HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』117

●マッドサイエンティスト日記(1999年8月前半)


主な事件
 ・森山研臨時オフ(大阪)
 ・ホシヅルの代わりにミッキー・バードが大阪へ飛来
 ・とつぜん小松御大に会う
 ・山下洋輔氏、久々のハチソロ
 ・桂枝雀師匠お別れ会
 ・谷甲州氏のデビュー20周年記念パーティ

1999年

8月1日(日)
 休日とはいえ定時午前4時起床、ちょっと空腹を覚えて、自転車で梅田へ。土曜は午前4時まで営業の本屋「tutaya」は閉店直後。アホな青少年が路上にあふれている。
 そのまま帰宅、朝刊を読みながら、冷や奴で缶ビール1個。
 終日、ごろ寝して雑読。

8月2日(月)
 昨日、昼寝のし過ぎで、あまり眠れず、朝まで読んだり起きたり。4時前、朝刊をとろうしたところへボンクラ息子が「朝帰り」……「連れ」までいるのに仰天。2時間ほど仮眠して海水浴へ行くのだという。勝手にしろ。
 7時出社、一見マジメに仕事。
 一種のフェーン現象で、外は猛暑。気温が体温を越す。
 夜、四童バンマスが夏休みで垂水に来ているということで、森山研の臨時オフ。四童バンマス、のりこり専務、やつがれに「専属料理人」、それにどういうわけか特別ゲストで大平まりさん。
 大平さんはソリトン読者で「恒信風」メンバー、なんと広島から新幹線参加である。すごいキャリアの方と判明、長身で髪が長くもの静かで、雰囲気は川上弘美さんに似ていると思ったら、某校後輩とか。……しまった、デジカメ写真を取り忘れた。
 お初天神の「瓢亭」で夕霧そば。ここで広島行き最終ひかりの時間で、大平さんをお見送り。残党でハチへ。1週間後に山下洋輔ソロを控えての前週祭。

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 さすがに眠くなり、おなじみお初天神の境内で記念撮影、午後10時過ぎ解散。
のりこり専務から、このホームページの「日記」はたいへん手間がかかっているのではないかとの質問があった。まちめてアップするからそんな印象になるのだろうか。毎日書いていることのごく一部に過ぎないので、ちょっと方式を改めて、なにかあるたびに逐次アップしてみようかと思う。で、今回、そうしてみた。

8月3日(火)
 ボンクラサラリーマン、誠実に仕事。なんどもいうが、誠実にと自分でいう場合はほとんど手抜きである。東芝しかり。
 まっすぐ帰宅、ビールを飲んでいたら、1階集会室から呼び出し電話。集合住宅の理事会。塗装工事の契約についてチェックしてほしいとの依頼。ぼくは別に法務の専門家ではないのだが……。結局午後9時半まで。ペットのしつけについて、など、つまらん話題ばっかり。
 途中、雷かと思う轟音。淀川の花火大会だという。……天神祭、本日の淀川、近日には水都祭と花火が集中しているが、花火は長いこと見てないなあ。

8月4日(水)
 月末の出張予定など決まり、ついでに両国での「筒井ワールド」公演の申し込み。残念ながらサイン会の25日には行けない。
 宇宙作家クラブで、青山智樹さんの部屋に公開されている梅原克文氏の書簡がちょっと話題になる。
 文章じたいはすごく面白いんだがなあ。
 しかし、「週刊読売」(6.27)の記事や、近日オープンの「宇宙作家クラブ」HPに寄せられた小松左京氏のメッセージからは、どういう読み方をしても導き出せそうにない。
 ぼくは、宇宙作家クラブは「秘密結社」か、などとちょっと前に書いたが、むろん冗談。宇宙に関心をもつクリエーターが取材しやすい環境を作るために協力しようという雰囲気が強い集まりである。宇宙SFを書こうとすれば協力してくれそうなメンバーが多い。そして、スペオペもアニメもホラーも、ジャンルを越えて色々なものを面白がる。この姿勢はSF作家クラブの雰囲気と変わらない印象も受ける。
 宇宙作家クラブの活動はこれからだし、注目されることも多くなりそうだ。このページでも正しい広報を心がけようと自戒する。

