽しいものだが、ステージ全体のバランスから、無茶な場合もある。リクエストなしで聴きたかった意外な曲が演奏されるのがいちばんうれしい。前々回ここで聴いた時に「鈴懸けの道」が演奏された時がそうだった。
 ……いずれにしても、谷口英治のクラリネットが聴けるだけで幸せな気分になる。長生きしなきゃなあ。
 浅草のビジネスホテル泊。

3月13日(金)
 都内うろうろ、横浜方面セカセカと動いて、夕方から新幹線が混むから早めのひかりに乗る。車中、珍しく「文芸春秋」4月号。ヤメ検・田中森一の記事が抜群に面白い。許永中の保釈金3億円/7人を支払うのだろうか。
 午後6時過ぎに帰宅、荷物を置いて、北浜、「歌之助花舞台」へ。
 歌之助師匠、百噺もう70話まで来た。「替り目」相変わらず、断酒してからの酒飲み噺が出来がいい。
 北浜で、いつものメンバーにサンケイ記者の某氏を交えて22時半まで雑談。
 ……後日判明したことがだ、この時間、神戸・友が丘中学の校長先生、市内のストリップ劇場で野球拳をやったりポラロイド写真を撮っていたのだなあ。13日の金曜日、歌やんの独演会の日だけのことはある。
 だから日頃から落語を聴けといっとるのよ。いわゆる「世間智」は反面教師を含めてすべて落語の中にある。落語を聴いている限り、おおきく道を踏み外す心配はない。
 友ヶ丘中学の校長先生、立派な記者会見をやったあと、そのままの格好で大阪の「小屋」へ行っとるじゃないの。「百年目」を聴いていたら、こんなドジ踏みませんわね。
 この3月末で定年という、その直前のドジ。まさに百年目である。

3月14日(土)
 世間は休日なれど、出張中にたまった雑件処理のため出社。
 昼前までに片づけて、今度は長男と京都へ。長男とふたりでうろうろするのは何年ぶりであろう。夕方帰宅。
 午後6時、天満「エルおおさか」へ。大阪シナリオ学校公開講座パネルディスカッション「メデアと小説」。菅浩江、本間祐、堀晃の3名で。
  off

 会場に草上仁、江坂遊、高井信、牧野修、田中啓文の各氏ら。真殿剛、児島康子さんらネットメンバーも。終了後、近くの居酒屋で23時近くまで。
 よく動いた日である。

3月15日(日)
 さすがに疲労がたまって、午前中惰眠。
 午後、梅田・大丸ミュージアムへ。「安野光雅の世界展」を見る。
 ドイツ、イギリス、イタリアのスケッチ紀行のうち、イギリスの色彩が断然いい。


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