日下三蔵編『日本SF全集1』出版芸術社

 日下三蔵氏の編集による「日本SF全集」の第1巻。
 構想は「全20巻」の全集だが、代表作(ともいいきれない選択がポイント)各作家1篇を集めたアンソロジー全6巻。
 第1巻はも1957年(「宇宙塵」創刊、星新一のデビュー)から主に60年代にデビューした「創生期」15氏の作品が集められている。
 
 この時期の作品はほとんど雑誌掲載時に読んでいるが、「必ずしも代表作ばかりでない」セレクトが面白い。
 星新一なら誰でも思い浮かべるのは「ボッコちゃん」「おーいでてこーい」だが、ここでは「処刑」が採られている。ショートショートでないところがミソ。
 小松左京は「時の顔」……これも読み返すと、古典芸能を素材にした作品群との重なりがわかって納得。
 筒井康隆の「カメロイド文部省」は、作者自身が「小生自身の評価はずいぶん低く、初期の作品と限っても百点満点で六十点だ」と言葉を寄せているが、初期のドタバタSFと後期の言語実験的な作品をつなぐ作品と見ればなかなかの選択である。
 巻末の解説的座談会(日下、星敬、山岸真、北原尚彦の各氏)を読むと、おれも混じって色々発言したくなるなあ。
 それぞれの「作者のことば(ご遺族のことばもあり)」も面白いし、平井さんの「完黙」もひとつの姿勢だなあ……。
 第2巻には拙作も入る予定。
 ちと高価な本なので、ぜひお買い上げをとはいいにくいが、日下氏の長年の構想が実現したものであり、資料的価値も高いので、できればお近くの図書館に購入希望の申請を。
(2009.7.7)


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