8月5日(木)
 昼、会社近くにあるSOTECのショールームでe-oneの展示品を見る。やっぱりi-macそっくり(法律的問題はクリアしているとのことだが、意匠というのは争ってみないとわからんよ……)。横から見たらいい感じだが、正面に座ると面白みがない点まで似ている。15インチCRTはもう時代遅れではなかろうか。ぼくは自宅が15インチ、会社が17インチの、ともにCRTだが、15インチは辛い。
 秋には自宅のを液晶画面に替えよう。値下がりまであと数ヶ月。

8月6日(金)
 突発的なトラブルで東奔西走。「西走」の方は姫路方面で、実家に近いあたりまで行くが、寄る時間なく夕方帰阪。
 実家へ電話をかける。妹が出る。
 母が飼っている猫の体調が悪いのである。3年前、母が骨折で入院中その世話がたいへんだった愛猫。13歳とかで、人間換算では70歳を越えている。……「どっちが先に死ぬんだろう」が母の口癖で、猫の健康状態に触れるのはタブーみたいになってきた。「口内炎」であまり食べないだけというのが獣医の診断だが、心配なことである。「元気さ」が猫と連動してしているらしい。
 夜、電子メール色々飛び交う。明日は、「ホシヅルの日」の企画で、ビデオ撮りのために、とり・みき来阪、ウチのリビングをスタジオ化の予定である。

8月7日(土)
 昼までごろ寝。谷口英治さんが現地時間の6日夕方、コンコルド・ジャズフェスで演奏中かと思うとちと落ち着かない。
 午後3時を過ぎてから来客ボチボチ。9月11日(土)の「ホシヅルの日」のためのビデオ撮りに、とり・みき氏と、アシスタントとして映画関係の仕事もしているにれっきとしたプロの田中良直氏が来阪。まとめて撮影できる便利で苦情の出ない場所……うーん、ウチのリビングなら苦情は出ないであろうと、ここをスタジオ化することにしたのである。
 ぼくだけ自室ではじめに済ませる。あとは観客になれるからである。
 ちなみに撮影風景は下のような雰囲気。使うのは「1、2分」ということで、大部分はカットされることになるのだが、それぞれに面白い。
 撮影中にチャイムが鳴るとまずいので、玄関開放、勝手に入って下さいと貼り紙。
 とり・みき来宅ということで、ボンクラ息子、やや興奮気味である。
 と、玄関の方でそのボンクラ息子の声がする。
 「いらっしゃいませ。どうぞ、こちらです。あ、お荷物、お持ちします!」……なんと丁寧な応対と思ったら、来たのは和服の京美人・菅浩江さんである。美人相手だとこうなってしまうのか。……あとはむさ苦しいSF作家ばっかりだものなあ。

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 写真は菅ちゃんととり・みき。
 ちなみにエピソードの一番多いのは江坂遊さんであろう。子供おふたりの名付け親という切り札があるからなあ。
 かんべの語り口……無意識のうちに声帯模写をやっているのが面白い。

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 夕方、撮影終了、残念ながら菅さんはお帰りになり、残ったむさくるしい連中でビールを飲む。……もっと来てほしかったが、事務局事情と時間的制約でこれが限度か。
 写真は右手前の北野勇作から反時計回りに、江坂遊、とり・みき、田中良直、草上仁、かんべむさし、堀晃、どういうわけか乱入のぶる。

 ビールやお酒、ワインを色々いただいたので、わが家では十数年前のダイコン前夜祭以来の規模の宴会となる。
 前回は吾妻ひでおさんと新井素子さんがいた。マンガ家がおいでにるのは、とり・みきがふたり目である。(高信太郎は例外。コーシンが来たのは前の住居で、独身の時だった。)
 こんな時のために「専属料理人」を雇っているのである。結構張り切ってくれて、メニューは「枝豆、蛸とキュウリのサラダ、イワシとタマネギのマリネ、ポテトとブロッコリ、牛肉タタキ、スペアリブ、浅漬、チーズ、フランスパン、ビール、ワイン」だったかな。まあ、誉めておけばまた開催できるであろう。
 午後9時頃に、5、6人でニューオリンズ・ラスカルズを聴きにサントリー5へ。23時頃まで。それから「山下洋輔ソロ・前夜祭」のはずのハチへ。と、明日に備えてもう閉店。テーブルを並べ替えて会場設定中。なんだ、夜通しライブではないのか。まあ、健康的でよろしい。「森山威男サイン入りのドラム」を叩きたかった先行のぶる氏、2曲は叩けたそうであるが、わしらは演奏時間には間に合わず聴けなかった。
 ラウント・ミッドナイト、歩いて帰館。

