HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』136

●マッドサイエンティスト日記(1999年12月後半)


主な事件
 ・Y2K対策ダラダラ。
 ・今年のジャズ・ライブ聴き納めはラスカルズとレッドシェーカーズ。
 ・ついに「2000年」に突入!

1999年

12月16日(木)
 ボンクラ・サラリーマン略してボンサラ、いよいよ1999年最終コーナーに突入。むろん誠実に手抜き仕事あるのみ。
 夜、「専属料理人」が「忘年会」とか。ボンクラ息子ともに「外食」とかで、ひとり夕食。こんな日が毎晩続かないものだろうか。……衛星放送で「隠し砦の三悪人」を久しぶりに見る。テレビを見ること自体久しぶりであるなあ。

12月17日(金)
 ボンサラ、ひたすら誠実に仕事。つまらん日である。
 移動の車中、森青花『BH85』を読む。傑作である。

12月18日(土)
 世間休日なれど雑用あり出社。ボンクラゆえ処理速度が遅く、自業自得、身から出た錆、いたしかたないところである。
 2000年問題について対策用チェックリストを作成。ないのは単一乾電池くらいのようである。基本線は2週間、停電断水断ガスでも生き延びられるというところ。

12月19日(日)
 朝、誰も起床する気配なく、ひとりで朝食。
 終日雑読。昼、梅田へ自転車で出る。北村英治とテディ・ウィルソンのCDなど買う。「君去りし後」以外のがあるとは知らなかった。

12月20日(月)
 ボンサラ終日誠実に手抜き仕事。つまらん日である。
 帰りに単一の乾電池16個を購入、ディスカウント店、単一はこれで「売り切れ」である。……ラジカセ用8個。懐中電灯用4個。予備4個(時計など)。

12月21日(火)
 午前4時、朝刊のトップが「横山エロタコ知事の辞任表明」……昨夜から箕面の循環器センターに入院中。いいタイミングで入院加療を必要とする病気になれるものよ。不安定狭心症? 10年ほど前の参議院選で「女性秘書」との仲をすっぱ抜かれたときには、「だいたいボクは糖尿病でアッチのほうはアカンのや」と発言、「ウソをつけ!」の声が挙がったものであるが、糖尿は直ったのかなあ。
 エロタコはともかく、「小汀良久」の死亡記事がある。
 小汀良久氏(おばま・よしひさ=新泉社代表取締役、前出版流通対策協議会会長)。戦前の新聞人、桐生悠々の著作などを世に出すとともに、小出版社の立場から、出版流通の改善や再販制維持を長年主張してきた。出版の自由を守ろうと、90年、サルマン・ラシュディの小説「悪魔の詩」日本語版を編集、発売した。……と、公式的な略歴はこうなっているが、ぼくにとっては「太陽風交点」事件の控訴審で早川側の証人として証言した人物としての認識しかない。控訴審には結局一度も出ることがなかったので、美作太郎氏も小汀良久も、ともに顔を合わせることがないままになった。が、はっきり書いておこう。美作太郎氏への感謝は終生忘れないし、小汀良久への恨みも絶対に忘れない。面と向かって反論できる機会がなくなったのがくやしい。むろん今岡清と五十嵐敬喜への怨念はボルテージがあがるばかりである。……来年は「宇宙法廷ノート」を再開しなきゃなあ。この事件に関する関係者が死んでいくのはつらい。むろん、生きているうちに言っておきたいことがあるからである。

12月22日(水)
 午前4時。朝刊一面に死亡事件ふたつ。「宇治市の小学校で小学生刺殺、犯人は小中学生の二人組?」と「被爆死」。扱いは、サンケイは小学生トップ、朝日は被爆トップ。
 現時点ではどちらが重大ニュースか判定できない。が、「被爆死」は事故発生時からもうわかっていたことである。意外性ではサンケイの判断が正しいのではないか。
 ボンサラ誠実に仕事。つまらん日である。  と思っていたら、夕刊には「吹田で小2女子の誘拐騒ぎ」。金は取らずに子供は返す。グリコ似の騒ぎ。新阪急ホテルまで来てたのだ。この前後の時間、1階の喫茶室でお茶飲んでなかったかしらん。心配になる。……忘れ物だと思っても、絶対に持ち主のわからん荷物には手を出さないことだな。

12月23日(木)
 ええっと、誰かの誕生日で休日らしいが、実態は「年賀状作成日」ではなかろうか。330枚を宛名も含めて2時間ちょっとで作成投函。
 夜、NHKで枝雀師匠の追悼番組「夢のような うつつのような」を見る。落語は「夢たまご」「宿替え」、前者が「晩年の新作」後者が「トチリをギャグにしてしまう件り」を見せたいということであろう。色々な人がコメントしているが新味なし。生理的に大嫌いな小朝のコメントが意外に的確。「眼高手低が芸人の常で、その落差が精進につながるのだが、枝雀師匠においてはこの落差が普通ではなかった」という。(もっと長いが要約すればそういうことであろう)多少リップサービスがあるものの、質的な差をいっているのであって、決して誉めてはいなかった。なかなかやるなあ。といって小朝の落語を聴きたいわけではないが。

12月24日(金)
 関西の大事件、犯人が捕まらんなあ。
 ボンサラ、誠実に仕事……と、ややこしい事態が発生、年末というのにドタバタと動かめばならぬの気配。来週の予定がややこしくなる。

