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  小松左京『SF魂』(新潮新書)

 本当は映画『日本沈没』と『日本沈没第二部』について先に書くべきだが、まずSFコン……
 
 小松左京マガジンの「自作を語る」を中心に、補完的なインタビュー・語り下ろしなどを行って、たぶん澤田芳郎さんが構成されたのであろう。新書として「御大の語るSF歴」がよくまとまっている。
 おれは『やぶれかぶれ青春記』『威風堂々うかれ昭和史』『SFへの遺言』「小松左京マガジン」その他を読んでいるし、よく酒席に同席しているから、たいていのことは知っているつもりだったが、ヘェーーッと思うこと色々。
 「日本沈没第二部」構想のベースは「ニッポン国解散論」と思っていたら、「サブナショナルの国『日本』」なのだという。日本を国土でなく機能としてとらえるところはつながっているが、「第二部」前半、ボルネオの「農業」が詳しく描写されるところなど、なるほどと納得。
 「虚無回廊」の構想についても触れてある。これは……小説作法に関わることなので詳述は避けるが、(レベルは桁違いということ前提…むろんおれが下位…で)あああっ、似たような発想から始まるのかとわかるところがあって思わず膝を打つのであった。
 が、ともかく本書の白眉。110ページにある1センテンス。「ミスターX」の正体についてである。「その匿名士はどうやら荒正人氏だったようだ。」……そうかそうか、そうだったのか。30年の謎であった。福島正実氏との論戦などの経過を考えれば確かに合点しかと納得。おれはキョーザブローはんかと思っていたのであった。
(2006.7.18)


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