8月8日(日)
 昼まで惰眠。
 午後、とつぜん、とり・みき氏から電話。東洋ホテルに小松さんといるという。箕面のご自宅まで挨拶に行ったら、いっしょに出てきたのだという。約5分でラウンジへ駆けつける。思うところがあって落語会の楽屋へ行くのをここ数年遠慮しているので、小松のおやっさんに会うのは久しぶりである。
 例によって話が、阪神大震災からペンローズのツイスター、量子脳、カップ麺、宇宙開発(連載を予定していたら地震がありテーマを急に変更したという話を聞く。ということは、まだ企画は生きているはずで、「宇宙作家クラブ」としては大朗報ではないか……)など色々。震災の話に関しては、高速道路崩壊に関して、「なんぼ抜いたんか知らんが、この祭正直に申し出てくれ」という小松発言がいちばん好きである。
 小松さんをハチに誘うが(山下さんを驚かせるというのが目的)、まあ本日は遠慮ということになる。
 夕方、インタープレイ8へ。ピアノが新しくなってから、公式的にははじめてのソロ。(非公式には一度だけ試し弾きがあるけれど。)
 おなじみの顔、懐かしい人など含めて満員。とり・みきと田中さんもこのために予定延長である。
 ボンクラ息子、ジョシュア・レッドマンが好きという友達といっしょに来る。チケットはバイト代で買ったというから、この限りでは孝行息子だ。……しかし、家族そろって山下洋輔ソロを聴く日があるとは思わなかったなあ。
 席は最前列、鍵盤から2メートルもない場所。
 演奏されたのは、
 ブライトネス
 ブルーモンク
 チュニジアの夜
 仙波山
 (休憩)
 枯葉
 カンゾー先生
 You don't know what love is
 ボレロ
 日曜日で店の周辺は閑散。ハチでビールを飲む。

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 おなじみ、大ちゃんのサマータイムとかハチママのリンゴ追分けなど、色々あったが、ここではぼくの自慢のための写真のみ掲載。
 挨拶を振られて、アタマが働かず、「ミッキー・バード」とり・みきに振る。怠慢SF作家よりマンガ家の方が凄いにきまってます。
 「何か一句」という声があったように思う。
 半魚「ミッキーの鳴きまちがえて邪眼鳥」……なんのこっちゃ。
 明日の激務に備えて、それでも解散はラウンド・ミッドナイトである。

8月9日(月)
 うう、眠い。が、ボンクラサラリーマン、誠実に勤務。
 世間は夏休みか、比較的静かな日である。

8月10日(火)
 世間、夏休み入りの会社が多い割にせかされる用事が多い。
 ボンクラなりに仕事。
 午後、もの凄く興奮するようなことがあるがマル秘である。2001年になれば判明するであろう。
 公開を忘れていたら催促してください。

8月11日(水)
 昨日からの昂揚状態が継続、寝たり起きたり、午前4時、朝刊。
 かなり強い雨であるが、家族誰も起床する気配なく、ひとり寂しく朝食、7時出社。
 静かな日だが、午後、珍しく本間祐さんから電話。これまた面白い話。これは近日判明するでありましょう。
 世間並みに、明日は休みをとることにする。

8月12日(木)
 4時、朝刊の記事に川上弘美さん「紫式部文学賞」受賞の記事、宇治市主催の源氏物語にちなむ賞という。おめでとうございます。
 7時過ぎに出て、ひとり播州龍野の「実家」と「別荘」へ。
 昼前に自宅にいたら、会社関係でこちらに電話がかかってくる。ややこしいことである。落ち着いて休めんなあ。たいした用件ではないのだけど。
 夕方まで書庫の整理。
 途中で色々読み出して、書庫にはほとんど変化なし。
 母とふたりで夕食。もぎたての焼き茄子がうまく、ビールがぶ飲み。