12月25日(土)
 世間休日なれど昨日のゴタゴタのつづきがあって出社。結局、来週上京である。帰省ラッシュに重ならねばいいが。
 午後、かんべむさし氏の事務所で1時間ほど雑談。
 15時帰宅。新年(1月3日)の某紙用のごく短いコラム、「Y2K」についてだが、どんな展開になるのかわからないので、「無事」「ちょっと混乱」「大混乱」の3バージョンを書いてFAX。
 夜、形式的に鶏とワイン……このパターン、もう飽きたのだけどなあ。
 午後9時過ぎから、「専属料理人」とサントリー5へ。ニューオリンズ・ラスカルズ本年最後のライブで、超満員。珍しく大まま・野村真子さまも。……30年間、ぜんぜん印象が変わらないなあ。

 off off

 最終ステージ、志賀さんのボーカルに合わせてみんなで「サイレント・ナイト」を歌う。そして河合さんの切々たる「バーガンディ・ストリート・ブルース」。最後は……年間最多リクエストは「アイスクリーム」だったそうだが、来年への期待をこめて「世界は日の出を待っている」で賑やかに終わった。

12月26日(日)
 早朝の電車で播州龍野の実家へ。
 正月休みは自宅書斎に籠もる計画なので雑用片づけのため。
 2000年問題、こちらは母親ひとりだが、ガスはプロパン、灯油はドラム缶にあり、米と野菜は心配なし、最悪の場合「井戸」もあるから、まあ大丈夫であろう。
 夕方帰阪。
 夜、テレビで遠藤周作をモデルとする「夫の約束」30分ほど見て切る。子役があまりにもひどくて観てられない。竹中直人が「お笑いスター誕生」で遠藤周作の顔面模写をやったビデオはどこかに保管してあるはずだが、出てこない。あの顔面模写には遠藤の陰湿な部分が出ていて面白かったのだが、ドラマとなるとそれほどでもないようだ。

12月27日(月)
 先日3バージョン送った「Y2K」コラム、本日が出稿なので、どれを使うか決められないという連絡。正月の様子を見て次週に掲載ということになり、予備で書いていた当たり障りのない方が載ることになった。ああややこし。
 先週発生のヤヤコシ問題で午後上京。
 夜、久しぶりに中野晴行氏と会う。いっしょに浅草方面へ。
 田原町のビジネスホテルにチェックインのあと、これまた久しぶりに浅草HUBへ。
 本日の出演は「レッドシェーカーズ」。たぶん臨時編成バンドと思う。が、そこは実力者揃い。
 筒井政明(tp)、白石幸司(ts,cl)、金子亜利紗(p)、小林真人(b)、八城邦義(ds)
 小林真人氏はもうトラディショナル系ではよく知られた実力派、八城邦義氏は北村英治や花岡詠二グループで何度か聴いている。ブラシ・ワークが抜群にうまい。
 off off

 最終ステージまでスタンダード中心のモダンなスイングを堪能。トランペットの筒井政明さんは「関智」そっくりである……といってもあんまり通じないか。
 小林さん、八城さんに記念撮影をお願いする。われながらミーハーであるなあ。

12月28日(火)
 都内ウロウロののち、昼前に「銀の鈴」で関係者合流、大船へ。
 年末最後の仕事、なんとか無事片づく。宿題も増えてしまったけど。
 夕方の新横浜、予約していたひかりに間に合う。
 これに間に合わなければ、あとは満員で指定席なし。そうなると、こだまで名古屋まで行って、「ラブリー」の森山威男グループのライブに潜り込むしかない。どちらが面白いかわからないが、幸か不幸か間に合ってしまったので、名古屋はそのまま通過。
 午後9時前に帰宅できた。……本日はサントリー5にサウスサイドバントの出番。デキシーで本年度の聴き納めにしようか迷ったが、さすがに疲れていて、入浴とビールを選ぶ。

12月29日(水)
 世間はもう休みのところが多いらしく、地下鉄すいている。
 午前中、通常どおり「誠実に」仕事。午後、机と周辺の整理。
 午後3時以降、適当に帰社ということになっているものの、結局、缶ビールなど飲んで午後6時近くまで。
 ……さあ、書斎生活に入れるか?

12月30日(木)
 午前3時半起床、朝刊を取りに出るとボンクラ息子その2、まだテレビ・ゲームをやっている。嗚呼……。
 昨日までの反動で終日ごろ寝。雑読。いや、雑読ではない、石原藤夫「国際通信の日本史」は精読である。

12月31日(金)
 朝刊に「稽留流産」という見慣れない文字。
 いよいよ1999年最後の日である。
 ホームページの更新を午後5時頃に行って、あとは1月1日の朝に再起動。12時間以上はアクセスしないつもりで準備にかかる。
 午後、自転車で梅田へ。快晴で温かい。たいした人出はなく、おとなしいものである。
 Y2Kの最終チェック。
 わが家の基本線は、
・電気水道ガスが止まった場合、家族が2週間生き延びられる。
・無駄になるものは買わない。
の2点。
 最悪の場合、防寒服で、昼は本を読むか自転車で「見物」、暗くなればMDを聴いていればいい。トイレは淀川べりで野糞である。
 というわけで、新規に購入したのは、乾電池、ミネラルウォーター、ビール1ケース多め、カセットボンベ、保存食。こなんものかな。ふだん消費しているものばかり。洗濯は必要あるまい。1週間くらい着替えなくても平気だ。
 現在午後5時前。あと7時間である。
 あとはCDを聴きながら机に向かう。夜、ワインを飲む。23時を過ぎて起きていれば(たぶん本日は起きているだろう)パソコンを切り、テレビの中継でも見ながら、年が変わる瞬間を待つことする。なにか面白そうなことがあれば自転車で出かけるか。
 気分はやぶれかぶれでGo for broke!

 本年度の御来ページありがとうございました。
 2000年にも無事再開再会できますよう。


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