8月13日(金)
 早寝早起き。
 3時頃に外ら出て、ペルセウス座流星群を見るが、10分ほど見ていて1個。人工衛星も観察できる。が、ともかく流星雨というやつ、1分1個でもイラチの関西人にはそぐわないようだ。
 ちょっと仮眠して、母と徒歩15分、山裾にある墓地まで墓参り同行。
 ぼくは散骨と決めているからこの墓地に骨を埋められることはないのだが。

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 墓参のあと、終日肉体労働。
 別荘なんて持つものじゃないなあ。
 薔薇の木を刈り取るのに、腕にやたらキズができる。
 たぶん汗3リットル程度出る。
 夕方、またも焼き茄子他でビール。自分でも驚くほどのピッチで体にビールが染み込む。これだから夏の肉体労働はやめられない。
 しばらく休憩、夜遅く帰阪。

8月14日(土)
 午後、サンケイホールへ。米朝一門会が開かれているが、あとの都合でこちらには行かず、「枝雀師匠のお別れの場」コーナーに寄る。南光さん、文我さんなどに挨拶。枝雀師匠の独演会ポスターなど多数展示。「祭壇」の写真は、高座のではなく、帽子をかぶったスナップであった。
 サンケイホールから帝国ホテルへ移動。
 「谷甲州先生デビュー20周年記念パーティ」、人外協の主催で5、60人。家族づれが多くなったなあ。大迫公成さん、草上仁さん、森岡浩之さんなど。なんと菅谷充さんと初対面、薄井ゆうじさんとは無線通信から始まる古いつき合いという。
 スピーチ求められて「作家の寿命25年説があるが、最近の谷さんの充実ぶりを見ると、とてもあと5年とは思えない。宇宙SF、冒険小説、山岳小説、ポルノまで領域が拡大していて、近い将来、時代小説、歴史小説まで書きそうな予感がある」
 作家寿命25年説は○○○で有名な○○○○大センセイのご高説なので、むろん笑って流すのがよろしい。
 ↑(上記○部分、やばいので伏字にしました。主張は不変。8/17……ヒヤヒヤもの)
 ただし「ポルノ」には異論があった。「ありゃ、エロSFです」(某氏)、「いや、倒錯と変態です」(本人)……奥さんとお嬢さんふたりが会場にいたのである。

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 写真は、珍しくネクタイ着用の谷甲州氏。 右は菅谷充氏と。
 ウチはボンクラ息子ふたりなので、女の子というのは不思議な感じがする。谷家のお嬢さんとの記念写真も撮ったのだが、誘拐その他を心配してここでは非公開。
 ふと思いついたのだが、子供ふたり以上では、以下の分類ができる。
 ・桂米朝、小松左京、桂枝雀、堀晃
 ・星新一、柴野拓美、かんべむさし、谷甲州
 ……データ不足につき、乞補足データ。
 作風芸風とは関係なさそうである。
 体が乾いた感じがまだ残っており、2次会は遠慮して帰宅。
 シャワーを浴びて、また、やっぱりビールを飲む。

8月15日(日)
 朝7時頃まで寝たから、ぼくとしてはたいへんな朝寝である。
 パソコン起動、なんとアサヒネット・筒井康隆氏出題の「文学マラソン」クイズ、午前5時の出題である。徹夜だった山下洋輔氏が「濡れ手で粟」の回答。本来なら、午前4時起床のわしが得点独り占めできたものを……。
 まだ体が乾いていて、ついでにやけ酒も兼ねて、缶ビール1個。ふて寝。
 昼、実家へ次男を連れて帰省の「専属料理人」からFAX。「帰宅が午後9時頃になるから夕食は勝手にやれという」という主旨。
 ボンクラ息子その1と相談。
「おい、クーラーがんがん効かしてモツ鍋やるか」
「ナベはええけど、水炊きがええ」
 ということで、汗ダラダラ、雑炊まで。
 明日から無事復帰できるのだろうか。


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